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お手柔らかに。
「ジリリリリリリリリリ、バンッ」
朝7時、俺は布団の中から腕だけを出し、けたたましく騒ぎ立てる目覚まし時計を感覚だけで見事仕留めた。
そして、まだ夢の世界から完全には帰ってきていない状態で体を起こし、スウェットのまま1階へと降りる。
まず、リビングで俺を迎えてくれるのは綺麗な黒い毛並みの柴犬だ。名前はもうある。ルウだ。とても可愛らしく、くるりと巻かれている尻尾はふわふわしていてマフラーにしたら暖かそう。
まったくいい犬だぜ。
「ぎゅっ(もふっ)」
「(ペロッ)」
毎日朝一番に挨拶をしてくる誠実な行為に対して感謝の念を伝えるべくハグしてやると耳を舐められた。ちゃんと伝わったのだろうか。まあ、いいか。
朝は愛犬とたわむれ、朝食を食べてからシャワー浴びて登校。それが毎日の流れだ。
そうそう、言い忘れていたが俺には妹がいる。優子というのだが、実の兄である俺でも可愛いと思う程の美少女だ。俺が兄じゃなかったら確実に出会った瞬間一目惚れしていた。
また、妹は家では家事全般をこなし、中学校では頭脳明晰、成績優秀で学校一の美少女とまで言われているらしい。キャラ盛りスギィ!
そんな完璧人間は今日も俺の分の朝食を作ってくれた。優子の作るご飯はどれも美味しく、俺は今まさに美味しい朝食を可愛い妹と一緒に食べるという至福の時間を過ごしている。が、妹を心配していることがある。あまり喋りたがらないのだ。俺と!!
よし、試しに話しかけてみようじゃないか。えーっと、何話そうかな。んー。
「べ、勉強はかどってるか?」
「うん。」
「あぁ、そう、か。」
冷たい。体感温度-10くらいだった。
「行ってきます。」
「あ、行ってらっしゃい・・・。」
優子は俺が妹の冷たい態度に少しばかりショックを受けているうちに朝食を食べ終わりそそくさと学校へ向かってしまった。
うむ、不安だ。
ちらっ、とテーブルの上に置いてある丁寧に包まれたお弁当を見る。もちろん妹が俺に作ってくれたものだ。
「嫌われてはないと思うんだけどなぁ。」
「ワゥゥ・・・」
窓際では丸いクッションの上でルウがなにやら唸り声を上げていた。
一応趣味でも全力でやりますので、よろしくお願いします。