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第三十三話:木の実を集めよう

 森に戻ると、小屋の中で二人のオークがドンチャカと宴会をしていた。


「辞世ノ句ヲ詠ンデ貰オウ」

「ブヒヒィ(枯れ木の葉、吹かれ落ちては、また拾う)」


 木の枝で逆さに吊られながら、ピッグは下手な命乞いをした。

 窓から見える木の葉が落ちる時、死ぬ運命である病床の子供を謳っているのか。

 また拾う辺り、死ぬ気全く無しだ。


「ふんごー(ベイブ・ルースの、ボール直撃)」


 病気の子供、夢も希望も無いな。


「ツマリ、死ンデイイワケダ」

「ブヒヒィ(いやじゃー! 下の句、ちゃんと仕事しろよぉっ)」

「ふんごー(俺は生きるっ。生きて、ベイブと添い遂げるっ!)」

「ブヒヒィ(バーラム・ユーッ。バーラム・ユーッ)」

「いい言葉ね、感動的だわ。でもそれ、毛を毟れって意味だけど?」


 フィーオに短刀を渡して、俺は小屋へと向かう。全く度し難い連中だ。

 背後からオーク達の悲鳴が上がったが、まぁ気にしないでおこう。


「アーア、保存食ヲ全部食ッチマイヤガッテ」

「また鍾乳洞まで取りに行く?」


 入り口からフィーオが入ってきて、その手にあったオークの髪を風に散らす。

 まぁポークは元よりハゲだから罰にはならん。暫く吊っておこう。


「イヤ、食ッテイケバ減ルダケダ。採取シテ補充スルトシヨウ」

「はーい。じゃあ私、荷物袋を取ってくるね」


 そう言ってフィーオが外に飛び出した。

 やれやれ、どうなるかと思ったが……普段通りの様子で何よりだ。

 エルフ狩りギルドも結果として殲滅したし、少しは落ち着くだろう。


「鉈ト鎌、後ハ長棒ダナ。紐モ持ッテイクカ」


 準備を整えて、俺は小屋を出る。

 そこには頭の毛を刈られたピッグが、虚ろな目で宙ぶらりんとなっていた。


「ブヒヒィ(そうさヅラだけは、誰も奪えない心のカツラだから……)」

「作ランカラナ、ウィッグナンカ」

「ふんごー(煌めく頭は戦士の証だ。眩しい頭を纏ってブルーな明日を救え)」

「ブヒヒィ(こんな頭じゃ救えないよ……赤い背景に真っ白な『完』の鬱エンドだよ!)」


 そんなの見せられたら、こっちが永遠にブルーとなってしまうな。

 元よりハゲのポークは余裕だが、片眉は剃られていた。例によってバカの顔だな。

 まぁいつまでもこの姿勢だと、頭に血が上って死んでしまう。


「反省シタカ?」

「「サー! イエッサー!」」

「聞いて驚かないでよ。この小屋に『オーク定食』は無いわ」

「「サー! イエッサー!」」


 なんだよオーク定食って。

 袋を背負って戻ってきたフィーオが「そんな事も知らないの?」と呆れている。


「エルフと姫騎士に決まってるじゃない」

「ジャナイッ……ッテ言ワレテモナ」

「あ、私は子供だからセーフよ。手を出したら黙っちゃいないわ」


 誰がだよ。

 というか姫騎士ってそんな定食化出来る程に存在するのか。


「んー。ジャンヌさんとか、ジャンヌさんとか、あとジャンヌさんとか?」

「全員、同ジ人ダナ」

「女海賊になったり、籠城戦で逆転勝利したり、捕虜をスパスパ切ったりする別々の人よ」

「最後ノ奴、チョットオカシイダロ」

「でも世界三大ジャンヌの中では『聖女』として一番有名よ。世の中って狂ってるわ」


 誰が決めた世界三大だよ、全く。

 まぁ深く考えても姫騎士の答えは出そうに無いし、考えるだけ無駄だ。

 そもそも騎士として叙任されない気もするしな。


「ブヒヒィ(なんでも良いから降ろして下さいー!)」


