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異世界遊園地で働くことになりました  作者: 左内
第三章 スカイスネークは困った奴
18/47

18.リオはやっぱり無茶をする

 沈黙が流れた。

 火竜がゆっくりとあぎとを閉じる。


「……今なんて言った?」

「エリザベスさんのことが好きな人が……いるっていう、そういう、あのぅ……なんですけど」


 声を小さくしていきながらリオ。


「誰が?」

「ネロネロさんです……」

「……ああ、あの空飛ぶクソミミズ」


 彼女もネロネロにあまりいいイメージはないらしい。

 火竜が嫌そうな顔でうめいた。


 さて、ネロネロの頼みというのがこれだった。


『エリザベスちゃんからデートの約束を取り付けてほしいんだよ!』


 どうやら彼はエリザベスに夢中らしい。

 いや、彼に言わせるとエリザベスの方がネロネロに気があるらしいが。

 どう見積もってもそんな様子はないにも関わらず。


 この世に人気者のぼくを嫌いな奴がいるわけがない。

 ならあれは好意の裏返しというものだ、とかなんとかいうのが彼の信じているところらしい。


『ぼくが直接行っても彼女照れちゃってね! 君たちが代わりに言えば多少緊張が解けるんじゃないかな!』


「生来の迷惑体質だねあれは」


 火竜が舌打ちする。


「最近おさまってきたと思ったら」

「前もあったんですか?」

「前にもっつーかねえ。今までずっとあった。あたしがここに来てからずっとだ」

「ネロネロさんの方が先輩なんでしたっけ?」

「ああそうさ。あの頃からあのミミズはここの稼ぎ頭だった。でも、なんかムカつく野郎なんで敬意を払わないでいたら、何をこじらせたかあたしのケツを追い始めやがって」

「はあ……」


 生返事をするリオを火竜が睨んだ。

 リオがびくりと体を震わせる。


「とにかくだ、あたしはあいつのどんな誘いもお断りだよ。さっさと帰ってミミズに伝えな。あんたのことが大っ嫌いだってね」

「で、でも。このままだと園の営業に支障が……」

「それはそっちの都合だろう。分かってないね、あたしはチャンスをやってるのに」

「チャンス?」

「今回は生かして帰してやるって言ってんだ。さ、消えた消えた」


 火竜がこちらに背を向けた。

 リオが、何も言えずに立ち尽くす。


「リオ……」


 呼びかけるが反応はない。

 だが。

 真尋はなんだかこの状況に見覚えがある気はしていた。


「ちょっと待ってください!」


 一瞬誰だかわからなかった。

 火竜も驚いた顔で振り向いている。

 その視線と真尋の視線。二つが向かう先で、リオが肩を怒らせていた。

 やっぱり見覚えがある。

 ココとメイルに反抗したあの時の背中だ。


「そんな簡単に帰れって言われても帰れません! こっちはマヒロさんの命がかかってるんです!」

「……命?」

「口が滑りました! 忘れてください!」


 勢いよく言って、前に出る。

 諭すような口調で続ける。


「そっちの都合、なんて他人事みたいなこと言わないでください。ボクたちはこの獄楽ランドで一緒に働く仲間でしょう?」

「……」

「それに、ネロネロさんがかわいそうです。一回だけでもいいからデート、してあげてくれませんか?」


 火竜の眉間にしわが寄った。


「あたしの気持ちはどうでもいいってのかい?」

「そういうわけじゃないですけど……同じ時間を過ごしたら気が変わるかもしれないじゃないですか。それで変わらないのならその時は本当に嫌いってことで」

「悪いけどそんなに簡単に言われても困るんだよ。あたしにもあたしの事情があるんでね」

「……事情?」


 リオがつぶやくと、火竜がハッと表情を変えた。


「もういい、死にな!」


 声と共に、空洞の中心にあった例の『火種』が強い光を放った。

 その周りから炎が噴き出し空間を埋め尽くす。


「きゃあああああああ!?」


 リオが悲鳴を上げる。

 光に目がくらむ。

 熱で息ができない。

 このままでは……

 真尋はリオをかばって前に出た。


「……なに?」


 火竜の訝しげな声。

 それもそのはずだ。荒れ狂う炎が、真尋たちの周りだけ避けているのだから。

 真尋のアトラクション制御能力。

 すんでのところで間に合った。


「逃げるよ、リオ!」

「はい!」


 後は後ろも振り返らず、一目散に駆け出した。

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