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4話 クズで変態

なんと、俺、骨やってました、骨折です。

肋骨が折れていたみたいで、ベッド生活に逆戻りしてしまった、通りで滅茶苦茶痛いわけだ。ちなみに今俺は凄く現実逃避したかったりする。


「お前誰?」


「あんたこそ誰?」


それは何故か俺のお見舞いにきてるエリックとエリアスがめっちゃ険悪に、睨み合ってるからである。

本当に何があったんだお前ら。…俺エリアスのこんなシワの寄った顔見たことないよ、キレ気味のエリックも初めて見た。その好感度の低さを俺に向けてくれればいいのに、何故二人が喧嘩しているんだ。


「なぁ、オリエンのダチにこんな奴いたか?」


エリックが埒が明かないといった様子で首を俺に向ける。

話に混ぜないでほしい、俺怪我人だぞ?


「…5年前から友達」


「オリエン!こんなゴリラと友達だったの?」


今度はエリアスがうるうるとした目で俺を見つめた


「…6年前から友達」


あれ聞き間違えか?ゴリラ?エリアス今エリックのことゴリラて言った?

何故かエリアスが俯き、エリックが得意げになった

こいつら、あれだな?実は仲いいな?


「ほらほら、二人とも静かにしないさい?これから僧侶さんが来るんだから」


母さんが笑って二人の仲裁をする

僧侶というのは冒険者のパーティーにも偶にいる回復役だ。この世界の基礎魔法は火、水、草、の三種類しかなく、回復の出来る僧侶はみなギフトで力を得た人だけ、だから僧侶は数が少なく貴重で、何もない田舎村には今母さんが呼んでくれた僧侶一人しかいない。

