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ガバリとベッドから起き上がる。
カイン、カイン カイン。
「カイン…ッ」
しゃがみこみ、頭を抱えた。
人気者なのはカインの方だった。自分はいつも、そんなカインにくっついていただけ。
人見知りで、リュークくらいしか気がねなく話せる友人はいなかった。
どうして忘れていたのだろう?
カインはどこ?
カインはどこ?
ソランは忙しなく辺りに目をやりながら走り出す。
カイン、カイン…!
「ソラン!」
リュークが前から駆けてきて、ソランを抱き止めた。
「ソラン、落ち着けソラン」
「カインは?カインはどこ?知ってるんだろ?!」
腕の中から目を見開いて見上げてくるソラン。
リュークは目蓋を下ろし、深く息を吐く。
「降参だ」
こうなってしまったらもう、話すしかない。リュークは腹を決めた。
「ソラン、すっかり聞き終えても、ここにいてくれるよな」
ソランの両肩を掴み、真摯な眼差しで問う。
「どういう意味?」
声が震えた。
「おれは昔からずっとおまえが好きだった。これは本当だ」
「…リュークが好きだったのはカインだろ?」
なぜ今、そんな話を。二人は特に仲がよかった。
「ちがう。おれが好きなのはおまえだよ。カインはおまえとおれの気持ちを知って、よくつっかかってきただけだ」
カインはリュークが好きなわけではなかった。これにはソランも目を丸くする。
「カインも同じ気持ちだと…」
「あのな、カインはおまえしか見てなかったぞ。おまえはどう思っているか知らないが、おれからしたら、あいつはかなりの腹黒だ」
「そんなわけない。カインは優しくていいやつで、みんなに慕われていたじゃないか」
いつもみんなの中心にいた。ソランはリュークを睨みつける。
するとリュークは、やれやれと息を吐いた。
「カインはおまえを独占したかったんだよ。自分が脚光を浴びて、おまえに目がいかないようにしてたんだ」
人気者のカイン。それを見て、ソランはますます萎縮した。
自分にはカインしかいない、カインがいればいい。カインがいてくれなくてはダメだ。
それでますます、ソランはカインだけに目を向けるようになった。
「まんまとしてやられたわけだな」
しかし、ソランの中でカインの存在は絶対だ。そんなことを言われても、今さら揺らがない。
「でもおまえ、今じゃ人気者だ。カインの陰謀がなければ、昔からそうだったんだろうさ」
ソランがカインを思う気持ちは変わらない。
「そんな話どうでもいい。カインはどこだ」
じわりと胸の片隅に浮かんだ恐怖。
それに気づかぬふりをして、ソランは眉をつり上げた。