14/49
第二章・浦入物・その二
気がついたら水の中にいました。
「ぷはあっ!」
水面から顔を出すと、そこは見た事もない八角形の大きなお風呂場です。
「どこ……ここ?」
檜の、少なくとも檜に見える木造の浴場に檜の浴槽。
洗い場には祭壇が設置されていて、その周囲には和服で帽子を被った巫女さんたちが平伏しています。
「ありゃりゃー? さっきまで校庭にいたはずなんだけどなー?」
隣を見ると、船釣り部員でショートボブの鍔黒作江が、水面から顔だけ出していました。
「おや莞子じゃん。なんで私たちお風呂入ってるの?」
同じく船釣り部員でセミロングの江下千歌もいます。
「これお風呂じゃないよ。水だからプールじゃない?」
「檜のプールなんて……聞いた事ないよ……それに私たち裸……」
ボーイッシュな風貌の北川亜子。
「よくぞおいでくださいました、蕃神の皆様方」
平伏する巫女さんの中心に、真っ赤な神官装束を着た、長身でネコミミの美女が立っていました。
「妾は抄網媛と申します」
美女は雪のような白髪で、トパーズのような碧い右目と薄灰色の左目をギラギラと輝かせていました。




