~死者に讃歌を~
初投稿です。駄文や誤字等に目をつむって頂ける心の広い方だけ読んで下さい。
いつからだっただろう…煙草を吸い始めたのは…
確か元々は香りさえも嫌いだったはずだ。
真っ暗な部屋の中で坂崎 遼は物思いにふけっていた。
仕事から帰り、部屋の明かりを点ける前に煙草に火がつけられる。
習慣になっている動作に疑問を覚え、ベッドに腰掛けた坂崎は、自嘲気味に大きくため息をついた。
「瑞希さんのこと忘れるなんてなぁ」
ばつの悪そうな笑みの後、坂崎は悲しみとも怒りともとれる険しい顔つきになった。
「もう7年も経つのか…」
忘れるはずがないと思っていた声…
失うはずがないと思っていた気持ち…
それが今、雨の翌日の朝靄のように空に消えようとしている。
坂崎にとって過去との邂逅は決して楽しいものではないし、ましてや『あの頃はよかった』などと宣うことなど有り得ないが、この思い出だけは失ってはいけなかった。
今の坂崎を作り上げたと言っても過言ではない過去の傷口は表面上は治ってはいるが、内部に溜まる毒液は確実にそこにあったのだ。
「瑞希さん…今の俺見たら何て言うんやろ。多分、いや絶対爆笑されるな…」
先ほどとは違う楽しげな笑み。あの頃はよかったのではなく、あの人に出会えてよかったと思える。瑞希とは坂崎にとってそんな存在だった。
だったなのだ。
一度蘇った過去は、坂崎の足元に触手のように絡みつき…
彼の『ありふれた生活』という仮面を締め付け、蹂躙し、溶かしていく…
まだプロローグ…こ、これからさ(汗)