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終わりなき青  作者: ふゆしろ
2/13

02

 図書館の自習室へ向かう。

 途中で課題の参考になりそうな本を見繕っていた。


「あっ」


 近くにいた子が背伸びして手を伸ばし、本を取ろうとしていたのだが、どうやら落としてしまったらしい。


 拾い上げ、首を傾げる。


「目当ての本はこれ?」


「いえ…そっちの…」


「ああ、これだな」


 ソランはその本を本棚に戻し、代わりに彼が取ろうとしていた本を手渡した。


「あ、ありがとうございますっ」


「どういたしまして」


 慌てる様子がおかしくて笑みを浮かべれば、少年は頬を赤らめた。ペコリとお辞儀し、わたわた去ってゆく。


「あの子、ソランに惚れたな」


 気づけば隣にリュークがいた。


「え?まさか」


 苦笑する。


『かわいくていいじゃないか』


 ふと頭に響いた声。


 まったく…。

 何人、虜にすれば、気が済むのか。


「まったく…自覚がないんだから手に負えない」


『妬いてるのか?』


『ちがうって』


 ひょいと目の前に本を出される。


「おれはもう見つけたけど、そっちは?」


「…もう少し」


 結局、リュークがいい本を選んでくれた。


 向かい合っての勉強タイム。さらさらと筆を滑らす音が耳に心地よい。

 窓から差しこむ光がリュークの茶髪に降り注ぎ、きらきら輝いていた。伏せられた睫毛に目がいく。


「なに?」


 リュークがふと顔を上げた。


「、ううん、」


「おれに見とれた?」


 自信のある笑みだ。リュークは甘い顔で人気がある。


「ちがうってば」


 ソランは目をそらし、ツンと言う。するとリュークは雰囲気を変え、深い声を出した。


「ソラン、聞かせて。さっきの続き」


 廊下でのことだろう。ソランは軽く睫毛を伏せる。


「いきなり言われても…」


 耳が熱い。本当はもう、気持ちはハッキリしている。

 けれど、それを口にするのはためらわれた。


「おれ、ずっと前から好きだったんだ。おまえが好きだったんだよ」


「うそ」


 なぜそんなことを言ったのかわからない。口にしてからハッとした。


「いや、えっと…」


 視線がさ迷う。


「本当だからな」


 真剣な目が見ていられず、ソランは俯いてしまった。

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