第2話 遭遇
黒龍ファブニルを討伐してから約3時間後、クロエと汚っさんは原始の山の麓へと移動していた。
標高10000mの山を一般人が平野の移動を行う程度の時間で踏破しているのは流石Lv100のステータスを持つクロエと汚っさんであったと言えるだろう。
原始の山の山頂部から見た通り山の麓は鬱蒼と木々が生い茂る原生林となっていた。
そんな森の中を無言のままクロエと汚っさんは黙々とある程度木々が少ない場所を見つけるまで移動し続けた。
「よし、とりあえずここならそれなりに開けてるし平気だろう」
そういいながらクロエは黒刀を装備した"まま"<浮遊>の魔法を行使し、汚っさんの丁度真上に移動する。
「移動完了っと、んじゃ汚っさん……いやもういつもの通りシロでいいか、シロ! <ワールランペイジ>よろしく」
「はいはい、わかりましたよっと」
軽くため息を吐きつつシロは腰だめへと聖剣を持っていき地面と並行になるように構えを取る。
「フンッ!」
軽く勢いをつけその場で聖剣を横に持ったままグルリと一回転をする。
するとスキル<ワールランペイジ>が発動し、シロを中心とした円状の斬撃と暴風が周囲の木々をすべてなぎ倒し、更に凄まじい剣速によって巻き起こされた風によってそれらの倒木をすべて吹き飛ばしいき、シロを中心とした半径10mの木々がない空間を作り上げた。
「やっぱり威力だけじゃなくて効果範囲も上がってるな、ゲームの頃はせいぜいが半径5mだったろ」
「そうですねー、<ワールランペイジ>でこれだと集団戦している時の誤爆が非常に怖いですよ」
話しつつもクロエはシロが吹き飛ばした木を取りに行き、それを黒刀で椅子に丁度いい大きさへと切り分けシロへと投げ渡す。
「ほらよっと、とりあえず座って現状の確認といこうじゃないか」
「とっとっと、こんなでかいの投げないでくださいよ。現状確認は確かに必要ですね、何せ命にかかわりそうですし」
木を取りに行った際に適当な小枝を持ってきたクロエが魔法系統下級陣作成のスキル<スクラゥル>を使い魔力を小枝へと込め、地面へと文字を書いていく。
「まず第一にここはゲームの世界じゃない、と」
「異世界召喚ですよ、いや召喚者が居ないこの場合は転移ですかね?」
「まぁどっちにしろここはゲームじゃなくて現実と見るべきだな」
そういいながらクロエとシロは深いため息をつく。
「しかし、何で俺らがこんな事になるかねぇ……」
「普通、異世界召喚モノっていったら若い子が呼ばれて精神的に強くなりつつ帰り道を探すってのがセオリーですしね」
「その点俺らは27と24のそれこそ若い子から見たらオッサンが転生だとよ、マジで誰得」
「それに俺ら生粋のネトゲ廃人ですしねぇ」
そこで若干の沈黙が二人へと降りかかる。
そしてクロエがぽつりとシロへと問いかける。
「お前、実際問題家に帰りたいとか思うか?」
その言葉を受け、吟味しているのかシロは地面の文字を見ながら身動きひとつせずに座っている。
そして1分程度の沈黙のあとクロエへと視線を合わせ、ニヤリと笑った。
「今一生懸命考えてみましたけどまったくないですね! ていうかむしろ仕事しなくてラッキー?」
「ですよねー、俺も正直仕事以外は問題ないな。仕事も重役ってわけでもねーし補填がきくしな」
「それにむしろ、こんな夢みたいな展開は好奇心がうずいてやばいっすね」
「所詮俺もお前もネトゲ廃人って事だな。ただまぁこの現状を自慢出来ないのはちょっと惜しいけどな」
ひとしきり言い合ったあと、話の路線が完全にずれている事に気がつきシロが続きをと話を戻す。
「おっと、すまんすまん。第二に引き継がれているシステムと引き継がれていないシステムが存在している」
「引き継がれてるシステムは魔法とかのスキルですね、引き継がれてないモノの代表としてはステータスカードとかですね」
そういいつつ、シロはカードオープンとボイスコマンドをつぶやくが手元にステータスカードが現れる事はなかった。
