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食べ物を描いてもらおう

「そんな……天使に会えないというのか……?」


 がっくりとヒザをつく親友。

 天使じゃなくてゴリラだけど。


「何が悪かったというんだ……」

「背景があるとダメなのでは?」


 これも検証してみないとわからないけど、可能性は高いと思う。


「背景なしでどう天使を表現すればいいんだ!?」

「あっても表現できてないよ」


 ゴリラだよ。

 言い訳無用なくらい完全にゴリラだよ。


「一応検証してみよう」


 適当に空と地面と丸だけ描いて、保存してみる。


「ああ、やっぱり」


 出てこなかった。

 形として完成している物じゃないと、現実化できないらしい。


「くそぅ、どうにかして単体で天使を表現するしかないか」

「もう1回描く?」

「いや、その前に腹減ったわ」

「それもそっか」


 ぶっ続けで描いているわけだし、そろそろ休憩にしたほうがいい。


「カップラーメンと、ちくわならあるけど?」

「ちくわは悪くないが、もう少しいいモン食いたいな」

「だったらスガ〇ヤ(お手頃豚骨ラーメン)でも行く? 一応女の子らしき物を描いてくれたんだし、おごるよ」

「どうせならステーキとか寿司がいい」

「そこまでの予算はない」


 ペンタブレット買っちゃったし。

 ついでに、いろんな本やゲームなども買っちゃったし。


「おごりなら普段食べない物がいい」

「甘口抹〇小倉スパとか、甘〇バナナスパとか?」

「ノーサンキュー!」


 断られる。

 結構おいしいのに。


「いや、待てよ……? 描けばいいんじゃね?」

「……!?」


 その手があったか!


「食べ物も描けるの!?」

「やってやれないことはないはず」


 絵で表現できるなら、どんな高級料理でもタダで食べられる!

 ステーキも寿司も食べ放題!


「豪華でリッチな料理をぜひ!」

「よっしゃ! 最高にうまいやつを食わせてやる!」


 親友が描き始める。

 料理だったら、リアルタッチな絵でも問題ない。

 むしろ、相性はバッチリだ。

 今回こそは期待できる。


「どんな料理にする予定?」

「男ならやっぱガッツリ系だろ!」

「いいね!」


 想像しているだけでヨダレが垂れてきた。

 頼むぞ、親友!




「完成だ!」

「やったぁあああ!」


 おなかぺっこぺこの状態でずっと待っていたから、もう我慢できない!


「早く! 早く食べさせて!」


 ヨダレをぬぐいながら画面を見る。


挿絵(By みてみん)


「脂が乗ったガッツリ系だぜ」

「ウナギィイイイイイイイ!!」

「ああ、庶民には高くて手が届かないからな」

「なんで生なの!? 料理じゃなくて食材だよ!」

「新鮮なほうがいいかなって」

「鮮度抜群すぎるよ! 変な汁垂れちゃってるよ!」

「そもそも、ウナギなんて何年も食べてなかったから、どんな料理か思い出せない」

「生のウナギだって何年も見てないよね!? なんでそっちは描けるのよ!」

「ほら、1人でよく水族館とか行くし」

「え? 1人で行くの?」

「ああ、動物園だって、遊園地だって、焼き肉だって、カラオケだって、ボウリングだって、全部1人で行ってるぞ」

「お、おお……」


 親友が闇を抱えているかもしれない件。

 だから頭がおかしくなって、ゴリラとか、ウナギ描いているんだろうか。


「それより、ウナギが出てきたらどうするの? さばけるの? 生だよ?」

「よっちんならフグ調理師免許持ってるし、いけるんじゃね?」

「よっちんって……駄菓子屋の?」

「おう」


 近所に住んでいる駄菓子屋の店主。

 彼女に振られてからは、ずっとゲーム内彼女と遊んでいると聞いている。


「よーし、保存するか」

「クーラーボックスあったかな」


 素手で持ち運ぶのは大変そうだし、何か入れ物が必要だ。

 すぐ食べるなら、ビニール袋でもいいかな?


「おい、出ないぞ?」

「……なんで?」


 今回は背景もないし、体もしっかり描けている。

 条件はしっかり満たしているはず。


「……なぁ、これ、お前しか使えないとか、そういうのは?」

「え?」

「生体認証みたいなのがあったとか」

「別にそんなものは……あっ」


 最初の設定でなんかあった気がする。

 生体認証ではなく、ただの確認メッセージだったけど。


「ほら、俺が丸を描いても出てこない」

「ホントだ」


 なんの反応もない。


「つまり、これまで宇蔵が描いてきた絵は、すべて無駄だった……?」

「俺の30時間を返せ!」

「そんなに描いてたっけ!?」


 結構苦労していたらしい。


「おい、そこに座れ」

「?」

「いいから座れ」

「あ、はい」


 ペンタブレットを持たされて、その上からぎゅっと握ってくる。

 思っていたより大きい手で、ついドキッとしちゃう。


「……この状態でもダメなのか」

「僕だけの力で描かないとダメっぽい?」

「そうか……お前の手を切り落として使ったとしても、出てこないのか……」

「発想が怖いよ!?」


 恐怖のドキドキだった!

 呪いのペンタブレットになっちゃうよ!


「じゃあ、飯は任せたぞ」

「え?」


 ぽんっと肩を叩く。


「いやいや、僕の実力は見たよね? 普通に何か食べに行ったほうがいいって」

「ここまできて引き下がれるか! 描くか飢え死ぬか、2つに1つだ」

「えぇ……」


 親友のスパルタ授業が始まった。

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