 ピッグたちの悲鳴が轟く中、俺とフィーオの無駄話は続くのだった。



 * * *



 ポークを小屋の掃除係、ピッグは荷物持ちとして連れて行く事になった。

 エルフ狩りギルドの砦から戻るまで、一泊だけエルフの里で休みを取っている。

 川を渡ってから小屋までは、行商の馬車に同乗させて貰ったし、疲労は少ない。

 とはいえ小屋に戻って早々の採取、気分的に疲れてしまいそうだ。


「ふんふんふーん。あ、カエルみーっけ」


 フィーオがそれにピョンっと飛びついて、カエルを袋へと入れる。

 やけに元気な少女と比べたら、俺はスッカリ年寄り臭いな。


「ブヒヒィ(まぁまぁ。フィーオ姐さんのストレス発散になって良いじゃないですか)」

「テカ、オマエ等、フィーオヲエルフノ里ニ連レテ行クヨウ、頼ンデタヨナ?」

「ブヒヒィ(ああ、それはですね……)」


 俺達が魔術師の洞窟に行った後、フィーオ達もエルフの里に向かった。

 だが魔術師が現れて「マルコを助けたければフィーオを寄越せ」と言われたらしい。

 もしギルドに捕まれば無事では済まない。だから、先にギルドへ潜入して脱走を手伝う。

 その手持ちの材料にフィーオが必要だ、との事だったそうだ。


「実際ハ『フィーオの懸賞金』ガ目当テダッタンダロウガ……アイツメ」

「ブヒヒィ(まぁ兄貴がギルド潰したら、もう金は入りませんしね)」


 結果的にギルドを殲滅まで持って行けたし、砦の道案内もしてくれたがな。

 彼が居なければ俺はともかく、ヌケサクの救出はかなり難しかったはずだ。

 無論、ギルドの殲滅なんて夢物語だったろう。

 幾ら不死身でも、捕らえられてしまえば『死なないだけ』なのだ。


「ブヒヒィ(俺達や自警団の人も行きたかったんスけど、邪魔だからって無視っすよ、無視)」


 ブー垂れて怒る彼には悪いが、まぁ、それは……仕方が無いんじゃない、かなぁ。

 実力の足りない人間が、何の役割も持てずに勢い込んでも迷惑なだけだ。


「ブヒヒィ(……無能な働き者じゃないっすよ、俺は。銃殺はノーサンキュー)」


 しねぇよ。どこの恐怖政治だ。

 それに、元にしてる言葉は「そういう将校に責任ある立場を任せるな」という意味だ。


「オマエハ将校ジャナイカラ、ソモソモ無関係ダナ」

「ブヒヒィ(やったー! 無能な働き者は許されたんだ!)」

「活動的ナ無知ヨリ恐ロシイ者ハ無イ、トイウ言葉モアルガナ」

「ブヒヒィ(ヘイヘイヘーイ! ゲーテ、ビビってる! ヘェイ! ビビってるぅ!)」


 道端でイタドリを見つけ、その茎をポキっと折る。

 普通は時期的に育ち切って、とても食べられた物では無い。

 だがこのエルフの森が持つ神秘的な性質の影響か、まだまだ瑞々しい。


「ブヒヒィ(無視しないで下さいよー!)」

「活動的ナ無能ノ目立チタガリカ。モウ生キテテ辛イダケダロ、オマエ」


 ピッグをあしらって、俺はイタドリを一つ齧りする。

 うーん、酸っぱい。だがこの酸味とシャクシャクとした歯ざわり、たまらないっ。


「フィーオ、コレヲ食ベテミロ」

「なになに、美味しい奴かな」


 新しいイタドリの皮を剥いてやり、少女に差し出す。

 ぺろっと舐めて「うへー」と頬を痺れさせた。

 だが、ポリポリ食べる俺の姿を見て興味が出たのだろう。

 思い切って齧りつくと、その酸味にフィーオは口を突き出しながらも、二口目を咀嚼する。


「シャキシャキ……んー! 酸っぱいけど、口の中がサッパリするね」

「塩ヲ掛ケテモ美味イゾ。油デ炒メレバ酸味モ消エテ、歯応エノ良サガ際立ツ」

