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終わりなき青  作者: ふゆしろ
9/13

09


 ――…


「まぁソラン、学校は?」


 驚いた顔の門番をやりすごし、カインの部屋へ駆けていた。ちょうどいい。


「母さま、カインはどこへ?」


「カイン?お友だちかしら。それとも、子猫ちゃんでも拾ったの?」


 ソランは絶望のあまりクラリとした。


「ソラン、あなたひどい顔色よ。少しお休みなさいな」


 なんとか頷き、よろよろと廊下を進む。

 階段を上っては下り、曲がり角をいくつか曲がり、やがて自室へ辿り着いた。


 隣の部屋がカインの部屋。


 開こうとしたが、鍵がかかっていた。通りがかった使用人に声をかける。


「ここ、開けてくれる?」


「…何もありませんよ?」


 その言葉通り、そこには物が一つもなかった。


「もうずっと、使われてませんから」


 カインは本当にやってのけたのだ。世界から、みんなから自分の記憶を消した。


「おれが双子だって知ってる?」


 試しに言ってみる。


「…そのようなジョークが学舎で流行っているのですか?」


 使用人は眉をひそめた。

 ソランは肩をすくめて何もない部屋へ足を踏み入れる。


 世界はカインを忘れてしまった


『カインが死んだら、おれも死ぬ』


 ここはカインがいない世界。死んだ世界。


『カインはおまえの心に生きているじゃないか』


 カインを忘れた世界で、まるでカインのように生きているソラン。

 もし自分がカインとして生きたなら、世界にカインの痕跡を残すことになるだろうか。


「カインは死なない」


 ソランが生きているかぎり。

 ソランは凛とした眼差しで、色のない世界を見詰めた。

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