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終わりなき青  作者: ふゆしろ
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 なんてやつだと思う。

 両親にすら忘れられても構わないなんて。その上、きっちりリュークの記憶だけ残した。


 黙っていたリュークはずっと、ソランへの罪悪感が拭えなかった。


「なぁソラン、人は必ず死ぬ。今急いで後を追わなくても、いずれ再会できるんだ」


 ぼうっと空を眺める瞳にリュークは映らない。


 「カインの目は海のようね」と母は言った。


 海の青は空の色なんですって


 その言葉を、カインはいたく気に入っていた。


『おれの目の青はソランの色ってわけだ。ソランを映しているかぎり、ずっと青でいられる』


 カインはソランの頬に手を添え、瞳を覗きこむ。


『この色…一番好きだよ』


 ソランが一番好き


 そう言われた気がして嬉しかった。

 

「ソラン、おれと共に生きてくれ」


 生きる?カインのいない世界を?


「…むりだよ」


 心に住み着いた空虚な穴がなくならない。

 カインが消えたその時に、ソランの世界は死んだのだ。


 偽りの日々はたしかに賑やかで楽しかった。でも、心はいつも上の空。とっくにカインを追っていた。

 

「ここにいるのは亡霊だな」


 ソランは空っぽの心で笑う。そうして、ゆらゆらと歩きだした。


「ソラン…」


「カインの魔法を解く。おれだって、命を懸ければそれくらい、できるはずだ」


 足はカインが最後にいたであろう聖堂へ。


「ソラン、おれじゃダメなのか?」


「…カインはやっぱり優しいよ。最後にリュークとの時間をくれたんだから」


 知っていた。カインはとても独占欲が強い。それから、寂しがりやだ。


『ソラン、おれより先に眠らないで。おれが寝るまで起きていて』


 遺されるのは嫌だったけど、やっぱり自分が後でよかった。きっとカインは一瞬だって耐えられない。


「ソラン…」


 優しいリューク。優しいカイン。自分はなんて幸せなのだろう。

 美しい装飾が施された扉を開く。


「リューク、今までありがとう」



 さようなら



 人生の中で一番綺麗な笑みを浮かべて。今、色とりどりの光の中で目を瞑る。


 溢れだす力。

 広がり、浸透してゆく。

 先に施されたカインの…残り香のようなそれを辿って。



 命の全てで包みこみ、空へ



 徐々に体から抜ける力。

 視界が白に染まりゆく。

 安らかな心地。


 微睡みのような…






 ソラン…ッ!


 遠くで自分を呼ぶ、叫びのような声がした。




-00-


 果てなき空間を漂う。


 ふと、寄り添う気配。



 カイン?

 ああ、カイン…まったく突拍子もないことをする



 でも、楽しかっただろ?



 …カインがいないのに、満たされた心地になるはずない

 いつもずっと、空っぽだったんだ



 それはお気の毒さま



 笑うなよ






 おかえり ソラン


 ただいま カイン




 ここは世界の中心








 終わりなき青。





-end-

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