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Des mots

作者: 白州藍樹

 うそは好きです。優しいから。

 どうしてみんな、そんなにきれいでいようとするの?

 もっと小狡くていいじゃない。悪くて、穢れていていいじゃない。

 そんなに自分に名誉があるの?どうして?

 それが普通のことなの?

 それならあたしはどうなの。こんなに黒くて悪徳で他人に付け込んでばかりで、あなたたちが自問するよりずっとわるいわるいあたしはどうなるの。あたしは自問なんかしない。ここにいられるなら、生きていられるならどんな言い訳だってする。どんなうそもつく。どんなことだってする。ひとりにならなくてすむなら。

 あなたたちはきれいよ。

 あたしがくるしくなるくらい。みんな、とっても、きれい。

 あたしは自分を責めさえしないもの。

 だけど、だめなの?やっぱりこれは甘えなの?

 きれいになろうとしなくちゃ駄目なの?生きている価値がないかしら。

 いつまでも暗いところにいたい。あかるいところはかなしくて、生きていけない。


 自分にも、他人にも、うそ。

 うそだけ。うそだけ。フィクションばっかり。

 だからあたしにはどんな嘘も本当。

 口をついたらもう事実。

 それは一つの世界の真実になるの。

 重複してめちゃくちゃで、偶然の言葉でも、生み出されたらもう言霊。

 訂正はできないの。

 すべてのうそが本当。冗談でもほんとう。

 信じなくちゃ生きていけない。

 絵本のなかの世界も。


 消えたいのも死にたいのもうそ。

 うそで本当で、ほんとうは救われたい。

 だけど明るいところにはでたくなくて。


 生きていけない。生きていけない。

 あたし、これからどうやって生きていったらいいの。

 うそがうそなら、本当はどこにあるの。

 あたしはからっぽで、魂を入れられる前の作りかけのお人形。

 ここに在るべくとずっと足掻いて、きたけど。

 なにを払って、なにを手にしたんだろう。

 ああ。

 生きて、いけない。


 ほんとうは、ほんとうはね、あたし、死ぬほど……。

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