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てんしさまのすむところ-刹那の大空-  作者: 霧景
序章 落ちた天使と、力の欠片
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 この世界……天使達は下界と呼ぶらしいが、ここに来た理由……つまり探し物について話し始めた。探し物は“欠片”と呼ばれているものらしい。

 話があまりにも長かったのでまとめると、その欠片とやらは天使達の世界のバランスを保つためのものだったり、上位の天使に与えられる力の結晶だったりするらしい。俺は欠片といわれるとどうしてもガラスの破片とかその辺を思い浮かべてしまうが。

 ……とまぁそんなことはどうでもいい。とにかくその欠片が何らかの異常で下界に散らばってしまっていた、とのことだ。それは人間からすれば膨大な力を秘めているために危険、だとのこと。

 使い方を間違えば、すぐに破滅を招くようなそんな危ないものもあるらしい。最も正しい使い方をすればそんなことはない上にある程度の恩恵に与れるらしいがそれも好ましくないとステッラは言った。

 そもそも人間が天使の使うものの正しい使い方を分かるわけが無いとルチが文句ありげに言っていた。……ごもっともである。説明されれば理解できるだろうがそれが無ければただの綺麗な何か、程度の認識しか持てないであろう。

 俺がそこまで考えたところで、ステッラは僅かに表情を曇らせて「悪魔なんかに奪われたら大変なことになっちゃうの」と言ってため息をついた。半分理解できていないが何となく大変そうだなぁと思う。


 「で、アオ兄が欠片に選ばれちゃってるんだけど……」


 申し訳ない、とでも言うような表情でステッラが言った。欠片に選ばれたという意味が分からなくて首を傾げていれば、ルチが「何かアオちゃんが欠片になってる、みたいな言い方ですね」といった。ステッラの話を聞いたのにもかかわらず頭に浮かんできたのはやはりガラスの破片のようなものであった。

 違うと言うかのようにステッラが首を振る。なんだかもう意味が分からない。欠片に選ばれるって何? 何で俺は初対面の子供に兄付けで呼ばれてんの? なんていう具合に頭の容量が吹っ切れてしまいそうである。


 「選ばれるって言うのはええっと……取り憑かれる、みたいな感じなの」


 選ばれた、そう言われればなにやら特別な感じがするというのに、一言、取り憑かれたに変化しただけで大分印象が悪くなるものだった。言葉って大事だ。

 なんて言って良いか分からずにただただ黙り込む俺をルチが苦笑いを浮かべながら見つめている。ステッラは少し首をかしげて「アオ兄って何か特別な力を持ってたりする? 超能力って呼ばれるやつとかさ」なんて言っていた。

 どこの非現実だよそれ、そう突っ込もうと思ったけれど、天使に出会ってしまっている時点でもう現実もクソもない。俺の知っている“現実”というものは目の前にいる自称きゅーとな天使様の登場と同時に消滅済みだ。

 ああ、この突っ込みはステッラが名乗った時に使うべきものだった。使いどころすっかり逃しちまったよ。いや、別にいいけど。

 というかこの調子だと今後悪魔やら超能力者やらがわんさか出てきそうで心配だ。

 俺そこまで許容範囲広くないけど大丈夫か? 気付いたら悪魔相手にタイマンはってましたとか洒落になんねぇぞ。絶対勝てるわけ無いだろ。俺、あくまで一般人だぞ。人間相手ならいざ知れず得体の知れないものなんかと戦えるわけが無い。

 一応神社育ちではあるけれど、俺は霊感とか殆どないし。

 神様とか妖怪とか、名前は聞いたことはあるけれど見たことなんて無い。というか出合っていたらステッラに会うよりも早く色々信じてるよ。俺見えないものは信じない主義なだけだから。幽霊は一応見た事あるから信じてるし。今は本当に見えなくなったけど。見えるとしてもほんとにぼんやり。

 そんなわけで俺は普通の子のはずだ。


 「アオちゃんは普通の子ですよ。あぁ、でも少しだけ異質な感じはありましたね。僕はもう慣れているのでなんともありませんが」


  ルチが笑いながらそういう。異質な感じってそれがある時点で普通の子って言わないよな? そう考えて深くため息をつけば、ステッラが「んー欠片に選ばれたってことは何かあるはずなんだけどなぁ」なんていう風に言って首をかしげていた。……俺としては何も無い方がありがたいのだが。

 生憎超能力だかにあこがれるような歳ではない。確かに一時期は憧れたりしたけど。


 「ふーむ。まだ覚醒してないのかもね。そうでもない限り欠片に選ばれるなんて無いはずなの」


 ステッラの言葉を聞く限り、俺は普通じゃないらしい。もしくは今は普通でも、この後非現実な力を身に着ける可能性があるようだ。……大きかれ小さかれ、そういうのは勘弁して欲しい。あんまりいいイメージって無い。ほら、よくあるじゃないか。

 バレたら殺されるだとか、バレたら研究素材、だとか。あくまで漫画から手に入れた知識ではあるがその辺はやっぱりいい気がしないし、正直怖いだろう。それにそれが原因で家族と友達に迷惑かけるの嫌だ。

 って俺、何言ってんだろ?

 そんな風に考えていたらステッラが軽い調子で「ボクはアオ兄の家に住まわせてもらうの。そうすれば、時さえ来れば欠片も取り出せるし、楽なの。ちなみに欠片を探すのも手伝ってもらうの」なんていう風に笑っていた。

 え? ちょっと待てよ、何勝手に決定してるんだよ、そう言おうとしたところでステッラは笑う。無邪気な笑顔で。……何というかそういう笑顔には弱いらしく俺は頷いてしまっていた。俺の馬鹿野郎。もうちょっと頑張れ。

 というか何で俺なんだよ、ぶつぶつとそう呟いていたら、ルチが苦笑いを浮かべながら俺の肩を叩いた。


  「……いざとなれば僕も手伝いますから」


 そう言ってルチは笑う。今はそれが酷く嬉しかった。ステッラじゃなくてルチが天使に見えそうなぐらいだ。そのままルチとステッラに手を引かれ俺は家へと向かって歩く。

 ルチも欠片とやらには興味があるようで、詳しい話を聞きたい、といい始めたのだ。……こうして俺はずるずると“非現実”の世界に足を踏み入れることとなった。


NEXT Story 一章-欠片≠偉大なる力-

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