七話
「ん?今日は新堂くんは休みかい?」
教室の前の扉から現れたのは、学年屈指の美しさを誇る生徒会長の花宮 美鈴だ。
「ああ、会長ですか」
「おお!刃君じゃないか!どうしてこのクラスにいるんだい?」
「いや、俺がこのクラスだからですよ。いい加減、覚えて下さいって·····」
本当に祐也以外眼中に無い人だ。恋は盲目とか言うけれど、この人を見れば本当にそう思う。
「いや、覚えていたさ。·····うん、覚えていたよ!ジョークさ、ジョーク!」
「明らかに覚えてなかったですね!会長は嘘が下手すぎるんですよ!」
明らかに目が泳いでるし、嘘をついているのが丸わかりだ。
「ごめんごめん。次からは覚えておくよ」
「本当に頼みますよ·····」
「それで、最初の質問なんだけれど」
「ああ、祐也が来てない理由ですよね?それなんですけど·····」
僕は会長に昨日の夜、祐也から学校を休むと言うメールが送られてきたことと、僕と会長に身の回りに用心するように言って来たことを伝えた。
「用心?何に対してだい?」
「それは、分かりませんが、祐也がこういう風に言う時は、必ず何かが起こります」
現に優香ちゃんがいじめられていた時もそうだ。祐也は事前に嫌な予感がすると言って、学校を休んだことがあった。
その日の放課後、僕と祐也は凄腕弁護士と出会った。
本当に祐也の運と直感はすごいと思う。
「まあ、何にせよ、彼が私達に用心する様に言ってるんだ。よっぽどの事が起こるんだろう」
「最悪、日本刀持ちながら生活しますか?」
「何を言ってるんだい?」
それは、銃刀法違反だとか言うんだろうな。祐也のこととなるとポンコツになるけど、いつもは優秀だもんな。
「ショットガンぐらい持っておいた方がいいんじゃないか?」
「駄目ですよ!真面目な顔して言わないでください!」
前言撤回!この人、やっぱダメだわ!
「ふむ、ならマシンガンかい?」
「だから駄目ですって!」
「ふむ、やはり威力が足りないのか····。なら、対物ライフルはどうだい?」
「まず、持つのが駄目だって言ってるんでしょうが!」
その言葉に、一瞬固まる会長。
「も、持つのも駄目なのかい?」
「駄目ですよ!捕まります!」
「あわわわわわ·····」
明らかに動揺する、会長。
·····ん?まさか、これは、
「会長。ちょっと鞄貸してくれませんか?」
「な、何故だい?別に怪しいものなんて持ってないよ!拳銃何て絶対持ってない!」
「大人しく出して下さい!」
「や、やめろぉ!私は何も持ってないぞー!」
持ってないんだったら抵抗せず渡して欲しい! 流石に力は勝っているので、鞄を奪取することが出来た。
鞄を開けて目に飛び込んできたのは、
「何ですかこれ?」
へんてこな仮面、警棒、ヌンチャク、サバイバルナイフ、そして、スタンガンと拳銃だった。
「会長、生徒会長室に行きましょうか」
笑顔でそう言う僕に、
「お、お手柔らかにね····?」
誰がするか、馬鹿野郎!
生徒会長室に移動した、僕は、生徒会長を床に正座させた。
「まず、何でこんなものを持っているのか、弁明を聞きましょうか·····」
「いや、違うんだ!まだ、拳銃とナイフは使ったことは無いんだよ!」
「使ってたら通報してる!·····?今、拳銃とナイフはって言いましたよね。まさか、他のは使ってるんですか!?」
「ちょっと、攫われそうになっていた女の子が路地裏にいたものでね!つい!」
テヘペロ!って感じで舌を出す会長。そこはかとなくイラッとした。
「会長!それは、ヒーローの仕事!ヒロインのアンタがする事じゃない!って違う!それより、何でこんなものを持ってるか聞いてるんですよ!」
「·····まず、警棒は父に護身のために持っておけと言われ、持っているものだ」
「他は?」
「·····可愛すぎる、新堂くんが他の女子とか、ホモに襲われないか、心配でヌンチャクとナイフと拳銃を買いました。衝動的にやりました。後悔はありません!」
「そこは後悔して欲しいんですけど·····。まあ、それは置いておきましょう。ならスタンガンは?」
その言葉に少し苦々しい表情する、会長。僕は悟った、多分、これ駄目なやつだ、と。
「·····最近、新堂くんを家に泊めた上、一緒の部屋で寝たのに、手出しをされないどころか、一言も喋らず全く緊張しないで、すやすや寝た彼にイラッとしたので、麻痺させて襲ってやろうと思って買いました」
「お、おう」
予想以上に可哀想だった。まさか、好きな人一緒の部屋で寝たのに、無反応で寝られるとか、結構傷つく。
「私、そこそこ可愛いと思うんだ·····。可愛いし、性格もまあまあ良いんだよ。そんな私が勇気を出してネグリジェ姿で突撃したんだ·····」
自分で言うか!と言いたくもないがまあ、黙っておこう。
「それなのに襲わない所か無反応とか!!!とか!!!ちょっと自信を無くすよ·····」
この後、いじけてしまった会長を慰めるのに、僕が大量の時間を費やしたのは言うまでもない事だろう。
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