願いが叶うペンタブレット
「安くて使いやすいペンタブレットはないかな」
通販サイトで商品を探す。
ペンタブレットを買おうとしている理由は、このパソコン一式。
高校進学祝いとして、親戚のおじさんからもらった物だ。
タダでもらったのはいいんだけど、型落ちで古臭い機種。
あと、なんだかイカ臭い。
スペックが足りないので、当然最新のゲームなどはできない。
さっそく使い道に困っている。
「んー、どれがいいんだろ」
ずらっと並んだ商品一覧。
気になるものをクリックしていく。
このパソコンを生かそうと思いついたのが『絵を描こう』だ。
昔から絵を描くのが好きだし、この機会に勉強してみようかと思ったのだ。
なんといっても、パソコンで絵を描く利点は、次の3つ。
・画用紙がいらない。
・絵の具が使い放題。
・何度でもやり直せる。
紙が水を含んでくるんっとなって描きづらくなったり、金と銀の絵の具がもったいなくて温存していたらいつの間にかカピカピになっていて使えなくなったり、まだ乾いてないところに触れて絵がにゅーっとなったり……。
もう、そんな悲しい思いをしなくていい。
「おすすめで調べたらいいのかな」
検索方法を設定する。
試しにマウスで描いてみたけど、いまいちうまく描けなかった。
ペンタブレットさえあれば、僕の絵の実力を100%発揮できるはず。
「うわ、10万円以上するのもあるんだ」
お小遣いの限度があるので、なるべく安いものにしたい。
安い順で調べたほうがいいかな。
「おっ」
よさそうな商品が目に入る。
メーカー:もふオンお絵かき部
商品名:なんでも願いが叶うペンタブレット
商品説明:あなたの楽しいを形にします。
★★★★☆ 33個の評価
¥1,980!
現品限りの大特価!
99%以上OFFの出血大サービス!
「……」
怪しい。
聞いたことがないメーカーだし、値引き具合もおかしい。
レビューもあったので、そちらものぞいてみる。
田中 たろう
★★★★★ 非常に適した絵の
とても素晴らしい書き方!インストールするのが簡単すぐ。私はこの製品をおすすめする。
鈴木 じろう
★★★★★ 偉大な選択肢!
よい鉛筆タブレット!壊れた過去のモデルを仕事した探した。ずっと働くだろう思います。
佐藤 ごんざぶろう
★★★★★ 良い取引とてもペン
品質の良いする完璧。価格が迅速な対応ありがたい見た目さまよし。再びこの商品を購入!
「……」
とんでもなく怪しい。
どう考えても手を出すべきではない。
「でも、OSはサポートしてるんだ」
パソコン自体が古いため、新しい製品だとほとんど対象外になっている。
これくらいしか選択肢がない。
「……」
在庫は残り1。
迷っていたら売り切れてしまうかも。
「んー……」
星1のレビューを見たら『家が壊れた』と書いてあった。
安物なんだし、壊れやすいのかもしれない。
「……まあいっか」
これくらいの値段だったら、すぐ壊れても仕方がない。
まずはこれで使い方に慣れてから、もっといいのに変えよう。
ポチっと注文する。
「角男ー? 荷物届いてたわよ」
「おお!」
例のペンタブレットが届いたようだ。
部屋に持っていって、さっそく開封する。
「おー」
見た感じは悪くない。
写真通りのペンと板が入ってるし、梱包もしっかりしている。
日本語のマニュアルも入っている。
問題は、動くかどうか。
こればっかりは、試してみないとわからない。
ずぶり。
マニュアルに従い、パソコンと接続。
電源を入れる。
『新しいドライバをインストールしますか?』
設定画面が出てきたので、付属のCDを入れてインストールする。
お絵かき用ソフトも入っていたので、一緒に入れておく。
『認証してください』
出てくる文章はすべてOKを押して進める。
『インストールが終了しました』
1~2分ほどで終わったので、動作確認してみる。
「おお! 動く……動くぞ……!」
手元をぐるぐる回してみると、画面の矢印もぐるぐる回った。
デスクトップにある『数学課題フォルダ』もちゃんとクリックできる。
あとは、実際の描き心地がどうか。
お絵かきソフトを立ち上げて、真っ白なキャンバスを開く。
「おお!」
線が引けた。
「おお!」
消しゴムマークにしたら、線が消えた。
線を描いたり、消したりできる。
すごいぞお絵かきソフト!
せっかくだから、何か描いてみよう。
「何がいいかな」
いきなり何か描こうとしても、特に思いつかない。
部屋の中を見て、何かおもしろそうなモノがないか探す。
「……」
『未成年者でも安心して購入できる健全な電気マッサージ器』が目についた。
使ったまま放置してあったモノだ。
最近は硬くなることも多いので、これを使って柔らかくすることも多い。
「これでいっか」
そこまで難しい形ではないし、腕慣らしにはちょうどいい。
ペンタブレットの使い心地を試しながら、絵を描いていく。
なかなかいい感じ。
これなら、納得のいく絵が描けそうだ。
「こんなもんかな」
10分ほどかけて完成した1枚の絵。
初めてにしては悪くないのでは?
うまく描けたんだし、保存しておこう。
「名前は何にしよう……略して電マでいいか」
名前を付けて保存する。
ガタガタ……。
「?」
ディスプレイから変な音がした。
古いパソコンなので、ガタがきているのかもしれない。
ゴトンッ。
「ひぃっ」
ディスプレイの部品が落ちる。
「び、びっくりした……」
まさか、ここまでボロくなっているとは……。
落下した部品に手を伸ばす。
ヴヴヴヴヴ……。
「キャアアア!?」
両胸を押さえたポーズで遠ざかる。
ぶ、部品が動いた……!?
バネでも仕込まれていたとか?
確認するため、恐る恐る近づく。
「……」
違う。
部品なんかじゃない。
絵だ。
見覚えのある線。
ヴヴヴヴヴ……。
僕が描いた電気マッサージ機が、ディスプレイから飛び出していた。
初めて挿絵を描いてみました。
よろしくお願いいたします。