第3話 邂逅
呆然としていたクロエとシロであったが再度少女に刀を突きつけられながらまたも同じ暴言を吐かれてからようやく我を取り戻す。もっとも、冷静になれたわけではなかったが。
「お、おい! 美少女にクソ虫言われたぞ」
「い、いやぁビックリですよ。こんな美少女がドSとか……そそられるッ!」
「えっ?」
「え?」
と、とぼけた会話を続けようとするもその件の美少女はそれを許さずに、若干の怒気を織り交ぜながら今度は右手を仰ぐようにするジェスチャーも入れて表現する。
「来い!!」
流石にこれ以上は刀で斬り付けられかねないと判断したクロエとシロは座った状態から立ち上がりその少女の向かう先へと付いて行くのであった。
少女に連れられて行くそこからの道程はまさに針のむしろ状態となっていた。
薙刀や刀こそ、こちらに向けられてはいないが、明らかに敵意をむき出しな視線をびしびしこちらへと向けてくる他の狐族の人々。装備じたいはクロエ達の側まで来たときにざっと見た限りではそこまで強い武器防具の類ではないと判断出来たため、強引に逃げる事も可能と判断して黒刀と聖剣は預けたままになっているが、如何せん視線の攻撃力だけは無効化出来ないようであった。
そんな状態に耐えかねたのかシロがクロエへと話を振ってくる。
「そ、それはそうとクロ先輩、彼女日本語使いましたね」
「単語しか言ってないのが微妙な所だが日本語の存在自体は残ってるみたいで安心したな」
そういいつつもクロエは<索敵>のマップを見つつ思考を深めていく、現在この少女達の小隊はクロエ達が寝ていた所から南西へと向かって進行している。少女達の格好や小隊での行動を考えると恐らくどこかに拠点があり今はそこへ向かっているのであろうと考えられる。
もっともクロエ達を連れ帰ってどのように処置をするのかはいくつか想像は出来るが現段階では憶測に過ぎないのでそこまで深く考えることをせずにその思考を放棄する。
この狐族がどの程度の技術力を持ち、常用的に日本語が使える人がその中に存在しているのかを確認し次第、利用出来ないようであると判断出来たらすぐに逃げ出そうと考えるのであった。
どの程度歩いたであろうか、クロエとシロの2人での移動とは違い周りのペースに合わせての移動なので距離の把握が難しい。<索敵>のマップを見ても周りは森であり木々しかないため平面でしか表示されずピンを刺すことも出来ないマップでは移動距離を計ることもままならない。
それだけではなく少女達小隊は常に周囲へと警戒を怠らず、更にクロエやシロをも監視しながらであったため通常より更に遅い行軍速度であったのは推し量れる。しかしそのような道程も2時間ほどで終わりを迎えたようだ。
「お、マップに中立表示が出てきたぞ」
この<索敵>スキルによるマップには赤点で表示される敵勢表示、黄点で表示される中立表示、青点で表示される友軍表示が存在していた。黄点で表示される中立表示というのはゲーム時代では主にNPCなどに適用されていたが、こちらの世界では恐らくこちらに敵意も好意も持っていない存在がその様に表示されているのであろうと推測をたてていた。当然彼らを取り囲んで護送している狐族の彼女らは真っ赤な赤点表示になっている。
「ほんとだ、ってこれ多くないっすか?」
マップに表示されている黄点は最初こそ3人程度であったのだがその表示数はその拠点へと向かうにつれどんどん増えていく。当初の2人の考えでは大きくても小さな村程度だろうと思っていたのだが、表示数が100を超えた段階でその考えが不適切だと思い直した。
そして最初の3人が表示された場所へと近づくにつれ森の木々は少なくなり、その3人が目視出来るほどの距離になった時、目の前には信じられない光景が広がっているのであった。
森の中、それも恐らく帝国領土までまだそこそこの距離がありゲーム時代では特に何もなかった地点。そこには日本古来からある平屋の大きな屋敷と、それを取り囲むように点在する家屋があり、その光景は随所に設置されている灯籠によりまだまだ朝焼け前のこの時間、森の中のポッカリと空いたこの空間に幻想的なその光景を映しだすのであった。