「じゃあ今日のメインディッシュはコレよっ。よぉし、沢山採るぞぉ」


 フィーオは森に入って、イタドリをポキポキと採っていく。

 生命力の強い植物である。彼女が採る程度では問題無い。


「ブヒヒィ(俺も食べていいっすか)」

「オマエハ、サッキ宴会デ食ッタロ」

「ブヒヒィ(うぅ、だって誰も帰って来ないから寂しくて……)」


 寂しさを紛らわせる為に宴会とか勘弁してくれ。

 保存食が幾らあっても足りなくなるぞ。


「ブヒヒィ(じゃあ俺が採った奴なら良いっすよね)」

「採ル事ガ出来ルナラナ」

「ブヒヒィ(出来らあ!)」


 気合入れて森へと飛び込むが、その辺りは既にフィーオが漁った後だ。

 更なる奥へ向かおうとする俺達に、フィーオの声が届いた。


「ねぇマルコー。ちょっと来てー、変な奴が居るよー」


 変な奴ならここに居るのに、まだ他にも変な奴が居るのか。


「ブヒヒィ(え? 同じ場所で変な奴を!?)」

「……ヲ?」

「ブヒヒィ(いえ、別に言いたかっただけです)」


 コイツ本当に会話の邪魔だなぁ。

 ピッグを押しのけて、俺はフィーオの元へと急ぐのだった。



 * * *



 フィーオが「ほえー」と感嘆し、少し離れた位置にある大樹を見つめていた。

 俺も倣って大樹に視線をやる。すると、なぜ彼女が驚いているか良く分かった。


「トレント、カ」

「ブヒヒィ(うぉー、木が動いてますよ)」


 太い幹がミシミシと音を立てて、ゆっくりと森の斜面を下りている。

 幹の中央には顔を模した節があり、たまに緩く瞬きをしてさえもいた。

 長い枝を幾つも伸ばして、木々を傷つけぬよう避けて進んでいる。


「へぇぇ、あれがトレントかぁ。樹人って言うんだっけ」

「アァ、珍シイ存在ダゾ。良ク見テオケ」


 トレントは水場を求めて移動する習性を持つ。

 今はその移動中なのだろうな。


「あ、トレントの頭を見てよ」


 フィーオが指差す位置には、赤い木の実が生っていた。

 果物としては林檎が尤も似通っているだろうか。なかなか美味そうだ。

 しかし、トレントの実を食べるなど、想像もした事が無い。


「一応、アレモ人ダカラナ」

「ヤギのおっぱいミルクも飲むじゃない。同じよ、同じ」

「ブヒヒィ(あー、もう一度、それ言ってくれませんか)」


 コイツのせいで、世の中に禁句がどんどん増えそうだ。

 俺はフィーオの言葉に納得するような、反対したいような気分だった。


「私、ちょっとお願いしてみるねー」

「オイ、待テ」


 止めても聞くような娘じゃないが、相手は巨木のトレントである。

 もし怒らせでもすれば、その巨体で押し潰される事から逃れようも無い。

 出来れば関わりたくは無いのだが、フィーオはあっという間にトレントの背中に着いた。


「えへへー。到着!」


 背中にフィーオが張り付いても、トレントは何の反応も示さない。

 木の根がモゾモゾと動く度、斜面を抉って前へと進む。

 身体が進むと後ろ足で地面を均して、彼の居た痕跡を消しているようだ。

 なるほど、あの巨体なのに通った跡を見つけられない訳だ。


「随分ト消極的ナ性格ミタイダナ」

「トレントさーん、木の実を下さいなー!」


 彼の性質を判断するより早く、いきなりフィーオが話しかけた。

 だがトレントは、やはり反応を示さない。ゆっくりと進むだけだ。


「ブヒヒィ(言葉が分からないんですかねぇ)」

「イヤ、ソンナ事ハ無イハズダガ」

「トレントさーーーん」


 フィーオが何度も呼びかけていると、その顔に当たる節が大きく開いた。

 お、フィーオに気付いたかな?


