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たぶん私は、もう燃え尽きてしまったのだ。
三年前。潮の香がそこらじゅうに染み込んだあの田舎町で。
身体も、精神も、魂さえも。
あの時。限りなく永遠に似た、甘く柔らかいあの日々に。
全て置いてきてしまった。全て捧げてしまった。
あの時以来。
私はどうしようもなく弱くなった。
どうしようもなく弱くて、どうしようもなく寂しがりで、どうしようもなく無気力で、どうしよもなく空っぽになった。
ユラ。
名前を口にすれば、すぐに姿が瞼裏に浮かび上がってくる。
光を吸い込む不思議な紫の瞳も、星が瞬くように輝くふわふわの金髪も、ふいに見せる憂いを帯びた横顔も。
記憶の襞に、瞼の裏に、深く深く刻み込まれている。
忘れたくても、忘れられない。
死に至らしめる呪縛のような、それでいて愛に溢れた抱擁のような、記憶。
消し去ってしまおうと、他の雑多な記憶と混じり合わせて、重たい石のような塊にして、奥底に沈めてしまおうとすればするほど、より鮮明に、私の前に現れる。
その度に、私は息が止まりそうになる。胸がぎゅっと、締め付けられたように酷く痛む。目頭が熱くなって、涙が溢れて止まらなくなる。
ユラ。
私の全てだった人。