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終わりなき青  作者: ふゆしろ
5/13

05



 ――…


 風薫る緑の頃。

 麗らかな日差しの中で微睡んでいた。


「もしおれがいなくなったら、ソラン、どうする?」


 ハッとして横を向く。

 同じ顔で微笑む彼はソランの片割れ。双子の兄だ。


「カイン、どうしてそんなこと…」


 カインは体が弱い。ふつふつと不安が湧き上がる。

 ソランは眉尻を下げ、カインの手をぎゅっと握った。


「いやだ、カインが…いなくなるなんて…!」


 少し想像しただけで泣きそうになる。


「カインのいない世界なんて生きたくない。ダメなんだ、カインがいないと…」


 ソランはついにカインに抱きつき、泣き出してしまった。

 柔らかな黒髪を撫でながら、カインは口を開く。


「リュークがいるじゃないか」


 リュークは彼らの友人で、ソランが密かに想いを寄せている相手だ。

 カインもそんな風に見えたから、ソランはそれについて話したことがない。


「…カインじゃなきゃダメだ」


 たぶん、リュークもカインが好きなのだ。


 人見知りでリュークくらいしか友人のいないソランと異なり、カインにはたくさんの友人がいる。

 穏やかで人当たりのいいカインはみんなの人気者だった。


「どうして?」


「だって…!」


 ガバリと顔を上げる。


「ソラン、ほら。渡して」


 ああ、テストが終わったのか。差し出された手に答案用紙を渡す。


「よく寝てたな?」


「…うるさい」


 にやっと笑われ、ツンと答えた。

 今回はリュークのヤマが大当たりだったから、けっこう早く問題を解き終えることができた。


「さっすが級長、余裕だね」


「リュークのおかげだよ」


 肩をすくませる。


「ほほう、リュークのねぇ…」


「ヘンなこと考えるなよ?」


「ヘンなことって~?」


 にやにや笑う彼は、ソランの話をまともに聞く気がない。


「あ、ちょっ」


 ソランは彼の頭を撫でくりまわし、すっと立ち上がって廊下へ出た。

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