「そうだな、あのカードがないとインベントリが使えんし、何よりログアウトもGMコールも使えんからな。あとは引き継がれてるシステムもゲーム時代のままじゃないって事だな」
「そうですね、さっきクロ先輩がやってたみたいに職変更せずとも魔法とかが発動しますね、もっとも媒体がないせいでしっかりと威力は減衰してますけど」
シロは職業を戦士のまま魔法系初期スキルの<ファイアボール>を手元に出現させるも、通常バレーボールほどの大きさの炎弾もソフトボール台の大きさ程度となって発動されていた。
「あとは、シロも今何気なくやったが魔法などのボイスコマンドも声に出す必要がないみたいだな」
クロエが最初に行使した<浮遊>や、シロが先ほど行使した<ファイアボール>などの魔法系スキルはゲーム時代のシステム的な問題で絶対に発声しなくては発動しなくなっていた。
剣術系のスキルなどは見た目の差別化のためにコンフィグにて個々人が初動をどのようにすると、どのスキルが発動すると設定する事が出来たので、発声をせずともLv50以下で取得する戦争時に使用出来るスキルは、クロエが黒龍ファブニルと戦っていた時のように脳内で<ソニックブーム>と意識して居合いを動作を行うという事をトリガーとして発動する事が出来るのだが、魔法系のスキルはそういうわけにはいかなかった。
基本的に魔法を扱う職業は差異はあれど、各種魔法は威力が剣術系スキルよりも高い設定になっているため、剣術系スキルと違ってワンテンポ遅れるように魔力を込めるという――<アルカディア>では詠唱動作と呼ばれていた――遅延動作が存在している。そのため常に杖で相手を牽制しながらの発動などは出来なくなっていた。
そのような事情があるため魔法を扱う職業は基本的に味方の前衛職に守られながら立ったままか走りながら詠唱を行うのだが、そこにコンフィグで動作を設定してしまうとスキル発動の動作を行ってから詠唱が始まり、そこから更に行使する魔法をボイスコマンドとして発声するため、どうしても発動までのラグで何の魔法を使うのかを相手に察知されてしまう。
まともな攻撃手段が魔法しかない魔法系の職業では、初動の設定をしてしまうと圧倒的なディスアドバンテージを受けてしまうため魔法系の職業をする人はほとんどが初動設定を行っていなかった。もっともクロエはここまでの装備や仕草からわかるとおり和風で固めているという理由や遠距離からの攻撃しか出来ない魔法職があまり好きではないという理由などがありわざわざ察知される事を前提として初動を組んでいたりするのではあるがそれは余談である。
ゲーム時代ではそのような仕様であったため絶対に発声しなくては魔法が発動しなかったのだが、先ほど二人が行った魔法は脳内でスキル名を意識して発動に必要な魔力が消費された段階で即発動されるようになっていた。
「<ワールランペイジ>みたいな魔物専用の高レベル広範囲スキルも味方を巻き込まないために、設定した初動とボイスコマンドをトリガーにしてるはずなんですけど発動しちゃってますしね」
「さっきやってみたが職業を変えるのもボイスコマンド不要みたいだしな、もっともどの職業でも全スキル使えるみたいだからチェンジのボイスコマンドは今まで各職に設定されてた武器変更のボイスコマンドが6職業*5の武器ではなくて1職業*30の武器に変わったようなもんだがな」
「ていうことはあれですかね? 俺たちのレベルはLv100が6職だったのだからLv600って事になるんですかね」
「まぁそんな感じだろうな、それならスキルの威力が上がってるのも納得出来るしな」
「ああ、なるほど。レベル補正で上がるパッシブ系のスキルがレベルによって上がりまくってるって事ですか」
「そういう事だな」
<アルカディア>がゲームであった時代では大別して戦闘などで使用する、その場で魔力を消費して発動するアクティブスキルと取得したその場からスキルの恩恵を受けることが出来るパッシブスキルが存在していた。パッシブスキルもまたアクティブスキルと同じであり各職業ごとに設定されていたため全職共通で存在していた<HP上昇>や<基礎ステータス上昇>などのスキルはこちらの世界へ渡った影響でLv600となったためその分上昇しているのではないかとクロエは考えていた。
