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7話 一目は見たいあの子

「美味い!!!」


エリックの大きな声が広場に響く。今は出て早々にいい匂いを漂わせていた焼串を買って、食べ歩きをしている。


「流石はアルシア王国だなぁ」


エリックは大袈裟な気はするが、確かに俺達の村にはない濃いめの味付けがとても美味しい。それ以外にも、広場からは美味しそうな匂いが充満していて、もうパーフェスト祭が始まっているんじゃないかと勘違いしてしまいそうだ。

パーフェスト祭は具体的に何をやるのか、漫画で少し出てきていたと思うが覚えていない。しかし予想はできる、日本の祭りみたいなものだろう。中世ヨーロッパのような世界観でも作者日本人だし。

マチルダちゃんのこと以外はやはり覚えていない、覚えていることと言えば、マチルダちゃんの好きな食べ物、好きな服装、好きな筋肉、このパーフェスト祭でエリアスとマチルダちゃんが仲良くなること、その後にパーティーを組む約束をすることぐらいだ。

明日はエリアスとマチルダちゃんの出会いの為に、俺はエリアスを祭り中に一人にさせて、シーダ噴水に行かせないといけない。

でも、マチルダちゃんを一目でも見たいからエリアスの後ろを付いて行くつもりだ。流石にマチルダちゃん助けるわけにはいかないと、さっき馬車の中、エリアスとエリックが喧嘩してる時に冷静になった。物語をちゃんと進めないと、それのせいでエリアスが覚醒せずに世界が滅びることに繋がるかもしれない。

まぁ、絶対一目見るけどな!!


「なぁ、オリエン!!

次あそこ行こうぜ!!!」


「ん?」


エリックは突然立ち止まったかと思えばアクセサリーショップを指さした。食い物にしか興味ないと思っていた俺は少し驚く。


「珍しいな」


「母ちゃんにお土産買ってこいって言われてんだよ」


焼串を全て食べ終えるとエリックは笑顔で言った。

アクセサリーショップにはふかふかのクッションの上に置かれてブローチや、指輪、ネックレスなど様々なアクセサリーが並んでいた。


「全部綺麗だなぁ」


エリックはどれを選ぶのだろうか、センスを見てやろうと視線を飛ばす。すると修学旅行で男子小学生が買うような剣に小さな宝石がはまったネックレスをキラキラした目で見つめていた。

……まぁわかる、かっこいいよなそれ、俺も前世で似たようなやつ買ったことあるよ。

家族へのお土産だし俺がどうこう言うことでもないだろう。だから、俺はゆっくりと視線を正面に戻した。

その瞬間一つの指輪が目に付く。真っ黒な小さな宝石が埋め込まれた指輪。衝動的にその指輪を手に取ると黒が光を反射した。


「お目が高いね」


「えっ」


その時店主のおばさんが俺に声をかけてきた。少しふくよかな体型だが優しそうな人だ。


「それはね、ブラック鉱石の指輪だよ。黒色だから人気は無いが、本当はもっと高価な物さ」


「へぇ…」


値札を見るとかなりお安めだが、確かに他の物よりも輝きが……違うと思う。

まぁ俺に良いとか悪いとかわかるはずないけど、結構綺麗だしお留守番してるエリアスに買ってやろう。


「じゃあ、買います」


「おっ、まいどあり」


もしかしたら売れ残りを買わせるための嘘だったかもしれないが、綺麗な事に変わりはない。そう思い紙袋に梱包された指輪を受け取る、エリックもどうやら買えたようだ。


「よし!!これでお土産は完璧だ!!」


袋を嬉しそうに振るとエリックはそう言った。


「そうだなーっ!」


そろそろ他の場所を見ようと外に出たとき、俺はある人に目を奪われた。


「おばさんこのブローチください」


綺麗な白髪に目を引かれ振り返る。透き通るような綺麗な声、そして風に揺れる白髪、間違いない………。

マチルダちゃんだ。


マチルダちゃんだ!!ええ…え!!え…?マチルダちゃん!!!花みたいないい匂い…てか肌白い!!!可愛い!!!待ってくれ、ヤバイ、心臓が飛び出る!!


