第二章・浦入物・その一
気がついたら水の中にいました。
「ぷはあっ!」
八尋が水面から顔を出すと、そこは見覚えのある八角形の部屋でした。
旧式安宅船【玉髄】の主砲塔跡に作られた、蕃神召喚用の祭儀室。
どうやらまた異世界召喚されたようです。
「おうっ! 八尋も無事にこれたみてぇだな!」
「わあっ歩さん裸、裸っ!」
目の前に全裸の金髪女子が仁王立ちしていました。
八尋が慌てて後ろを向くと……。
「こっち見ないでください」
全裸の小夜理が肩まで水に浸かっていました。
羞恥で頬が真っ赤に染まっています。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!」
どっちに向いても裸の女子がいるので、八尋は両手で顔を覆って俯きます。
「わたしもいるんだけどな~」
小夜理の隣に風子もいましたが、こちらは年がら年中お風呂場に乱入する双子の姉なので、見慣れすぎてまったく気になりません。
「いいじゃねぇか、いまは八尋も女なんだし」
歩が両手をワキワキさせながら八尋に詰め寄ります。
目玉がグルグル回転して、セクハラする気満々でした。
「そういえば全員一緒に召喚されたのは初めてでしたね」
「そっか~、子象さん見れないんだっけ~」
風子はなぜかションボリしています。
「いや、まだわかんねぇぞ。ちょいと確認してみよう」
「わあっやめてよ! ついてない! ついてないってば!」
たちまち始まるセクハラ祭りに、八尋は必死に脱出を試みます無理でした。
あったかくて柔らかい二つの生エアバッグが全身の力を奪います。
「……………………」
控えていた巫女さんがススッと寄って金属製のお玉を差し出すと、その瞬間、小夜理の右手が空間から消失しました。
必殺の一撃がワンフレームで繰り出されます。
パカンッ!
「あいたっ!」
「毎回毎回、いい加減にしてください愚長!」
「ありがとう小夜理さん!」
歩の拘束が解け、八尋は浴槽から飛び出して全裸も気にせず走ります。
洗い場の巫女さんたちが湯帷子を着せようと近づきますが、無視して脱衣場へと急ぎました。
そして祭儀室の引き戸をガラリと開けると……。
「いらっしゃいませ八尋様。まずは湯帷子をどうぞ」
玉網媛が手薬煉を引いて待ち構えていました。




