管理神
少女は悩んでいた。如何したものか?
少女は、人々が俗に言う所の神で在る。
娯楽が進んだ世界にラノベ成る書物を買いに行った帰りに事故は起きた。
自らが管理しない世界の人間を、神域に招いてしまった。
このまま無かった事にして、存在が消えるのを待つべきか?等の考えを頭を振って振り払う。
後で相手の世界の管理神や上位の管理神格にばれた時の事を考えると上手い考えでは無いのだ。
仕方が無い。我では元の世界には帰してやれないが、我の世界で出来るだけ被害者の望みを叶えるべきであろう。
被害者に誠意を見せ、望みを出来るだけ叶えた後で、被害者の世界の管理神に事情を説明するしか無い。
難儀なものだ・・・
そう考えを纏めた我は、起きてパニックを起されても困る故、鎮静の神力を与え被害者を起した。
「起きるが良い。そなたに現状を説明しよう。」
目の前の男がゆっくりと起き上がり周囲の確認を始める。
鎮静の力が効き騒ぐ事が無いようで、少し安心する。
「そなた、聞きたい事は在るか?」
「それは、色々と在ります。まず第一に神域に侵された私の体は?足は?元に戻るのでしょうか?」
「それに付いては、我が戻そう。心配は無用だ。他には?」
「いえ、成らば良いのです。後は、元の場所に帰して頂ければ十分です。」
拍子抜けするほど物分りが良いが・・・?これも、鎮静の力の為だろうか?
「すまぬ。それは出来ない。そなたの世界は私の管理下に無く。
我が行き来するのは不可能では無いが、一度、我の神域に入り我の管理下に身を置いたそなたを帰す事は出来ないのだ。」
男が目を見開いた後、困った様な顔で悩んでいる。
「我が意図して起した事では無いのだが、この様な事に成った事、深くお詫びしよう。
今後に付いては、我の管理する世界で、そなたの望みを出来るだけ叶えた形での生活を保障したい。
無論、世界に大きな負荷を与える様な望みは叶えれないのだが・・・ 」
「望みを叶えると言われましても・・・ 私の望みは元の世界・・・?ですか?
そこに帰って、元の暮らしをしたいだけですので・・・ 戻して頂けないでしょうか?」
「それが無理だから押して頼む。どうか、我の世界での暮らしで我慢をして頂きたい。すまぬ。」
「は~。では、お聞きしますが、望みを叶えると言うのは、具体的にどの様な感じなのでしょうか?」
「そうじゃな。簡単に言えばじゃな。そなたが本屋で買って抱えておる異世界物のラノベ主人公の様なチートが可能じゃ!」
如何じゃ?参ったか?我は胸を張り答えてみる!
「では、お聞きしますが、貴方の管理している世界はどの様な世界なのでしょうか?」
男の問い掛けに疑問を覚えながらも答える。
「普通じゃ、人が居り生きて死ぬ。そなたの世界と変わらぬ営みを続けて居る」
「文化レベルは変わらないのでしょうか?」
「そなたの世界の方が勝る物も在れば劣る物も在る。どちらが如何とは言えぬな。」
「医療面は如何でしょうか?」
「そなたの世界で直せぬ病気や怪我を治せる故、医療面では我の世界が上じゃ。」
「う~ん なら、文化面では問題が無いかも知れませんね。」
正直、文化面だとか医療が如何のと言われても、神である我にはどの世界も変わらんのだがな・・・
「解りました。出来ない事を悩んでも仕方が在りません。こちらでの生活をお受けしましょう。」
・・・やはり、アレだな、鎮静の神力が強過ぎたかもしれんな・・・副作用か?異常に聞き分けが良いな。
「そうかそうか、成ればそなたの思う生活を我に説明せよ。我がその望み、叶えてやろう。」