「うお、すげぇ……」
「しっかりと村の中も整備されてますよ、畑とかもあって水路もちゃんと整備されている」
「まさに古き良き日本の風景って感じだなここまでくると」
そうですねぇ、とその光景に圧倒されているのか煮え切らない感じでそのまま思考に耽るシロであるが、それを気に留めることなく小隊は村の恐らく関所であろう場所へと近づいていく。
するとそこでは関所の左右に陣取り薙刀を持ち警備していた2人と恐らく横合いにある小屋で休憩なりをしていた1人の狐族の青年達が少女たち小隊へと右手を左胸に持っていく敬礼を行っていた。
その3人へと少女が何事かを言っているのは聞こえるが解読が出来ないため何を喋っているのか理解することは出来なかったわけであるが、小屋に居たであろう武装をしていない青年が少女の話を聞き終わったと同時に少女へと頷き屋敷の方へと走っていくのが見えた。恐らく上司かそれに準ずる者への連絡を走らせたのであろうと判断するクロエであった。
そしてそのまま何事もなく関所を通され大方の予想通りにクロエとシロは村の中央に鎮座する巨大なお屋敷へと連行されるのであった。
◆◇◆
凄まじくでかいく、城門と見紛うような規模の門を抜け恐らく母屋なのであろう村の入り口からでも見えていた中央の一際大きい屋敷へと少女達に囲まれながら進んでいく。門から母屋までの道中にはそこそこの数の狐族の女性が点在していたが、みな等しく少女達へと敬礼を行っているところを見ると恐らく少女達はこのグループの中でもかなりの地位にいるであろうと予想できた。
そして母屋の目の前まで到達し中へ入る段階でクロエ達は手を恐らく手ぬぐいか何かであろう布で後ろに縛られたのだが、当初ここで逃げるべきかと思ったが手ぬぐいへと力を入れると布の引き千切れる感触が伝わってきた為問題ないと判断して素直に縛られるのであった。もっとも態々ここまでついてきたにもかかわらず何も確認せずに逃げ出すというのは論外であり、このまま牢屋なり拷問部屋なりに連れて行かれない限りはおとなしくしておこうとの判断でもあった。
手を縛られ終わった段階で足装備も剥ぎ取られ素足となるもののこれら装備も既に帰属属性となっているためチェンジを行えば復活することは既に検証済みなので特に渋ることなくされるがままになる。
母屋に入った段階で人数が減りクロエとシロに2人ずつと少女という5人編制に変わった少女達に連れられペタペタと素足で廊下を踏みしめながら進んでいく。途中部屋がいくつかあり、女中の格好をした狐族の少女達がせわしなく行き来していた。当然その彼女達も少女を見かけると敬礼ではないが腰をしっかりと折るお辞儀をしている。もっとも顔を挙げた後にクロエとシロを興味深々の眼差しを向けていたのだが。
そしてそんな視線に晒されつつも少女達に連れられクロエ達は現在30畳もの大きさを誇る部屋へと通されていた。
「こいつはすげぇ……」
「広さもそうですけどここから見える庭もすごいですよ」
その言葉を聞きクロエも横へと視線を向けると、確かにそこは素晴らしい日本庭園のような庭となっていた。
しばし言葉も忘れその情景に見惚れていたクロエ達であったが少女が先に痺れを切らしクロエの背を鞘入りしている刀で小突き進むように促す。
「せかすなって怒りっぽいと老けるぞ」
言葉が通じない事をいいことにそんな失礼な言葉を少女へと投げかけるが相手もまた何を言っているのか理解出来ないためか何も聞こえていないかのように振る舞っている。
これ以上無駄な行動をしてるとまた少女に鞘入りの刀で殴られかねないと思い、この大広間へと入った時から目に入っていた巨大な御簾へと向かって歩いていくのであった。
御簾の前へと移動させられると少女達に膝をつけさせられ膝立ちの状態とさせられる。