「…ねぇ、貴方」


えっあこっち向いた、やばい…切れ長のお目可愛い…瞳も綺麗な黄色だぁ……やばい可愛いよ美しいよ、白髪とめっちゃ合ってる!!!可愛い!!


「ちょっとっ…」


あぁ、マチルダちゃんに今呼ばれてる人は幸せだろうなぁ、こんな優しい声で呼んでもらえるなんて……、うう、可愛い…可愛いよぉ


「っ…赤髪の貴方よ」


赤髪かぁ…くそ赤髪のやつ許せねぇなこんなに呼ばれてるのに答えないなんてっ!!!俺だったらすぐに駆け寄るのにっ!!!!


くそぉ…赤髪……


……………赤髪?


「おれぇ…?」


情けない裏声が飛び出る、しょうがない推しに呼ばれたのだから。


「そうよ、貴方よ」


う…近づいてくる!まってまって心の準備がっ!!!!!


「貴方なんで私のこと知ってるの」


「ふえ…」


マチルダちゃんが俺の顔を、目を細くして覗き込む。

わぁ、やっぱり匂い…じゃなくてっ、な、な、何故バレたっ見すぎたか!!


流石に変態だったか…?


「オリエンの知り合いか?」


エリックが不思議そうに俺の隣に立つ?知り合いじゃない一方的に知ってるだけだ、なんて言えるはずない。


「ええと…」


「…そうよ、知り合い。悪いけど少し2人にしてくれるかしら?」


マチルダちゃんが話を合わせろといった様子で俺を見つめる。

な、何がどうなってるんだ…二人きりとか俺心臓もたないよ…?


「えぇ…本当か?」


疑わしいのか俺を見つめながらエリックは目を細めた。アルシア王国に今回含めて2回しか行ったことがない俺に友達なんているはずがない。が…エリアスならともかくエリックなら騙せるだろう。


「友達だぞー友達、友達」


言えばエリックの眉間にシワがよる。流石のエリックでも騙されないか…。


「じゃあお前、オリエンの名前わかるか!!」


ん…?


「えぇと…」


マチルダちゃんが面食らっている、そりゃそうだ。こんな馬鹿な質問クールビューティーなマチルダちゃんには理解できないだろう。


「答えられないのか!!」


指をマチルダちゃんに指しながら自信満々に言い放つ。なんでこんなに自信満々でいられるのだろうか。


「…オリエン」


何度か瞬きした後マチルダちゃんはそう呟く。

名前呼ばれちゃったっ…

一気にお湯に浸かったように身体が熱くなる。こんな幸せあっていいのだろうか。


「な、本当に友達だったのか…!」


エリックは狼狽えて指に顎を乗せた。そして、一息おいて溜め息をする。


「久しぶりの友達ならしょうがないな…先に宿戻ってるぞ…」


「あ、あぁ悪い」


此奴絶対に詐欺とかに騙されるだろ…

トボトボと歩くエリックの背中を見送りながら俺はそう思った。


「…それで、なんで私のことを知ってるの?」


エリックの姿が米粒サイズまで小さくなったとき、マチルダちゃんが真っ直ぐと俺を見つめた。


「いやっ、あの見すぎててごめんね…?」


見つめすぎたからマチルダちゃんは多分こんな事を言ってるのだろう、なら今俺がすべきことは謝罪だ。


「…違う、なんで私の名前知ってるの」


「えっ」 


えっ、えっ?俺名前呼んだっけ?いや、声には出してないはずだ。

マチルダちゃんのギフトとか…?ギフト…なんだっけ……思い出せ俺!!何度も漫画を見返してただろ!!


「漫画?」


あ……【読心】だ。


「いやっ違くて」


「なんで私のギフトを知っているの?その漫画が関係あるのかしら」


やばいやばいやばいやばいやばい。これはやばい、ストーリーが…あ、まって俺、何も考えるな、全部筒抜けなんだぞ!!