そのせいか、かなり重宝されているらしい。


「僧侶てグレイデンさんの事だろ?見るの初めてだ!!」


エリックが体を揺らす。エリックが知ってると言うことは少なくともこの村では有名な人らしい。


「グレイデンって誰だよ」


僧侶が一人いることは知っていたが、それについて詳しく知ろうともしなかったため俺は初耳だ。


「オリエン、グレイデンさん知らないの?」


エリアスも目を大きくしてかなり驚いている。


「エリアスも知ってるのか?」


「うん、この村だけじゃなくて何処でも有名なはずだよ?治癒でグレイデンさんに敵う僧侶はいないからね」


思ったよりも凄い人じゃん、でも確かに言われてみれば聞いたことがあるような…ないような…。グレイデン…グレイデン…いや、やっぱないな。


「すげー奴なんだなぁ」


適当にそう返すと二人の目が細くなる。


「な、なんだよ」


「いやー、なんでも…オリエンって偶に抜けてる所あるよね」


「本当にな、魔物に突撃されてたし」


何故か俺が攻められる状況になってなってしまった。やっぱりこの二人仲いいだろ。

そう言い返そうと口を開いた瞬間


「どうも~グレイデンですー」


外からそう男の声が響いた。


「あ、はーい!」


母さんはそれを聞くと慌てて俺の部屋から出て玄関へ向かった。

噂のグレイデンどんな見た目なのだろうか。僧侶と言ったらローブを着た気難しそうなおじさんとか…いや声は若かったか。


「楽しみだな!」


俺が考えている事が分かったのかエリックが笑う。


「そうだな…」


グレイデン…やっぱり何処かで聞いたことがあるような気がする……まさか今世じゃなくて前世…とかか?漫画の登場キャラクターなのかも。


「すみませんねぇ、こんなところまでご足労させてしまって」


「いえいえ、それが仕事ですので」


扉の奥から人の喋り声が聞こえ、暫くすると足音がどんどんこっちに近づいてきた。


ガチャ


そして、扉が開いた。現れたのは緑髪でピアスがめっちゃ開いてる男、僧侶には全く思えない。


「グレイデンさん、この子です」


母さんが俺に手を向けると、グレイデン表情を固め、また直ぐに胡散臭い笑いに変わった。


「あの人大丈夫なの…?」


エリアスが小声で俺に耳打ちする、エリアスも違和感を感じたのだろう。流石主人公だ、エリックなんて憧れの僧侶に目を輝かせてるのに。


「これはこれはこれは、赤髪なんて珍しいですね、女神様の加護があるのでしょう」


俺の髪を触りながらグレイデンが言った、それをエリアスは不審そうに睨んでいる。


「怪我の容態は…かなり酷いですねぇ」


「本当ですか!?」


母さんが口を押さえてグレイデンに聞く。確かに痛いけど死ぬほどではないと思うが。


「はい…このままでは命にかかわります、直ぐに治しますので、お母さんは子供たちと一緒にこの部屋から出ておいてもらえますか?」


「なんで…?」


エリアスが睨む、やっぱり警戒心がかなり強い。俺もこいつは信用できない、だが今何か言っても意味はないだろう。


「集中するためさ」


そう軽い言葉を吐く、母さんは人が良すぎるせいか簡単に信じて二人を外へ促した。


「オリエンいいなぁ!!どんなんだったか後で教えろよ!!」


エリックは警戒心というものを覚えてほしい、それでも冒険者志望か?


「それでは息子をお願いします!」


「オリエンっ!」


エリアスは少し抵抗していたが木の軋む音を立てて閉まる扉がそれを簡単に無にした。俺はグレイデンから敵意があったら気づけるようにしなくてはならない。


【好感度メーター】


「あの黒髪まだ友達なの?」


『現在の好感度63』


これは…思ったよりかは平気そうか…?いや、そんなことよりも


「エリアスを知ってるのか…?会ったことはないと思うけど」


「はは、言ったろ?顔は覚えたからな。って」


グレイデンは俺の頬を叩くとニヤリと笑った。

こんな奴見たことないと思うが、会ったことがあるのか…?


「もったいぶるなよ、何がいいたいんだ」


好感度は悪くないがやはり怪しい。エリアスのことも、俺のこともどこで知ったのだろうか、それに何を企んでいるようにも見える。


「本当に覚えてないんだ、俺の背中燃やした癖にさぁ、加害者は忘れるってほんとなんだなぁ」


悲しいよ、と言いながら嘘くさく泣くふりをする。

背中を燃やす?前世の記憶が戻る前から人に危害を加えたことはないと思うんだが。エリアスのことも知っているし、エリアスと一緒にいる時のことか?


エリアス……

背中を燃やす……


………あ


「お前、あの時のクズか」


思い出した、初めてエリアスとまともに話した日

エリアスを虐めてたクソ野郎。あの時はもう少し落ち着いた見た目だったから気づかなかった。

まさか、あの時の復讐でもするつもりか、そうも思ったが好感度は低くない、いったいどういうつもりだ…?


「あ、やっと思い出してくれた?」


グレイデンは俺の耳たぶを触って目を細める。


「なぁ、俺世界一の僧侶なんだ、どう思う?」


「は?」


なんだこいつ、質問の意図が分からない、だからなんだよ。


「クズが僧侶とか笑わせんな」


機嫌を取るべきだったかもしれない、だが普通に苛ついたから、つい俺は乾いた笑いで煽ってしまった。


『好感度+8 現在の好感度71』


はぇ…?


「そっかぁ、はは」


グレイデンは口を押さえ下を向いた、俺はドン引きだ。


「いきなりなんだよ…」


『好感度+2 現在の好感度73』


気持ち悪い、そう顔にありありと出してグレイデンを見ると、グレイデンは俺の顔を見て顔を赤くした。


興奮してる…????