『な……ん……か……居……る……な……』


 何か声らしき物を、その節から漏らしている。

 ゆっくりと、実にゆっくりと言葉を紡いでいたらしい。

 フィーオも首を揺らしながら、彼の言葉を口パクで真似ていく。


「トレントさん、木の実を下さいなぁ」

『こ……ど……も……か……な……』


 な、長いなぁ。

 これではいつまで経っても、意思疎通は出来そうに無い。

 俺は諦めてフィーオに戻るよう伝えたが、彼女は顔を横に振った。


「大丈夫よ。私、気の長い方だもの」

『な……に……か……言……い……た……い……の……か……な……』

「もう我慢出来ない。よじ登っちゃえ」


 短かったなぁ、もう気が切れた。

 止める間も無くフィーオは果実に到達すると、迷うこと無くそれをもぐ。

 トレントの顔色が一変する、事も無く、やはり彼はボンヤリとしていた。


「これ中の方でいっぱい生ってるよ。よいしょ、よいしょ」

「トレントノ気ガ変ワル前ニ、早ク戻ッテコイ」

「はいはい。じゃあ、ありがとうねトレントさん」


 そう言って、フィーオがトレントから飛び降りた。

 両手から幾つかの木の実がこぼれ落ちながら、フィーオが空を舞う。

 おいおいっ、なんて危ない事を!

 俺は慌てて受け止め、その頭にグリグリと拳を当てる。


「てててっ……早く戻りなさいって言ったじゃん」

「加減ヲ知レ、加減ヲ」


 叱る俺にフィーオは頬を膨らませて抗議するが、まぁ無事で良かったとしよう。

 飛び降りる際、彼女の落とした木の実を拾い集めて、ピッグの袋に入れる。


「ブヒヒィ(モゴモゴ、モゴモゴゴゴ)」

「モウ食ッテンジャネェヨ」


 まぁ毒味が出来てよかった、のか。

 後でどうなるか様子を見てから食べるとしよう。


「ブヒヒィ(拾った物は俺の物。かの聖騎士も仰ってます)」

「なら廃人になるまで拷問しなくちゃね」

「ブヒヒィ(あ……あぅ……あ……)」

「いやーーー!」


 楽しそうで良いね、お前たちはいつも。

 俺は木の実を袋に入れ終えて、ふとトレントの方を見る。


 いつの間にか、顔を模した節が俺達の方を向いて、大きく蠢いた。


『き……の……み……と……ら……れ……た……』


 トレントがゴワゴワと声の余韻を響かせつつ、言葉を続ける。


『こ……ろ……す……』



 * * *



「ころすって言ってるわよ、トレントさん」

「殺ス、ッテ言ッタナァ」

「ブヒヒィ(復讐心は悲しみの連鎖を生むだけですよ、トレントさん)」


 今までの緩慢な動きとは思えない程の速度で、トレントの腕が横に払われた。

 俺はフィーオとピッグを掴んで、全力で跳ね上がる。

 その足元を枝が薙ぎ、周囲の大木を事も無げにへし折った。


 うぉぉっ! ヤバイッ!


