夢対決(終)ザック対アテルナ
「おはよう。お父さん」
「うん? ここはどこだ。わしはいったい」
「ここは神々の園よ。あなたは死んだの」
「お前はアテルナか?」
「ええ、そうよ」
「そんなに女らしい格好をしたお前をみるのは、幼いころ以来か。わしをまた父と呼んでくれるのか?」
「ええ。あなたは私のお父さんだもの」
「はは、そうか。それなら、死者の国も悪くはない。ずいぶん長く眠っていたような気がするが」
「ええ。お父さんが死んで、地上では二十年が過ぎたわ」
「二十年か。それでは、いろいろなことがずいぶん変わったじゃろうなあ」
「ええ。時間はいくらでもあるのだから、この二十年のことを話して聞かせてあげる」
「それはありがたい」
「まず何から聞きたい? リオル様のこと? ザイカーズ商店のこと? コグルスのこと?」
「そうじゃのう。レカンは今どうしておる?」
「レカンさん? ふふ。レカンさんがこの二十年何をしてきたか知ったら、きっと驚くわよ」
「ははは。そうか。それは楽しみじゃ。あの男は、きっと面白い人生を送っているにちがいないからのう」
「長い話になるわ。ええっと、まずはかいつまんで概略を話すわね。レカンさんが〈落ち人〉だというのは知ってた?」
「ああ。それは早い時期に気が付いた」
「お父さんが死んだあと、レカンさんは、もとの世界に戻され、戦乱の大陸を平定して王様になったの」
「なに?」
「そして今年、魔道士エルシーラ様とそのお仲間たちの助けを借りて、こちらの世界に戻ってきたの。レカンさんの子たちのうち二人が、レカンさんを追いかけてあちらに行っていたけど、あちらで結婚してこどももいて、異世界で冒険したいと言って、あちらに残ることを選んだわ。今レカンさんは、海の迷宮に再挑戦するために、こちらに残ったこどもたちを鍛えているの」
「魔道士エルシーラだと。魔女エルシーラのことか? あれは、おとぎ話であろう」
「そうではないの。魔道士エルシーラ様は実在の人物で、今も生きているのよ。じゃあ、そこから話しましょうか。レカンさんがヴォーカの町にやって来たとき、チェイニーさんの紹介で、一人の薬師に出会ったの。そして…………」
生きとし生けるものすべての勝ち。