え、きも、え、えー?きも、あれだな、変態だ、こいつ変態なんだ。


「はは、5年ぶりにそんな態度されたよぉ、誰も彼も僧侶様、僧侶様、馬鹿の一つ覚えみたいに言ってきてうんざりしてたんだ」


声を震わせて言うグレイデンは普通にきもかった。俺が今こいつに向けている感情は、エリアスを虐めたクズ、そしてきもい、この二つだけだ。もう俺の肋骨折れたままでいいから切実に帰ってほしい。


『好感度+2 現在の好感度75』


俺の考えていることがわかったのか何も言っていないのに好感度が上がる。

本当にやめてほし。


「そんな顔しないでくれよオリエン、嬉しくなるだろ?」


ほら、変態だ。


「お前の変態趣味に付き合わせんな!!もう怪我とかどうでもいいから帰れ、まじで」


『好感度+3 現在の好感度78』


あーーーもう喋りたくない、なんなんだよ。


「ごめんごめん、怪我はちゃーんと治してあげるよ

お金も貰ってるしね」


グレイデンはそう引きつって笑うと俺の服に手を伸ばした


「はっ、ちょ、おい!触んな!!!」


反射で手をはたき落とす。変態すぎて信用が出来ない、あと普通に嫌だ。


「あれ、もしかしてオリエン照れ屋?怪我の具合見るだけだって」


素で言うグレイデンのせいで、俺が変みたいな空気にされた。

え、俺が変なのか?


「っ、手早く終わらせろよ!!」


このまま突き返したら母さんに迷惑かけるかもしれない。仕方がなく動きを止めるとグレイデンは「は〜い」と甘ったるい声を出した。すると、グレイデンの細くて長い指が、服をめくり俺の腹を撫でる。手が冷たいせいで少し体が動いた。


「はは、ビクッとした、かわいー」


早く終われ、早く終われ、早く終われ、早く終われ、早く終われ、早く終われ、早く終われ


そうは言いつつも痣になっている箇所を見つけるとグレイデンは顔色を変えて手をかざした。


「【パーフェクトヒール】」


グレイデンが唱えると淡い温かい光が痣を消していく。そのまま皮膚から筋肉、骨と身体に温かさが浸透した。


「はい!終わり!」


痣のあった場所を軽く叩かれハッとする。確かに見てみれば痣は綺麗さっぱりなくなっていた。

動いてみても痛くない、実力だけは本当らしい。中身はクソだけど。


「世界一の僧侶だけはあるな…さんきゅ」


素直に礼を言うとグレイデンは笑みを止めた。


「…尊敬しちゃう?」


あ、もしかしてこれ、チャンスか?多分こいつは尊敬とか感謝されることにうんざりしているんだ。だから俺が辛辣にすればするほど好感度が上がったのだろう。

なら今から俺がすることは一つ、感謝しまくる!!そうしたらきっと好感度が下がってくれるだろう。

俺は前世高校生の頃演劇部だったんだ、俺の完璧な演技見せてやるよ!!


「…あぁ、そうだな、さっきまではあんな事言ってたが…普通に…、そのグレイデンのおかげだし…ありがと」


見ろ!!!俺の演技を!!!


「っ……」


グレイデンが押し黙る、これは成功だろう。こい!初めての好感度マイナスエフェクト!!


『好感度…』


おぉ!好感度…!!


『好感度+10 現在の好感度88』


「はっぁ?????」


つい声に出してしまった。

いや、当たり前だ、おかしいだろ、こいつ僧侶で感謝されまくってうんざりしてたんだろ???なんなの???


「オリエン…」


それだけ静かに言ってグレイデンが何故か俺のベッドに乗ってくる。


「はっ、な?」


逃げようとした…が一足遅く腕をつかまれ上にグレイデンが覆いかぶさる。グレイデンがつけているネックレスが垂れて俺の首にあたった。

これは…あれだ、床ドンだ

な?ん?ん?は?は?頭が仕事をしない、前世も含めて初めての状況に俺はただ黙ることしか出来なかった。

グレイデンの吐息がかかって擽ったい…


いや、駄目だ!!黙るな俺!!おい!開け!!俺の口!!!