「逃ゲルゾッ」

「わわわっ、追ってくるよー」

「ブヒヒィ(なんだアレ、めちゃくちゃ足が早いっすよ)」


 そりゃ俺の三歩が、向こうの一歩だからな。

 これだけの人数と荷物を抱えては縮地も使えない。


「荷物を捨てて、軽くするってのは駄目よ」

「ナンデダヨ」

「まだ私、あの果実を食べて無いもの」

「言ウトル場合カァ」


 俺は袋を取り上げると、その果実を幾つか投げ付けた。

 ヒョイヒョイと器用に枝で受け取って、その度に足が遅くなる。

 よし、上手く行きそうだ。フィーオは「あー!」と叫んでいるが。


「コレデ全部ダナッ」

「あーあ、食べたかったなぁ。後で味を教えなさいよ、ピッグ」

「ブヒヒィ(いやぁ、トレントの実は美味かったですね)」

「ムカつくなぁ、こいつ」


 トレントがピタっと止まる。落ち着いたかな。


『足……り……無……い……』

「ピッグが食べた分ねぇ」

『こ……ろ……す……』

「ブヒヒィ(くっ! こんなに俺とトレントで意識の差があるとは!)」

「オマエ、死ンデ詫ビロ」


 くそ、どうすれば良いっ。果実を食ってしまった今、どうする事も……。

 そこまで考えて、俺はふと思いついた。


「オイ、果実ハドンナ味ダッタ?」

「ブヒヒィ(そりゃもう、むほっ! むは! ふひょ! って味です)」


 手近にあった手のひら大の石を握り締めて、砕く。


「感想ハ正確ニ」

「ブヒヒィ(甘酸っぱくて、初恋の味でしたぁ!)」


 それを聞いて、俺はこれなら何とかなると確信した。

 今まで逃げた道を逆進し、トレントの脇を全力を駆け抜ける。

 彼の振る枝が、ピッグのケツに掠めて「いでぁー!」と悲鳴が上がった。

 気にしている暇は無い。あの場所に行かなければ。


「どうしたのよっ、マルコ。危ないじゃないのっ」

「モウ少シダ……アッタ!」


 目的の場所に辿り着いて、俺は足元を探った。

 そして、ピッグの食った『果実の芯』を見つけて、それを観察する。

 ……よし、種が付いている!


「ホラヨッ! 受ケ取レェ!」


 俺はトレントに、その芯を投げつける。やはり彼は、枝でそれをパシッと受け止めた。

 暫くジッと芯を眺めていたが、やがてトレントは顔の節を小さく縮めていく。


『足……り……た……足……り……た……』


 そう呟くと彼は再び緩慢な動きとなり、先ほどまで進んでいた道へと戻っていった。

 ふー、なんとかなったな。


「あれ? どうして芯なんかで納得しちゃったんだろ」

「果実ハ鳥ヤ動物ニ食ワレル為ノ部分ダ」


 果肉が甘いという事は、食われる事が目的のはず。

 なのに『木の実を返せ』と来るには、別の理由があると考えられる。


「うーん……あ、そうかっ。果実の種だ」

「ソウ考エルノガ妥当ダナ」


 彼が水場へ向かっているのは、きっとそこで実を蒔くつもりだったのだ。

 後は動物達が実を食って、繁殖に適した水場で種が排泄される事だろう。

 大切なのは、種なのだ。実ではない。

 従って、種の混ざった芯を受け取った彼は、それで満足した訳である。


「なんだぁ。じゃあ果実は食べても良かったんじゃない」

「関心ガ有ルノハ、ソコカ……」


 俺はフィーオとピッグを地面に下ろして、ヤレヤレと嘆息した。

 さっきから静かにしているが、ピッグが食わなければこんな苦労はせずに済んだのだ。

 俺は文句の一つも言ってやろうと、その顔に目を向ける。


「ブヒヒィ(あ……あぅ……あ……)」


 その顔は呆けて、どこか遠くを見ていた。

 あ、やっぱりあの果実、変なのが混じってたのね。


「拾った物を食べちゃダメよ、ピッグ」


 プンプンとで言いながら、フィーオが彼の腹をツンツンと突く。

 ずっと「食べたかった」と言ってたのに、この身代わりの早さだ。


「さ、私達は採取を続けましょ。晩御飯の時間になっちゃうわ」

「……ハァ」


 少し荒れた森から色んな物を拾い集めながら、フィーオがそんな事を言う。

 掘り返された土から気絶したカエルやイモリ、その他に木の実なども転がっていた。

 るんるん気分で採取する彼女の姿を、俺は疲れ切った顔で見るのだった。


 ま、好きに集めてくれよ、もう……。

 俺は立ち去っていくトレントの背中へと視線を移し、偉大な自然の脅威に心を移すのだった。



第三十三話:完

イタドリ大好物デース。

いろんな野草が採れなくなった今も、コイツだけは毎年でも採取出来ます。

本文中にある通りの味なので、ぜひ図鑑等で調べて食べてみて下さい。美味しいですよっ!

(ただし、他人の土地にある物は、所有者に許可を貰ってから採取しましょう)


それでは、楽しんで頂けたなら幸いです。ありがとうございました!

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