あぁぁぁ、マチルダちゃん可愛い天使キューティーエンジェルー!

俺が思考しないように頭の中で喋り続けているとマチルダちゃんはゴミを見るような目で俺を見つめた。


『好感度−4 現在の好感度56』


その時、初めて好感度メーターが下がるのを見た。どれだけエリアスやグレイデンの好感度を下げようとしても全く下がらなかったのに、初めての好感度低下がマチルダちゃんだなんて…っ軽く死にたい。


「いや、怪しいものではありませんからぁぁ!!!」


そして俺は逃走した、心がもうもちそうじゃなかったのと、思考が読まれないためだ。マチルダちゃんの【読心】は距離が遠いと発動しない、つまり逃げるが勝ちなのだ。

許してくれマチルダちゃん…!!


「ちょっと、待ちなさい!!」


マチルダちゃんが俺を追いかけて走ってくる。やばい、マチルダちゃんはギフトが戦闘向けじゃない代わりに身体能力を鍛えている。つまり、現在もやしの俺が勝てるはずがない。 だが人を隠すなら人の中、この人混みで簡単に俺を見つけることは出来ないはずだ。

マチルダちゃんの綺麗な白髪が走って柔らかな風のように揺れている。

綺麗だなぁ…。

そう思ったのを最後に背の高い大人たちの壁に隠れ、マチルダちゃんは視界から消えた。

それからしばらくして、完全にマチルダちゃんは俺を見失ったようで、また会うことはなかった。俺は息を絶え絶えにして適当な壁に寄りかかると大きく息を吸った。


「そうだよ…マチルダちゃんのギフト【読心】じゃん…すっかり頭から抜けてた…」


本当に危なかった…転生とか前世とか漫画とか、俺の知識はこれからのストーリーを捻じ曲げてしまいかねない。念の為早くこの場を離れたほうがいいだろう。俺は宿に帰ろうと一歩踏み出した。


「あっ…サンドイッチ……」


危ないが流石に買わないわけにはいかない。俺は溜め息をつくとすぐ側で目についた服屋でフード付きのローブを買った。そしてそのまま、また市場へと足を運んだ。


◇◇◇◇


「おかえりオリエン!」


宿に戻るとエリアスは読んでいた魔導書を置き、俺のもとに駆け寄った。


「ただいまぁ…」


あの後マチルダちゃんに見つからないようにコソコソとサンドイッチを買って俺は直ぐにここまで帰ってきた、だからもうかなりヘトヘトだ。


「これ、サンドイッチ…」


紙袋に入った野菜とハムが挟まっているサンドイッチをエリアスに渡す。すると、エリアスは口に笑みを作った。


「わぁ、美味しそう!!ありがとうオリエン」


本当に素直でいい子やぁ…疲れた身体にエリアスが染み渡る。本当に弟に欲しい。部屋を見渡すとエリックの姿がない。寄り道でもしているのだろう。

俺は鞄を適当な場所に置くとベッドにダイブした。

疲れもそうだが、マチルダちゃんにゴミを見るような目で見られたこと、そしてマチルダちゃんにあんまり近づけないことが確定してしまって俺のライフはもうゼロなのだ。


「オリエンどうかしたの?」


エリアスはそんな俺を気に掛けて首を傾げる。


「…女神と会ったんだけど、もう会えないんだよ」


「えっ、パーフェスト様に会ったの?」


愚痴をこぼしたくて、曖昧に伝えると語弊が生まれてしまった。そいつは女神じゃない、元を辿れば俺をこんな状況にした元凶、悪魔だ。


「違う…」


だが強く指摘する気もなれずに俺はそのままベッドで眠りこけた。

オタクオリエンとマヌケエリックとキューティーマチルダ


最後まで読んでくださりありがとうございます!!!

評価、リアクションの方していただけると大変励みになりますのでよろしければお願いします!!

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