第四章・ベッドの上でお勉強しよう(意味深)・その十一
「実は簒奪とかどうでもよくて、八尋くんがかわゆくてかわゆくて仕方ないからお持ち帰りしちゃっただけなんだよね。ああでも自動車大国にしたいっていうのは本当だよ?」
八尋はスリスリされたりホペチューされたりと羨まし……もとい散々な目に遭っていました。
「それは知ってたけど……どうしてぼくなの⁉ 姉ちゃんだっているじゃん!」
八尋が女体化すると、風子との見た目の違いは、瞳と頭髪の色や長さだけになります。
風子はこれからも悪樓退治のたびに召喚されるので、誘拐事件さえ起こさければ、いくらでも手を出す機会があったはず。
「風子ちゃんだっけ? いやあの子、ちょっとあざとい感じだったから」
「それ処世術! 保身でわざとやってるの!」
要領のいい風子は、八尋の代用品としてモフられるのを防ぐため『お前らこーゆーの好きなんだろ?』的な演出で周囲の反感をイラッと誘い、その身を守っているのです。
「妾が気に入ったのは君なんだよ。だからイイ事しようねー♡」
抄網媛の手が八尋の浴衣に伸びて、帯がシュルシュルと解かれました。
幸い裾除け(腰布)を穿いていたので、子象さん不在の大事なところは顔を出していません。
「ちょっとやめてよ脱がさないできゃあ尻尾でクリクリしないでー!」
「変だなあ……大抵の女の子は夢を語るだけでコロッと行っちゃうんだけど」
その夢は八尋の鋭いツッコミで綺麗さっぱり爆散しています。
「僕は男だから、その手は通用しないよ! ……って女の子をナンパしてるの⁉」
なんとなくそんな気はしていましたが、やっぱり倒錯していました。
「そうだよ? そうだ、みんなも呼んでイチャイチャしよう!」
「風紀の乱れが酷すぎる!」
「まあそれはともかく、とりあえず既成事実を作っちゃおう」
ついに既成事実の話が出ました。
こうなったらもう時間稼ぎは通用しません。
あとは及ばずながらも力の限り抵抗するだけです駄目でした。
「大丈夫、天井の染みを数えてるうちに終わるから」
「新築じゃん! シミなんてどこにもないよ!」
天蓋つきの寝台もピカピカの新品です。
「じゃあ素数を数えて」
「二、三、五、七、十一、十三、十七……それ以上はわかんないよ!」
八尋はノリツッコミを習得しました。




