神の与えし力
少女、いや、世界の管理者たる神は悩む。
やはり、鎮静の神力が効き過ぎているのでは?っと。
冷静を通り越して、聞き分け良いと言うか、何と言うか・・・
もっと大きな、そう、世界の支配者に成りたい!
とか、世界最強の存在になって世界制圧!っ的な望みが来るかと思っていたが
そんな望みだと叶えられぬので、良かったには良かったが・・・
「では、そなたの望む生活と言うか力は以上5点で良いのだな?」
「はい。
1に、向かう世界での語学能力、読み書き共に元の世界での私の語学力程度を保証してください。
2に、手に職が在った方が有利でしょう。どの世界でも食に関る仕事は絶えない筈です。
ですので、向かう世界での調理技術及びそれに関する知識を下さい。
3に、元の世界でも土地が変わると風土病に侵される危険が在ります。
食事や病気で死にたくはありません。それに付いての耐性を付けてください。
4に、治安レベルが解りませんので、無手で達人と呼ばれてる人と同等程度の戦闘技術と知識が欲しいです。
5、最後は、やはり戸籍ですね。血縁者等が居ない戸籍でお願いしたいです。
あ、追加で、出来ればですね。年齢を其の世界の成人年齢前後にお願い出来ませんか?
流石に38歳のおっさんが再就職先を探すのは難しいでしょうから・・・ いや、無理ですよね。すいません。」
何を謝っているのだ?この男は、しかし、1.2.3は解るのだが、4と5が良く解らぬな。
「構わぬぞ。年齢は適当に成人前後にしておこう。
して、4の達人とは何じゃ? あと、5の戸籍とは何じゃ?」
「達人とは、その道で有名と言うか・・・ そうですね。
この場合は、素手で戦った場合一番強い人って意味でお願いします。
あと、戸籍ってのは、所属とか身分とか・・・地位とか?
何にせよイキナリ居なかった人間が現れる事で混乱し無い様にしたいのです。
ですから、自分を証明できる証が欲しいのです。」
「ふむ。4は大体解った。しかし、人族で最強で良いのか・・・?他にも強い生き物は居るぞ?
あと、5に付いてだが、地位は、王族とかで良いのか?」
「4に付いては、それで良いです。熊や虎みたいな強さは要らないですし、虎の戦闘技術とか意味無いですから。
あと5は、王族や権力者の男子と成ると色々危なそうですので・・・ 普通の一般市民でお願いします。」
「一般市民と言うのが良く解らぬが・・・ 権力者以外で適当に選ぶとしよう。」
「出来れば支配者側が、下の身分の人に優しい有能な人が治めている場所が良いです。」
「解った。その望みに添うように努力しよう。
では本当に以上で良いのだな?」
「はい。よろしくお願いします。」
「では俗世に送ろう。目を瞑り心を静めるが良い。」
男が目を瞑る。しかし従順過ぎるのが・・・ 鎮静の神力の性だと解けた後が怖いな・・・
仕方が無い、感情を殺さぬ程度に精神が大きく揺れた時は再度効力が現れる様にしておくか。
詐欺の様で少しばかり心が痛むが仕方が無い。
そんな事を考えながら、我は男を俗世に送り出した。