第0話 現世との突然の別れ。
超ど素人の作る拙い作品です。それでもいいっていう心の優しい方はどうぞ。
自らの存在とは、実に不確かなものだ...
状況に合わせて自分を作る、そんな経験は誰にでも起こりうる。
自らの存在とは、周りの人間の都合に合わせて作られた実に曖昧なものである。
自らの存在は、自分で決めることが出来るのだ。
自分の名前なんて他人からの授かりものでしかないのだから。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
キーンコーンカーンコーン...と甘くほろ苦い青春を感じさせる、高校の下校を知らせるチャイムが鳴った。
校門の前には、どこか優しさを感じさせる顔立ちの一人の高校生が立っていた。
たっく、悟の奴、待つ場所を指定しておいて遅れるのはマジでない。
ま~た彼女とイチャついてんのか? リア充はマジで滅んでくれ...
お、何か焦ってる顔してるリア充野郎が来たぞ。
悟「ごめんりょう、委員会の仕事してたらこんな時間になっちまった... マジごめん...」
俺「俺はてっきり彼女とイチャついてんのかと思ってたよ。」
悟「ぐぅ...否定出来ない...」
改めて紹介しておくと、俺は青木 亮太、成績そこそこ、運動そこそこの所謂平凡的な高校2年だ。
え?何で俺が読者に向けて喋ってんのかって?
だって、自己紹介しないとまずくない?
まあ、その話は置いておいて。
俺がリア充野郎とか心の中で呼んでるこいつは、木村 悟、成績は超が付くほど優秀で運動神経抜群、おまけにお金持ちで優男系のイケメンときた。
まあ、正直言って、Perfect Guyな訳よ。
羨ましいね、本当に。一日だけでも変われないかなぁ...
悟「おーい、どうしたんだ、黙りこくって?」
俺「ん、ううん、何でもない。」
悟「そうか?すごい複雑な感情のこもった顔してたけど。」
俺「マ?」
悟「マ。」
俺「ん、そういえば、彼女は連れてきてないのか?」
悟「恥ずかしいんだとよ。」
俺「学校中で話題になってるくせにか?」
悟「マジか、そりゃ初耳だよ...」
俺「とにかく、学校中で話題になってる。」
悟「そりゃ恥ずかしいわな...」
俺「とりあえず、気分転換にゲーセンでも行かね?」
悟「お、良いね!」
俺「良いんだ...」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【ゲームセンターにて】
悟「俺音ゲーって初めてやるんだけど... っていうかあんまりゲーム自体をやったことなくて...」
俺「そんな不安げになるなって!ピアノ弾けたりギター弾けたりするから大丈夫!」
悟「お、お金入れるぞ...」
「カードをお持ちですかっと、はいはい持ってますよ、これをここにかざせば良いんだな...」
ゲーム機「カードを認証しました、Savourerの世界をお楽しみください!」
悟「え!?俺の知ってる曲ばっか!」
俺「良かったじゃん!」
今思ったけど、これ二人ともニッコニコの笑顔だよね。
悟の方は好きな曲で遊べて興奮してるし、俺はなんか楽しそうで安心したって感じ。
あれ?母親目線とかになってないかこれ?大丈夫か俺...
やばい、音ゲーってこんなに楽しいんだ!なんかもう、楽しすぎる!
毎日、下校の時に通っちゃおうかな♪
勉強の方はもう、高3まで終わらせてあるし大丈夫大丈夫!
悟「ここ、毎日通うことにした!」
俺「まじかよ... 優等生が言うと違和感ありありだな...」
悟「? 何か言った?」
俺「ううん、なんでも無い~」
うっぷ、何か気持ち悪くなって来たぞ... トイレに行かなくては...
俺「すまん、トイレに行ってくる。」
悟「はいよ~」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
何なんだこの気持ち悪さ!? 明らかにノロとかインフルとかの類じゃないぞ!?
心臓が握りつぶされるような痛みもある、明らかにやばいやつだぞこれ...
俺「ゲホッゲホッ!」
「...え...」
口から出たものに恐怖を覚えたのは初めてだ。漫画とかでしか見たこと無いものが目の前にある。
血反吐だ。それを見た瞬間に俺は死を覚悟した。
しかし、まだ諦めちゃいない。体力が少なくなって来る中、必死にスマホをつかみ取り悟の事を呼んだ。
どれぐらい時間が経っただろうか、実際には2分の間だったがやけに長く感じた。
悟「りょう!?お前大丈夫か!?」
俺「ハハ、聞くまでもないだろ...」
ちょっとニヤけながら言ったが、どうやらあまり余裕が残されていないようだ。
ピッピップッ
悟「もしもし、救急です!友人がトイレで血反吐を吐いてしまいまして、意識も少しボーっとしているようなのですが...」
なんなのだろう、死に直面しているのに全く恐怖を感じない。それどころか心地が良い。
意識が遠のき始めたからなのだろうか、友人の声も不明瞭でぼやっとした声に聞こえてきている。
悟「ぜっ...に...死ぬなよ...」
意識が遠のいている俺でも分かる、悟にとっては俺が一番の友だちだからこそ、この恐怖を一番感じ取っているのだ。でも、その顔から分かる。もう手遅れなんだ、と。
でも、希望をまだ捨てられずにいるのだ。
しばらくして、救急隊員が来た。患者の体を傷つけないようにソフトに運んでくれた。
救急隊員「だいじょう...すか... こ...はき...て...すか...」
俺「声は聞こえてるけど不明瞭過ぎて聞き取りづらいです...」
ああ、眠気が俺を襲ってきた。大丈夫だよ、悟。またどこかで会えるさ。会えるまでの間は彼女と仲良くやっといてくれよ、俺の分まで力強く生きてくれ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
やがて、救急車の中でりょうは眠るように息を引き取った。
医師の鑑定結果では、死因は心臓発作だという。
なんでだよ...!なんで俺の大切な友達がこんな目に合わなきゃいけないんだよ...!
神様は本当に残酷だ...!なにも、りょうじゃなくたって良いじゃないか!
ううう...
彼女「辛いよね、あなたが一番大切にしてた、かけがえのない友だちが亡くなるんだもの...」
悟「なんでなんだよ... なんでなんだよ...!」
『私は、あなたに強く、力強く生きてもらいたいんだ。だから、嘆いてたら前に進めないよ?』
『確かに、突然のことでビックリした。でも、これは運命なんだって思ったんだよ。』
『新しい一歩を踏み出させてくれる、神様からの贈り物なんだって。』
『これから先は私なしで生きていかないとならない。でも、私は永遠に居なくならない。』
『いつまでも、あなたと共に。 アイリス=スカーレットもとい、青木亮太より。』
りょうと自称する、目の前の女性はまごうことなき天使だった。
悟「何なんだ今の...」
彼女「私にも見えた...」
マ?とはマジで?の略語。いわゆるスラング。
マ。はもうお分かりですよね。