しかし、そんな状態ではあったがクロエはまた別の事へと考えを巡らせていた。何故彼女達は恐らくこの村で一番重要であろうこの場所へと自分達を運んできたのか、牢屋や拷問部屋ならまだ理解出来たがこの様な所へ運ばれてくる理由が検討つかなかった。もしかしたらこのまま即座に打ち首にされるのでは?という考えすらも浮かんできたその時、答えは御簾の向こう側にいるであろう人物の口から紡がれたのであった。
「申し訳ありません。別に手荒な真似をするためにここにお呼びしたわけではないのですよ」
そういい御簾の向こう側から紡がれる声の主は恐らく着物を着ているのであろう、袖口を口元へもって行きころころと笑うのであった。
「ここ数百年とこの村の側へ冒険者の方々が来たという事がなかったものでして、更に貴方方のレベルがLv280にも達している葛葉の<サーチ>ですらわからないみたいでしたので。若い者達は過剰な警戒をしていたみたいですね」
困ったものです、と苦笑を含めつつも話すその女性。葛葉というのは恐らく先ほどから後ろで警戒をしている少女なのであろうとは簡単に予測できた。そして<サーチ>なるスキルは聞いたことがなかったのでその事について聞いてみるべきかと口を開こうとした時、クロエとシロともに未だに気づいていなかった事を告げられた。
「そして更に、貴方方は古代語しか話せないようでしたので私めがお話を伺おうと思いまして」
その言葉を聞きクロエとシロはようやく現在の異常に気がついたのであった。御簾の向こうにいる彼女は古代語――そう、日本語でこちらへと話しかけていたのであった。
「クロ先輩」
「あぁ……」
その事実にようやく気づき、また言葉が通じるという事にほっとする2人であったが、御簾の向こう側にいた女性の様子がそこではたと変わる。
「す、すみません。今お話になられたお方の声をもう一度お聞かせ下さい」
唐突に出されたどこか切羽詰ったかのような声に首を傾げつつもシロがもう一度声をだす。
「俺ですか?」
「すいません。もう1人のお方です」
そう言われシロはクロエへと訝しげな視線を向ける。
「俺か? 俺の声がどうしたんだ?」
俺の声はそんなに注意を引くような声なのか?と見当違いな考えをしつつも答えるクロエであった。
そしてそのクロエの声を聞いた御簾の向こうに居る女性は慌てたように立ち上がると今度は予想外な言葉を投げかけてきた。
「も、もしかして貴方のお名前はクロエ様ではありませんか!?」
「お、おう……って何で知ってるんだアンタが」
その言葉を言い終わる前に首を傾げていたクロエ達の前にある御簾が勢いよくたくし上げられ、そこにいた女性がクロエへとまるでタックルするかのような勢いで飛びついていく。
「やはりクロエ様なのですね! お帰りになられたのですね」
「うおっ、何だ何だ」
そういいクロエの胸へと顔を埋めているのは桜色の着物を身に着けくすんだ金髪などではなく綺麗なまさに黄金の如く輝きを放つ金髪の上に同じ色の耳をつけ更に同じく綺麗な色の九本もの尻尾を生やしている傾国の美女と言い表すのがここまで当てはまる者はいないであろうという程の美女であった。
◆◇◆
6つ存在する職業の中にある召喚師という職業はやや特殊な存在であった。召喚師の根底にあるものは召喚契約を行った存在を呼び出し、その存在と共に戦うというものである。そのため職業を選択した段階で召喚契約を行わなければいけないというシステムが存在していた。召喚契約とは人がそれ以外の存在と契約を結ぶことで成立するものであり人以外の生命体であればどのような存在でも契約を行うことが出来た。もっともプレイヤー側があれこれと選んでやるのでは面白くない、また被る可能性が多いになるという開発者達の意見の元、数多くのパターンの中からランダムで2体と召喚契約を結ぶシステムとなっていた。そのシステムのもとクロエが契約を行った生命体というものが妖狐と白龍の子供であったのだが――
「てことはだ、君は俺が契約していたあの妖狐の玉藻ってことでいいのか?」
「そうです! 本当に……本当にお待ちしておりました」