「まぁ多分それで正解じゃないですかね? っていうかそれだと俺ら最強だったりするんですかね?」
「対魔物は多分最強だと思うぞ、ただ対人はわからん」
「これだけの能力補正があれば最強になれそうですけど」
「いや、ゲームの世界だったら最強になれたかも知れないがこっちだと俺らの実力でどこまでやれるかがわからん、何せ俺の剣術は全部我流だぞ」
「あー、確かに。ゲームの時代だとほとんどのプレイヤーが我流で同じ土俵で戦ってましたからね」
「そういうわけだ、まぁ実際に戦ってみるまではわからんよ。その時が非常に楽しみだけどな」
そういい低く笑ってるクロエをシロは引いた感じの目で眺めていたが、これからの事について煮詰めるためにクロエへと声をかける。
「クロ先輩、軽くトリップしてるのもいいですけどこれからどうします?」
「どうするも何もなぁ……インベントリ開けんから金もないし転移スクロールも使えん、我等がロリ帝が納める帝国までは歩いていくしか選択肢ないだろ」
「マジですか……魔法が使えるおかげで飲み水が作れますし、そこらの魔物か動物を狩って食料とすれば苦労しないと思いますけど、この世界の大きさ覚えてますよね?」
「地球の約2倍だな、まぁ俺らの能力ならすぐだろ」
そうは言いますけどねぇ……と未だに小言をぶつぶつと言っているシロを無視してクロエは、我等がロリ帝へ会いにレッツゴーなどとのたまいつつ北西に存在するであろう大和帝国へ向かう第一歩を踏み出すのであった。
◆◇◆
「で、クロ先輩。言い訳どうぞ」
「ちゃ、ちゃうねん。ここ数日の検証で俺らのパッシブ<威圧感>と<隠蔽>が効果だしてるみたいだし見張りいらないかな? 的な事考えたんとちゃいますよ」
深いため息をつきつつシロは周りを見渡すとそこには薙刀や刀などを各々が構え、クロエとシロがおかしな行動をすれば即首を刎ねると言わんばかりの形相で警戒している頭部に狐耳を生やし尻尾をも生やしている和装の若い女性と青年が一個小隊分――30名ほどが存在していた。
時は12時間ほどさかのぼる。
<アルカディア>がゲームであった頃は魔物の中には夜行性のものも多数存在していたため、社会人や決まった時間帯にしかゲームをする事が出来ないプレイヤーのために地球と同じ時間の進み方をするわけではなく昼間が24時間、夜が24時間の計48時間で一日という計算になっていた。そのため現実世界からこちらの世界へと召喚されたクロエとシロはその差異に最初の数日は大いに苦労させられていた。もっともこちらの世界に召喚されて肉体的にかなり強化されていたため肉体的な疲労は皆無でありこちらの世界のサイクルである36時間起きていて12時間睡眠を取るというのにも慣れてきた頃合であった。
「しっかし思わぬトラップもあったものだな、おかげで10日以上歩いているのにまだ帝国領土まで半分もきてねーぞ」
横合いに置いてある薪をくべて焚き火の火力を調整しつつもあくびをかみ殺しているクロエである。
「まぁ最初の原始の山降りた段階で予想してましたけどね、二つの太陽がほとんど動いてませんでしたし」
そういいつつシロは鹿のような見た目の動物を狩って手に入れた毛皮にくるまり横になりながらクロエに話しかける。
「じゃあクロ先輩、<索敵>スキル使っても周囲に敵らしい姿は確認出来ませんけど一応見張りよろしくお願いします」
まだ完全にこちらの習慣に慣れていない事や死と常に隣り合わせと言っても過言ではない森や草原などでの睡眠のためクロエとシロはここ数日お互いに6時間の睡眠と見張りを交代で行っていた。もっとも肉体強化のおかげでこの程度の睡眠でも全然問題なしで活動できているあたり当面はこのサイクルでもいいのではないかとシロは考えていた。
「はいはい、寝ないで見張ってますよう」
