プロローグ
学校の授業が終わり、放課後となった。
「そんじゃあハジメ、また明日な」
「おう、じゃあな」
俺は校門前でいつものやり取りをした後、友人と別れ帰路についた。
帰り道を歩きながら、家に帰ってから何をしようかとぼんやりと考える。
今ハマっているゲームのボスの攻略法を授業の最中に練っていたからそれを試してみよう、とか。
あの漫画の新刊って出ていたっけ、いや、来月だったかな、とか。
好きなアーティストの新曲の配信はいつだったっけ、とかそんな取り留めのない事ばかりだ。
いつも通りの帰り道で
いつも通りの事を考えて
いつも通りに家に帰り
いつも通りに明日を迎えるのだろう。
別に代わり映えのない毎日に嫌気が差しているわけではない。
むしろ望むところだ。平穏がなによりだ。
俺は今日も何事もなく帰るんだ。
――だから、そこの道端にいる変な女には関わらない。
視界の端にチラッと映っただけだが、女は絶対変だった。おかしな服を着ていた。
俺は気が付かないフリをして女の前を通り過ぎようとする。
だが、凄く、物凄く視線を感じる。
確実に俺を見ている。
……ダメだ。超気になる。
俺は視線の圧力に負け、女の方へ振り向いてしまった。
――振り向かなければよかった。