そういい目の前で、目尻に涙を浮かべつつクロエを真摯な眼差しで見つめているのは先ほどまで御簾の向こう側にいた女性、玉藻である。
「あれ? でも先輩が使ってた妖狐ってまんま九尾の狐でしたよね?」
目の前の女性は確かに狐耳と尻尾は存在しているが二足歩行している人型であり、とてもゲーム時代の狐姿には到底見えない。
「そうですね、クロエ様達古代人が居た時代は妖狐のままでした。クロエ様達が消えてからですね、我ら妖狐族がこの様な人型になれるようになったのは」
そういいつつ玉藻は自分の耳や尻尾を障りつつ説明を行う。
「ちょっと待った、さっきから古代人やら古代語やらって単語が出てきているが何だそれは」
ゲーム時代の設定では存在しなかった単語に困惑をしつつもクロエは玉藻に問いかける。
「そうですね、このお話をする前に現在の年号を。旧暦と言いましても現在では知っている人などほぼ皆無ですが、アルカディア暦で表すと3422年になります」
「はぁ!?」
「3000って……マジですか」
アルカディア暦、それはダイブゲーム<アルカディア>が正式オープンした日を紀元とした暦である。そして玉藻の話が本当であるとすればそこから更に3000年以上経過してるという事になる。
「本当です、そしてクロエ様達が古代人と言われる所以はアルカディア暦140年に起こった古代人の消失です」
そういい玉藻の瞳は真剣な眼差しとなりクロエ達を見つめる。
「140年にクロエ様達古代人、あの頃の呼称ですと軍人の方々が一斉に消失したのです。それこそ本当に唐突に」
「消失……運営終了とかですかね?」
「ゲームだったらそれで通るが今俺達がいるのは紛れも無い現実だ、原因がわからんな」
そういい考えを巡らす2人であるが玉藻の話はまだ続く。
「あの当時国々は戦争を行い、ここアルカディア大陸に街を数々築いていましたが、古代人消失に伴い戦力を失った国々は次々に瓦解していきました」
それは当然の結果だったのであろう、ゲームであった頃クロエ達は一兵卒になり戦争に従軍していたのだ。その数も1つに国に30万人以上のアクティブユーザーが居たのだ。その様な莫大な戦力がたったの一日で全てが消失するなど想像することも出来ないであろう。
「そこからは謀反や反乱、革命などいろいろな事があり全ての国がほんの数十年で費えました」
「当然の結果っちゃ結果だが後味が悪いってレベルじゃないぞ」
「ですが、それも既に3000年以上昔の話です。そこから3000年の時を経て各国、現在では完全に別物の歴史を歩んでいます」
古代に戦争があり、また軍人が存在していたなどの痕跡は残っていることは残っているがほとんど忘れ去られているとの事だ。
また現在各大陸で使われている言語形態なども全て0から作られたため古代語こと日本語の解読などが出来ないとして研究が遅々として進んでいないとの事らしい。
「あれ? それでも君みたいに長寿な妖怪は日本語を解することができるんじゃないのかい?」
「それももうほんの一握りしか残ってません。それに私達のほとんどが軍人の方々と契約をしていたのです。例え主が居なくとも他の人族に協力などはしたくないのです」
そう言っている玉藻の様子はどこか憮然としたものがあり恐らく昔に何かあったのではないか、と思わせる程にはわかりやすかった。
「まぁ歴史はその程度にしておくか、詳しくはおいおい聞くとしよう」
「そうですね、既に過ぎ去ってるものを今積み込む意味もあまりありませんし」
そういい現在どのような世界情勢になっているのか今後の行動への障害となるものは存在しないかという理由も含め玉藻へと問いかける。
「そうですね、クロエ様達が所属していた帝国領土があった場所は現在では小国家群が多数存在する土地になっています」
「アルカディア大陸まで伸ばしていた領土はどうなった?」
「ほぼ全滅しています。ただクロエ様が納めていた領土、桜花でしたら現在でも残っていますよ」
「は? ちょっと待てなんで桜花だけ残ってるんだ」
