05
――…
風薫る緑の頃。
麗らかな日差しの中で微睡んでいた。
「もしおれがいなくなったら、ソラン、どうする?」
ハッとして横を向く。
同じ顔で微笑む彼はソランの片割れ。双子の兄だ。
「カイン、どうしてそんなこと…」
カインは体が弱い。ふつふつと不安が湧き上がる。
ソランは眉尻を下げ、カインの手をぎゅっと握った。
「いやだ、カインが…いなくなるなんて…!」
少し想像しただけで泣きそうになる。
「カインのいない世界なんて生きたくない。ダメなんだ、カインがいないと…」
ソランはついにカインに抱きつき、泣き出してしまった。
柔らかな黒髪を撫でながら、カインは口を開く。
「リュークがいるじゃないか」
リュークは彼らの友人で、ソランが密かに想いを寄せている相手だ。
カインもそんな風に見えたから、ソランはそれについて話したことがない。
「…カインじゃなきゃダメだ」
たぶん、リュークもカインが好きなのだ。
人見知りでリュークくらいしか友人のいないソランと異なり、カインにはたくさんの友人がいる。
穏やかで人当たりのいいカインはみんなの人気者だった。
「どうして?」
「だって…!」
ガバリと顔を上げる。
「ソラン、ほら。渡して」
ああ、テストが終わったのか。差し出された手に答案用紙を渡す。
「よく寝てたな?」
「…うるさい」
にやっと笑われ、ツンと答えた。
今回はリュークのヤマが大当たりだったから、けっこう早く問題を解き終えることができた。
「さっすが級長、余裕だね」
「リュークのおかげだよ」
肩をすくませる。
「ほほう、リュークのねぇ…」
「ヘンなこと考えるなよ?」
「ヘンなことって~?」
にやにや笑う彼は、ソランの話をまともに聞く気がない。
「あ、ちょっ」
ソランは彼の頭を撫でくりまわし、すっと立ち上がって廊下へ出た。