女の子を描いてみよう
※セクシーな女の子の挿絵があるので、苦手な方は注意してください。
ヴヴヴヴヴ……。
細かく振動している電気マッサージ機の絵。
ゆ、夢じゃないよね……?
「……ひふぁい」
試しにほっぺをつねってみたら、普通に痛かった。
夢ではないらしい。
目を擦ってみても、ぶるぶる震える電気マッサージ機は消えなかった。
「……」
触って確かめてみる?
素手で触るのは怖いので、近くにあった『ゲーム購入の特典でもらったけど使わないまま丸めてあったポスター』でツンツンしてみる。
ヴヴヴ……グガガガガガ!
「ひぇぃいっ!?」
近くにあったペンタブレットを巻き込んで、激しく震え始めた。
ヤバイ。
部屋の中でこんな音を出していたら、家族から変な目で見られてしまう。
どうにかしてコレを止めないと。
「そうだ、スイッチだ!」
参考にしたのは、普通の電気マッサージ機。
もちろんONOFFスイッチはあるし、強弱も変更できる。
そこをいじれば、この暴れん坊も止まるはず。
さっそくスイッチを……。
「……ど、どこがスイッチ!?」
全体的にごちゃごちゃしていて、なにがなんだかよくわからない。
作者としては、この辺りがスイッチのつもりだったんだけど……。
ガガガガガ!
どうすればいいんだ!?
電気マッサージ機が止まらない。
このままだと、家族内での僕の評価が……。
「!?」
消えた。
ずっとぶるぶるしていたのに、ウソのように消えてしまった。
「……」
机やディスプレイに触ってみても、なんの痕跡も残っていなかった。
幻……なわけがない。
この手でちゃんと振動を受け止めた。
考えられるのは……。
「……これ?」
このペンタブレット。
怪しいとは思っていたけど、まさか本当にこんな効果があるなんて……。
いや、まだそうだと決まったわけじゃない。
検証してみないと。
「んー……」
なんでもない円を描いて、保存する。
ぺろーん。
「!」
出てきた。
描いたばかりの丸い線。
間違いない。
このペンタブレットで絵を描いて保存すると、ディスプレイから飛び出してくる。
「あれ?」
すぐに消えてしまった。
簡単な絵だと、消えるのも早いんだろうか?
もう少しいろいろ試してみよう。
「時間を変えてみるよう」
1秒で描いた円と、30秒かけて描いた円。
それぞれ保存してみる。
「……なるほど」
1秒で消えた円と、30秒で消えた円。
描いた時間=実体化する時間。
今度は、1秒で半分描く。
しばらく待ってから、もう半分描いて完成させる。
「あー、ダメだった」
一瞬で消えてしまった。
ペンが触れていないと、実体化時間は伸びないようだ。
「だったら……」
途中でペンを止め、触れたまましばらく待つ。
最後にくるっと回して完成。
「これもダメか」
ペンを動かしていないと、時間の判定にならないらしい。
時間を伸ばしたいなら、ひたすら描き込むしかない。
「あとは……」
思いついたことを検証していく。
文字でも大丈夫。
ただの円と同じように、ペラペラと降ってきた。
パチンコ店チラシのモッコリとした文字なんかだと、ちゃんと立体的になるのかな?
描き方がわからないので、今は断念する。
「こっちは無理か」
パソコン標準のお絵かきソフトで試してみたけど、ダメだった。
同じように、付属お絵かきソフトにマウスで絵を描いても、出てこなかった。
ペンタブレットと、付属ソフトを、同時に使わないといけないらしい。
「……」
よく考えなくても、これってすごいのでは?
描いたものが現実になるなんて……。
何か、とんでもないことができそうな気がする。
例えば……。
「……」
ベッドの下にあるムフフな本に視線を向ける。
そうだよ。
やることは1つ。
「女の子を描こう」
これしかない。
だって、そうだろう?
理想の女の子が、現実になるんだ。
乳だって尻だって盛りに盛れる。
Zカップだって夢じゃない!
「うへへ……」
現実になったら、あーんなことや、そーんなことも、やりたい放題。
クンカクンカしたり、ペロペロしたり、さらには、その先だって……。
「ぐふ……ぐふふ……じゅるり」
ついに、この僕も大人の男になるときが来たようだ。
待っていろ、Zカップの彼女!
「できた……」
1時間ほどかけた渾身の力作。
これで1時間は楽しめる。
ちょっと気合を入れすぎてしまったかな?
いつもだと3分で終わるので、残りの時間をどうしよう。
普通に世間話でもしたらいいのかな?
「さあ、早くその姿を見せておくれ!」
いろいろと妄想をふくらませながら、保存ボタンを押す。
ぼとり。
「?」
机の上に落ちる塊。
これ……手かな?
もっとすらーっとした手をイメージしていたのに、変な風に固まっている。
まあ、手を描くのは難しいしから仕方がない。
重要なのは、胸!
ここは一番気合を入れたから、理想通りの結果になっているに違いない。
ぐちゃぁ。
そう。
こんな風に、理想の上半身がディスプレイから……。
「あ、あれ……?」
およそ人とは思えないフォルム。
顔の判別すら困難だ。
こんなはずではなかったのだが……。
ギギギギギ……。
「ひぃっ!?」
よくわからない物体となったZカップの彼女が、机の上をはいずり回る。
『ヴォォォォォォ!』
「あひぇぁ!?」
どこにあるかもわからないような口から、怨念のような叫び声が漏れ出してくる。
どうしてこんなことに……。
いや。
そんなことは、最初からわかっている。
認めたくないだけだ。
そう、僕は……。
『ヴォォォォォォ!』
絶望的なまでに絵がヘタだった。