桜花とはゲーム時代にクロエが領主をしていた領土でもあった。もっとも人数が多くなりすぎて城を部隊のホームとして使うためだけに領主となったのであったが。
「軍人の方々が一斉に消えたときクロエ様と聖様は消えてしまったのですが、御二人の御子、クロ太郎様だけが残ってしまわれたのです」
その言葉を聞きクロエとシロが硬直する、そして玉藻もまたクロエ達の様子がおかしいことに気がつきその場を沈黙が支配した。
時間にしておおよそ5分ほどであろうか、かなり長い間固まっていた2人であったがクロエがシロに腕を回し、後ろへと振り向かせ話しかける。
「おいシロ、聖ってお前のネカマキャラだよな?」
「間違いないはずですよ、ていうかクロ先輩のクロエと結婚したの俺のあのキャラですよ」
男が2人してひそひそ話している姿はよそから見ると奇異なものであるのだがそれを見てもどうしたのだろうか?と首をかしげている玉藻は天然なのであろうか。
結婚システム、それはMMOによくあるシステムであり<アルカディア>にもそれが存在していた。もっともこの結婚システム、利用した時の利点を隠したままの実装となったため憶測が憶測を呼び、何かすごい恩恵があるのではないかと話題になり女性プレイヤーを捕まえ結婚をしてくれと土下座するユーザーが多く発生したのであった。そんな中クロエ達を含む数人の廃人プレイヤーは脳内チップの性別表記をごまかし女性キャラクターを作りフレンドと結婚させるという暴挙に打って出ていた。そして生まれた夫婦の一組が、クロエと聖であったのだが――結婚してから何かアイテムが贈呈されたわけでもなく経験値に補正が入るなどがあるわけでもなかった。そして数ヵ月後に<アルカディア>へとログインするとこの様なシステムログがクロエの脳内に流れるのであった。
――男性プレイヤーキャラクター:クロエ 女性プレイヤーキャラクター:聖 夫婦の間に子供が誕生しました。 子供の名前を決定してください。――
そう、何を隠そう結婚イベントとはNPCの子供が生まれるだけというまったくもってどうでもいいシステムであったのだ。
結果クロエと聖の子供の名前はクロ太郎という凄まじく投げやりな名前をつけられそのまま数年放置されることとなったのであった。
「僕達オホモ達ってか」
「やめてくださいよ気持ち悪い」
本気でクロエから距離を取りつつシロが玉藻へと話の続きを促す。
「それで? なんで桜花だけ残ってるんです?」
「それは、クロエ様達の御子や守護してきた領土をを守るためにフリアエが桜花を守護していたからです」
フリアエ。それはクロエが召喚師として契約した白龍の子供につけた名前であった。
「そうか……」
思い入れもそこまでなかった子供であったが命をかけて守ってもらってたと聞き考えを大幅に改めるクロエであった。
「でもそれですと桜花の人間は日本語を話せるのでは?」
そしてそのもっともと言える疑問をシロは玉藻へとぶつける。
「えぇ、恐らく2500年前までは話せたはずです。ですが私達のように軍人の皆様が消えてからは人型を取れるようになった魔物が多数存在しています。それらは独自の言葉や文字、文化を築いて軍人ではない古代人の生き残りと接触したのです」
その後数多くの言語が乱れる混迷の時代が訪れ、その中で自然と淘汰された結果、日本語のような完全に特殊な文法の言語は使いにくいとされ歴史の闇へと消えていったとの事であった。
「な~る。まぁそれならしょうがないか。とりあえず今日の所はここらでやめておくか無駄に溜め込んでもしかたが無い」
「そうですね、いろいろと衝撃の出来事があって考えをまとめる時間もほしいですしね」
「それに、だ。ちょっとやっておきたいことがある」
「ん? 何かするんですか?」
「なーに実験だよ実験」
そういいながら玉藻と日本語がわからないため置いてけぼりにされていた葛葉へと意味深な視線を向けつつ立ち上がるクロエであった。
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