夢対決(2)レカン対アリオス
「それにしても、どこにあるんだろうなあ」
「はい? 何がですか?」
「いや、アリオスに聞いたわけじゃない。ある恩寵品が、どこにあるんだろうかなと、ふと思っただけだ」
「レカン殿にとって大切なものなのですか?」
「いや、そういうわけじゃない。特別な七つの恩寵品があって、そのうち六つまではどこにあるか、どういう恩寵かがわかってるんだが、最後の一つが行方不明でな。一度みてみたいものだと思ってるんだが」
「ずっと探してたんですか?」
「いや、特に探してはいない。というか、どうやって探したらいいか、見当もつかん」
「雲をつかむような話ですね。名前はわかっているんですか?」
「ああ。〈風姫の首飾り〉という」
「え? 同じ名前のものが、うちの里にありますよ」
「何だと!」
「ずっと昔、ツボルトを統治していた一族に、あることで感謝されましてね。一族の秘宝をもらったんです。以来、里の当主が妻を娶るときの結婚式で、相手の首にかけるようになりました」
「ということは、今、ウイーが持ってるのか」
「いえ。宝物庫にしまってあります」
「鑑定したことはあるのか」
「うちの里の鑑定士では鑑定できず、以前王都の有名な鑑定士にみせても鑑定できなかったそうです。これをくれた一族にも、どんな恩寵なのか、どうやって発動させるかはわからなかったということです。名前だけが伝わっているんです」
「頼む。みせてくれ」
何度もレカンはアリオスに頼み込み、ついに首飾りをみせてもらうことができた。
〈名前:風姫の首飾り〉
〈品名:首飾り〉
〈出現場所:ツボルト迷宮百五十階層〉
〈深度:百五十〉
〈恩寵:沈黙〉
※沈黙:発動の瞬間百歩以内の距離にいた者が、装着者を除き、心の臓が十回打つ時間言葉を発することができなくなる。発動呪文は〈フーツラ・アン・パード〉。この恩寵は一日に一度だけ発動する。
「これが鑑定できたんですか。驚いたなあ。レカン殿のすることにはもう驚かないと決めていたんですが」
レカンは鑑定結果をアリオスに教え、その場で実際に発動させてみてもらった。
確かに効果を受けると声を出すことができなかった。ということは、相手の魔法も、呪文を唱えて発動するタイプの恩寵品も封じることができる。これが発動すると呪文が唱えられないのだから、ほかの〈始原の恩寵品〉で相殺することもできない。〈始原の恩寵品〉を持った者と戦うときには、これがあれば非常に有利だ。
レカンはアリオスを迷宮探索に誘ったが、アリオスは首飾りを持ってさっさと里に帰ってしまった。
アリオスの勝ち。
フーツラ・アン・パード(すべての言葉は失われたり)




