−セピア色の写真−
3月も終わりに近づき、だんだん春めいてきた頃、 父方の祖父の 33回忌があり 家族で 実家を 訪れた。
久しぶりに 会う伯母たちが 私をみて 口々に いう。
「栞は だんだん 桜子に 似てきた。」
「桜子が 入ってきたのかと思った」
桜子さんとは 若くして 亡くなった 父の 姉だと聞いていた。でも 一度も写真で みたことはない。
歳老いた凛子伯母さんが 聞いた
「栞は いくつに なったの?」
「 今年 33歳 だよ。」
「そう・・・桜子が 死んだ歳と 同じだねぇ」
そうしみじみ言うと 一冊の 古いアルバムを 取り出してきた。
「これには 私たち姉妹の歴史が つまってるんだよ」
そう言って 私に それを手渡した。
アルバムをめくると
結婚したての 祖父と祖母の写真。
二人とも明治生まれだが、祖母が 祖父に一目惚れした 恋愛結婚だったそうだ。
次のページには 長女の雫子伯母さん。彼女も 若くして 亡くなっている。
「これは 広島の おじさんだよ」
と 伯母がいう。
そういえば、私が小さいころ よく広島から 絵の上手な おじさんが 家に来ていた。あの人か・・・。たしか 雫子伯母さんの ご主人・・・。
次は 凛子伯母さんの女学校時代の写真。戦時中で 頭に 日の丸の鉢巻きをまいて セーラー服を着ている。
「おばちゃん、これは?」
「これは 君彦おじちゃんよ」
凛子伯母さんは 学生の頃から 一途に ご主人になるおじさんを 思っていたらしい。
次は 三女の 薫子伯母さん。
そして・・四女の 桜子伯母さんの写真をみて 私は 驚きを 隠せなかった。
「そっくり!ママだ」
まず 叫んだのは 私の娘だった。
ほんとに 似ている。
「桜子もね、好きな人がいたのよ」
と 伯母が ページをめくる。
「!」
尊・・・!?
海軍の 制服を着た まだ少年の あどけなさが残るその人の 名は 沢村学思と言った。
『学思ひて桜咲く』
写真の横に 桜子伯母さんが 書き添えていた・・・。




