「恋」という名の異常病
いつから俺はこんな風になってしまったのだろう。
初めはただ、あの人が「好き」という感情だけだった。しかし今では「欲しい」という気持ちに変わっている。
元々、壊れかけていた俺のした恋だ。どうせなら、普通の人のように純粋な恋をしたかった……それだけなのに……
あの人が俺を拒否すればするほど壊れかけの俺は、さらに壊れていく。
漫画とかでよく異常者というものを数多く見てきたが、その者達の気持ちは正直理解しがたい。以前の俺なら、異常者のようにはなりたくないと、それだけを思っていた。
しかし今の俺は、その異常者の気持ちを理解出来た。これが異常者の気持ちなのだと実感しがたいが、知らずのうちに俺はそれに成り変わろうとしていた事に気づく。
今ならまだ間に合う。悪化する前に、早くこの「恋」という病を取り除かなければ……
……欲しい、あの人の全てが欲しい。
いやだ、そんな事は考えてはいけない。あの人から何も奪わないでくれ。
……手足を縛り、その後めちゃくちゃにして、絶望に満ち歪んだ顔を見ながら泣く様を、高笑いしながら見下したいものだ……
やめろ、やめてくれ。これ以上俺を狂わせないでくれ。
俺の心の善と悪は、何度も衝突を繰り返していた。本当に壊れてしまいそうだ。誰か助けてくれ。
しかし、俺の心の声は誰にも届くはずがなかった。
悪「どうせ、嫌われているんだし、いっそのこと俺たちと同じようにあの人も壊してしまえば良いじゃないか。」
悪の根源であるその悪魔は俺に囁きかける。
善「そんな事をしたら、取り返しのつかない事になるよ。今ならまだやり直せる。」
善の天使は横から話に割り込み、やがて天使と悪魔は言い争いを始める。
俺「うるさい」心の中で叫ぶと、天使と悪魔は霧のように消えてしまう。
もうこれ以上俺を苦しませないでくれ。
俺はある行動を思いつき、それを実行すべく、近くのビルに向かって走りだした。これは間違いであって、正解でもあると思う。俺は急いで非常用階段を駆け上がり、屋上を目指した。呼吸や心臓の鼓動が早くなり、足の疲れからか途中から足が上がらなくなる。それでも止まるわけにはいけなかった。
屋上の扉を勢いよく開け、次に俺は柵に向かって走り出す。
そして、最後の体力を使い果たし、勢いをつけて柵を飛び越えると、すぐに達成感が俺を包み込んだ。
これで良かったんだ。
恐怖感はあったが、それもすぐに忘れさられた。そして、体全体で重力を感じながら俺はゆっくりと目を閉じる。




