Ⅲ
「まぁ全部が全部って訳じゃないけどね。だから制御役として使用者がいるの」
俺の例えは合ってると言えるのか? なんか妙にずれているような気がして嫌なのだが。明らかに気を遣われたような気がするし、俺挫けそう。何か俺の考えていることは全て見透かされているみたいで気味が悪い。
ルチがフッと笑って、さも納得したように頷いて見せた。その動作も俺にはどこか胡散臭く感じてしまって……。俺ってつくづく嫌な奴だな、そう考えて自嘲的な笑みを浮かべる。それには流石にルチも驚いたような仕草を見せたが、俺がルチの不服そうな顔に触れなかったように、ルチも俺の表情に触れてこようとはしなかった。
なんて言っていいかわからなかったのだろうが、そんなこと今はどうでもいい。問題は俺に欠片が憑いているということだ。ステッラの話を聞けば欠片は欠片とそれを制御する天使がいてやっと偉大なる力と形容できる様子。……制御出来なければ? そんな不安が俺の頭をよぎった。
俺は欠片を制御できないだろう。天使じゃないのだし、ほぼ一方的に選ばれただけなのだ。制御の仕方なんて欠片も分からないし、そもそも欠片の力すらまともに理解していない。やはり制御できずに暴走してしまうと、中から破裂したりするのだろうか?
そんな風に考えるだけで悪寒が走った。いや、考える方も悪いんだけどさ。でも考えれば考えるほど逃げ場が無いことを思い知らされるような気がして、可笑しくなってしまいそうだ。
「まぁ力に中てられたって可能性はあるだろうね。ボクたち天使からならなんでもない力でも人間からすれば大きな力だろうし、なの」
ステッラの言葉を聞いて、ルチが心底呆れたようにため息をついていた。言うのが遅いとでも言うかのようにペチンとステッラの頭を叩いていた。……何時の間に移動していたのだろうか? 移動を捉えられなくなるほど俺は体調を崩しているのだろうか? そう考えているとルチが明るすぎる笑みを浮かべて、俺の額とルチの額をくっつけた。
か、顔が近い……。今時こんなことするやついるんだ……。
ステッラと会ったときといい、今といい俺変態街道をまっしぐらではないだろうか。これは早いうちに何とかしないと将来がヤバイかもしれないなんて考えたりした。
「少し熱があるようですね」
フッとルチが離れる。首をかしげて、ぼんやりとルチの顔を見つめていると思いっきりベッドに倒されてしまった。とりあえず寝ろと言うことなのだろう。そう解釈して、布団の中にもぐりこむ。あ、でも玲……。まあいいか。あいつなら勝手に漫画置いて帰るだろ。用件が有れば母さんに伝えとくだろうし。
ぼんやりとした思考の中、大胆なのなんていうステッラの声と、対照的に酷く焦ったような声で五月蝿いなんて返すルチの声が聞こえて来る。そんなやり取りが妙に可笑しくて、安心できるものに感じた。