02
図書館の自習室へ向かう。
途中で課題の参考になりそうな本を見繕っていた。
「あっ」
近くにいた子が背伸びして手を伸ばし、本を取ろうとしていたのだが、どうやら落としてしまったらしい。
拾い上げ、首を傾げる。
「目当ての本はこれ?」
「いえ…そっちの…」
「ああ、これだな」
ソランはその本を本棚に戻し、代わりに彼が取ろうとしていた本を手渡した。
「あ、ありがとうございますっ」
「どういたしまして」
慌てる様子がおかしくて笑みを浮かべれば、少年は頬を赤らめた。ペコリとお辞儀し、わたわた去ってゆく。
「あの子、ソランに惚れたな」
気づけば隣にリュークがいた。
「え?まさか」
苦笑する。
『かわいくていいじゃないか』
ふと頭に響いた声。
まったく…。
何人、虜にすれば、気が済むのか。
「まったく…自覚がないんだから手に負えない」
『妬いてるのか?』
『ちがうって』
ひょいと目の前に本を出される。
「おれはもう見つけたけど、そっちは?」
「…もう少し」
結局、リュークがいい本を選んでくれた。
向かい合っての勉強タイム。さらさらと筆を滑らす音が耳に心地よい。
窓から差しこむ光がリュークの茶髪に降り注ぎ、きらきら輝いていた。伏せられた睫毛に目がいく。
「なに?」
リュークがふと顔を上げた。
「、ううん、」
「おれに見とれた?」
自信のある笑みだ。リュークは甘い顔で人気がある。
「ちがうってば」
ソランは目をそらし、ツンと言う。するとリュークは雰囲気を変え、深い声を出した。
「ソラン、聞かせて。さっきの続き」
廊下でのことだろう。ソランは軽く睫毛を伏せる。
「いきなり言われても…」
耳が熱い。本当はもう、気持ちはハッキリしている。
けれど、それを口にするのはためらわれた。
「おれ、ずっと前から好きだったんだ。おまえが好きだったんだよ」
「うそ」
なぜそんなことを言ったのかわからない。口にしてからハッとした。
「いや、えっと…」
視線がさ迷う。
「本当だからな」
真剣な目が見ていられず、ソランは俯いてしまった。