じゃあお先に寝ます、と返事をしてシロはそのまま眠りへと落ちていく。それを気にも留めずクロエは目の前の焚き火へと薪をくべ、パチパチとはねる火の粉を眺めながらも視界に<索敵>の半透明なマップを展開して眺めている。それ以外に特にすることがないためその場を動かずにじっとして居る。
原始の山付近であればここまで敵勢存在が表示されないという事はなかった、少なくとも6時間の間にリトルドラゴンを筆頭にそれなりに高レベルの魔物が表示ギリギリの所をちょろちょろとするという事は頻繁に起こっていた。眠気覚ましや食糧確保などの理由もあり、そのようにちょっとでも索敵範囲に入った敵を追いかけては倒していたのだが10日も歩き続けいくら帝国領土へとまだ半分もきていないこの地点とは言え、人が多く存在している国の近くへと行けばおのずと魔物のレベルも下がっていくためクロエとシロの<威圧感>という自分よりも低レベルの魔物との戦闘を回避するスキルと<隠蔽>という自身の存在の認識をぼやけさせるスキルのおかげでLv600の恩恵で索敵範囲が半径5kmにも及ぶ<索敵>のマップにすら魔物がかすりもしないという事になっていた。
もっとも、そんな何も変化がないマップを街頭など存在せず光源が月しかない真っ暗な森の中、目の前には暖かい焚き火があるというシチュエーションで、燃え盛る火を見ていると眠くなってきてしまうのは仕方の無いことであろう……。そして結果としてクロエはシロが寝てから約1時間後眠りに落ちていくのであった。表示させているマップの南西に敵勢表示の赤点が存在している事になど気づかずに。
「結局眠くて寝ちまっただけじゃないすか」
「肉体的に疲れて無くても精神的には眠いんだから仕方ないだろ!」
そう言い訳をしつつもクロエとシロはお互いに視線を交え、状況がわからない事や相手が人型であり対話が可能かどうかもわからないため逃げるにしろ迎撃するにしろ様子見するべきだと判断を下す。更に敵の職構成などもざっと把握するために視線を走らせる。
小隊編制としては回復役が少ないないのは偵察任務が主だった仕事だからなのか定かではないが、職業戦士で刀装備が7人薙刀装備が10人、それの後ろで守られるように展開している3人が恐らく魔法使いであり、残りの2人は玉串を装備しているので恐らく療法師であろう。そして残りの木の上や藪の中でこちらから視認は出来ないが<索敵>に表示されている7人はおそらく暗殺者か弓使いのはずである。そして魔法使いの側に刀を装備しているが抜刀していない少女が1人という機動力重視の編制となっていた。
ゲーム時代ではMMORPGには絶対存在しているパーティーであるが<アルカディア>のそれは他のMMOとは少し変わっていた。通常の狩りや気の会う人などと組んで連携行動を行うパーティー、それの人数は6人と平均的な数ではあるが呼称は班となっていた。その上には戦争中や大規模進行などの魔物や多数の人間との戦闘をする場合はなどで人数が必要な戦闘では12人で編制される分隊が存在していた。そして更にその上に存在するものが30人で編制される小隊であった。このように国の一兵卒として参加するMMOなので現実世界の陸軍の編制が採用されたのは自然の事であったのかもしれない。
そしてどちらにしろ武器を所持していると相手の警戒心が上がるのは、わかりきっているのでクロエとシロは装備している黒刀と聖剣をそれぞれ外し、警戒している小隊と自分達の丁度中間地点へと投げ捨てる。
彼らが装備している武器はゲーム時代の頃の名残でか課金装備や大会商品などの貴重なアイテムや武器防具には帰属属性がそのまま付与されているようであり、実験した結果10m離れたり持ち主が戻って来いと意識すると設定されている持ち主の手元にワープしてくるのは実験済みであり別段装備が手元にないから反撃も防御も出来ないという事に陥らないであろうと判断しての行動であった。
「んーそれにしても彼らみたいな狐族? ってのはゲーム時代にいなかったよな確か」
