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終わりなき青  作者: ふゆしろ
3/13

03

「ソランさんは親しみがあるよね」


「本当の王子さまなのにな」


「聞いてよ、ぼく、こないだお話しちゃった」


 ソランはこの国の王子。国といっても、大陸のほんの一部でしかない。

 大陸にはたくさんの国があり、それぞれ同盟を結んでいくつかの集合体を形成していた。


 この学舎にはソランの他にも、同じ集合体に属する王子が何人かいる。


「ぼくはソランさんが一番好きだな。かっこいいし」


「あの方は美人だろ」


「えー?かっこいいよ!優しいしさ」


 道の向こうから聞こえた会話に、リュークがふっと笑みを浮かべる。


「人気者だな、王子さま?」


「嫌みにしか聞こえない」


 ソランは目をすがめた。


 王子という響きは、ぜんぜん自分には似合わないと思う。

 簡単に笑顔を振りまき手を振るリュークの方が、よっぽどそれらしい。


「ソラン、笑顔笑顔」


『ほら、笑ってソラン。そうすれば人が寄ってくるよ』


『…それができないから、こうなんじゃないか』


 愛想笑いは苦手だ。がんばってやろうとすると頬が引きつる。


「それ、笑ってるつもりか?」


「うるさい」


 眉根が寄った。


「もったいないなぁ」


『もったいない』


 そんなに嬉しそうな顔で言う言葉?


『おれはいいんだ』


「おれはいいんだよ」


「ま、おれはおまえの可愛い笑顔、知ってるからいいけどな?」


 リュークはそう言って甘い微笑を浮かべる。熱くなった耳を隠すようにそっぽを向いた。


「はぁ?目がおかしいんじゃないか?」


「照れるなよ」


 わしゃわしゃ頭を撫でられた。

 ソランは、橙に染まった世界でぼんやり口を開く。


「前もこんな会話、誰かとしたな」


 斜陽が人々の顔を隠してしまい、誰も彼もわからない。


「誰としたんだっけ」


 なんとなく隣に目をやった。


「おれは知らないぜ?」


 その顔も、よく見えなかった。

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