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てんしさまのすむところ-刹那の大空-  作者: 霧景
一章 欠片≠偉大な力
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 「よぉ、久しぶりだなクソ天使」


 その窓に張り付いていた少年も背中に翼のようなものをつけていた。翼といってもステッラのものとは違い悪魔が持つようなぎざぎざしたもので、服は赤と黒を貴重にしている。……目がイテェ組み合わせだ。髪の色は黒、目の色は赤……とことん赤と黒だ。しかし頭にある角だけは黄色っぽくて……ってあれ? 角? ああ……飾りだよな。ただのコスプレだよな? 半ば願うかのように俺は考えをめぐらせる。


 「ネーロ……」


 キッとステッラが少年を睨みつけた。……知り合いか? ステッラの知り合いだとなるとコスプレでない確率が馬鹿みたいに上がるんだろうな。事実、ステッラが天使なのだからその周辺がおかしな奴らでも納得がいく。いや、むしろ回りにまともなやつがいるのだろうか?

 そんなことを考えていると少年はニヤリと笑った。そして俺の目の前に一瞬で移動してくればジロジロと俺の顔を、嘗め回すかのように見た。なんだ、喧嘩売ってるのか? そう思って顔を顰めると、少年はさも面白そうに笑う。むかつく奴だ。


 「初対面のやつもいるし、名乗っておくか。俺はネーロ・ディスペラッツィオーネ。そこにいるクソ天使の敵、悪魔だ」


 ステッラのときもそうだけど、自分が人外であることを自ら明かすのが流行ってるのだろうか? ちなみに少年、ネーロはそこにいるクソ天使と言ったときに、ステッラを見た後にルチを見て嗤った。

 なぜルチを見たのか分からないが、まぁいい。この場にいる人物確認と言ったところだろう、そう考えて頷く。この少年が名乗ったときルチは食器を下げていたから見えなかったんだろう。

 ステッラは俺の目の前で胸を張るネーロを、まるで危険物を排除するかのように掴んで俺の前から避ける。ムッと頬を膨らませてネーロに詰め寄った。普段は見せないような真剣な表情で「何しに来たの? 欠片はここにはないの」なんていう風にはっきりと言う。ネーロの方は楽しそうに笑っていた。


 「欠片ならそこにあるだろ。欠片に選ばれた器と一緒に、四つも」


 ネーロが俺その後に玲を指差して言う。しかし俺はそんな事はどうでもいい。頭がイテェし、さっさと寝たい。気づくとルチが俺のことを守ろうとするかのように、俺のことを抱きしめ始めた。……ルチの体温が冷たく感じる。 それほどまでに熱が上がっているのだろうか? そもそも熱が上がると他人の体温を冷たく感じることがあるんだろうか? そんなことを考えていると、俺を抱きしめたままルチがクスリと笑った。

 可愛いかもしれない。いや、異性を見る目とかそういう目ではなく。

 不服そうな表情を見せるステッラは無視。ネーロは納得したかのように何度か頷いていた。何を考えているか分からないから突っ込む気も起きない。玲は無表情で足を組んで座っている。その目には不可思議に色が瞬いていた。

 ゆっくりと近づいてくるネーロに向かってルチが満面の笑みで銀色の何かを投げつける。それはもう爽やかな笑顔で。僅かに驚くような声を上げながらもネーロは近づいてくるのをやめなかった。だんだんルチの笑みが引きつっていくのが分かる。あれ、ルチさんなんか怒ってる? それともあまりにも怪しいから威嚇だろうか? 良く分からない。


 「おいおい、そんなにカリカリすんなよ。お嬢さん?」


 ネーロのその一言でルチの何かが完全に切れたようだった。凄い速さでテーブルの上に置いてあった果物ナイフを投げつけ始める。辺りを見てみると包丁やらフォークやらが散らばっていた。……ルチさんそんなもの投げたら危ないから。そんな引きつった笑みでフォークやら何やらを投げるのはやめて欲しい。酷く怖いから。

 しかも片手はしっかりと俺の身体を抱きしめているのだ。……何かの間違いで刺されたりしないよな? それが不安で仕方がない。

 それにしてもルチの奴、お嬢さんって言われたらキレるんだな。やはり女顔だということを気にしているのだろう。……というかルチの場合は明らかに髪型にも問題があると思うが。ステッラは完全に苦笑いを浮べていた。……ネーロはルチの手から放たれるフォーク等を必死に避けている。

 なんだかそれが珍妙な踊りを踊っているようにしか見えない。まぁ笑おうにもそれだけのことが億劫で仕方がないのだが。


 「偉大な力とその器を守るのに必死か? それともお嬢さんって言われたのにキレてんの?」


 ネーロは面白そうに笑ってそういう。あぁ、ルチの笑顔がだんだん引きつっていく。というか既に笑顔といえないレベルまで崩れているのだが……。ネーロはそれに気づいていないのだろうか? それとも気づいた上であえてからかっているのだろうか? どちらにせよ止めてもらいたい。

 なぜかって? フォークを投げるうんぬんの前に俺を抱きしめる力が、引きつる笑顔に比例するかのように、どんどん強くなって苦しいからに決まっている。抜け出そうにも身体に力が入らないし。玲の野郎は相変わらず無表情で動こうとしない。

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