「そうですね、NPCにもいなかったはずですよ」
降伏の意味も込めて両手を上げつつクロエは疑問に思った事をつぶやく。
ゲーム時代ではプレイヤーキャラクター、NPCともに狐耳や狐の尻尾を生やしたアバターなど存在していなかった。もっともオープンしてから3年後に実装した猫耳猫尻尾の猫人族やそれの犬バージョンの犬人族、耳の長いエルフや小柄で男性キャラクターなら髭が濃く女性キャラクターなら髪が長く癖毛となるドワーフなどファンタジーではテンプレとなっている種族は存在していた。ちなみにクロエもシロもそれらの種族実装前からのプレイヤーであったため人族であったりする。
と、ここでこちらが何かを喋るごとにピクピクと剣先を揺らしていた彼らであったが、それが警戒を解いたわけではないが、キビキビとした動作で二つに割れる。その間を魔法使いの側で陣取っていた少女がクロエとシロの前まで刀を抜きつつやってくる。薄暗くてしっかりと視認する事が出来なかったがクロエとシロの眼前へときて判明したが、それはそれは美しい少女であった。
周りの狐族はほとんどが茶色よりの金髪であり色がくすんで居たのだがその少女は違っていた。なにより目を引くのが染みひとつなく真っ白な長い髪でありその頭頂部にはこれまた真っ白な耳が鎮座していた。顔の造形もまた綺麗なものでそのまま歳をとればさぞ美人になるであろうと思われる。
そして周りの狐族と決定的に違うのは尻尾の数であろう。周りの狐族はほとんどが1本の尻尾であり4人ほど2本の者が存在していたがその程度である。だが目の前の少女は尻尾もまた真っ白でありその数は5本にも及んでいた。
「ほー、すごいな。美少女の登場だ」
「すごい、CGじゃない本物の美少女ってこんなレベルなんですね」
そういいつつとんでもない美少女の登場で相手が刀を抜いている事を忘れ、そのまま少女の観察を続けようとしていたクロエの喉元へと素晴らしい速度で剣先が向けられる。
そしてその少女の口から言葉が呟かれる。
「%?艨@%?%剛ォ ! :%????%??刀@%??!?」
「は?」
「え?」
予想外の言葉の羅列でとっさの反応が出来ないクロエとシロであった。
「%?艨@%?%剛ォ!!」
なおも発せられる言葉であるがクロエとシロにはそれがどのような意味をなすものなのかを理解することが出来なかった。
「おいちょっと待て、これってもしかして」
「これは……まさかの。言語の壁ですか」
そういい今まで棚上げどころか思考の片隅にも存在していなかった問題点を突きつけられ2人は絶望の淵へと追い込まれる。
「おいおいおいおい、まずいぞこれ。てっきり<アルカディア>のままなら日本語か異世界パワーで言語習得しなくていいのでは?とか思ってたが……」
「コミュニケーションが何も取れないですよこれじゃあ、言語体系が違いすぎてニュアンスもさっぱりですし」
そういいつつ慌てる2人を見て刀を突きつけていた少女の顔に困惑の色が浮かんでくる。
少女もクロエ達が何を話しているのか理解出来ていないのかもしれないが2人の会話を聞きつつも何かを考えているような仕草をする。
「何語なんだかわからんがこれ習得しないと会話も出来んのはまずいな」
「しかもこれ言語体系違うみたいですし多分覚えるのに下手したら1年かかるんじゃ」
また他国言語勉強するハメになるとは思わなんだと呟きながら頭を抱える2人を見ながら彼女は何かを思い出したのかハッと顔を挙げ彼らにまた刀を突きつけてながら声をかける。
「????郁ェ%ゥ$&*@?」
その声に反応して彼女を見上げるクロエとシロ。そんな2人へとこの可愛らしい美少女から予想外の言葉が投げかけられた。
「来い! クソ虫!」
その予想外の言葉に先ほどとは違う、言語を聴かされたとき以上の驚愕と困惑が重なり、刀や薙刀をつきつけられている状況にも係わらず1分近くも呆然としてしまうクロエとシロであった。
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