「っ…エ、エリアス!!!!」


とにかく大きな声で叫ぶ、本能的に一番好感度が高い奴の名前をーーー


バンッ゙


「オリエン!!!」


足音すらしない、一秒経っただろうか。扉は勢いよく開けられ、エリアスはこの状況をみた瞬間にグレイデンを睨んだ。


「【リーフ】」


そして瞬時に手を伸ばし中級魔法を放った。瞬間蔦が勢いよく伸びて、グレイデンを俺の上から押し飛ばす。そのままドンッと鈍い音をたててグレイデンはベッドの下に落ちた。


「オリエン大丈夫っ!?」


「あ、あぁ」


中級魔法なんてエリアス使えたんだぁ…いや、今はそんな事考えている暇はない。

俺は蔦を伸ばしたまま焦った顔をし俺の側に来るエリアスに


「エリアス、蔦消せ」


と耳打ちをする。するとエリアスは戸惑ったが、直ぐに言う通りに魔法を解いた。

助かったが一応グレイデンは世界一の僧侶だ。それに怪我を負わせたなんていちゃもんを付けられたらたまらない。


つまり…証拠隠滅だ


「大丈夫か!!」


それから直ぐに母さんとエリックがドタバタと足音を立てて俺の部屋に入ってきた。流石に音で気づかれたらしい。


「グレイデンさん!?」


母さんは状況を理解できずにグレイデンが倒れていることに口をアワアワとさせる。

大丈夫だ母さん、その人ただの変態だから。なんて言えるわけもなく俺はそれを見ないふりをした。


「いったぁ…」


頭をかきながら立ち上がるグレイデンと、それを支える母さん、そして何も理解できてなさそうなエリック。

もう…、ここは地獄か??


「どうなさったんですか?」


母さんが顔を青ざめて聞く。まぁ、何も知らないから当たり前の反応だ。知ってたらこんな変態、きっと平手打ちしてくれるだろうし。


「いやぁ…」


グレイデンは俺をちらりと見るとまたよそ向きの胡散臭い笑顔に顔を変えた。


「大丈夫です、少し滑ってしまって…」


「あら、そうなんですか?良かった、お怪我でもしてたらどうしようかと」


母さんはそれにまんまと騙され胸を撫で下ろした

何嘘言ってんだ、と思うがエリアスがやったとバレるよりかは遥かにマシだろう。俺は何か言いたげなエリアスの口に手をやって黙らせる。本当身分がいいクズは厄介だ。


「傷はないので大丈夫ですよ。それにオリエンくんの怪我も全て治しましたので、もう明日からでも普通に過ごせるかと」


「本当ですかっありがとうございます」


「やっぱグレイデンさんてすげぇんだ!!」


エリック騙されるな。本当に俺は今からお前の将来が心配でならないよ。

母さんは……うん優しいからしょうがないな。

とりあえずボロが出ないように黙ることに決めた。しかし、グレイデンはそんな俺の様子を見てニヤリと笑った。


「オリエンくん痛みはないかい?」


キラキラした笑顔にすぐに変えると俺の頭を撫でる。


「っ…あぁ、はい〜、すごーい、ありがとうございますぅ〜」


イライラしすぎて俺の演劇部で身につけた演技が発揮しない。グレイデンはそれを楽しそうに見ている。

早く帰れくそっ!


「あ、今日はオリエンと喋れて楽しかったし、これあげるよ」


そう言うとグレイデンは自分のネックレスを俺に付けた。それは俺の敵パーフェストを象徴する光の形だ。


「じゃあ、僕は次の仕事があるので」


付けると母さんにまた胡散臭い笑みを浮かべて扉へとゆっくり歩いていく。なんでこんな物渡したのだろうか、嫌いなパーフェストと嫌いなグレイデンの合わさった呪物を俺は眉を下げて睨んだ。


「あ、オリエン」


ドアノブを触ると、グレイデンがクルリとこちらを向く。

早く帰れよ、こっち見んな。


「また遊びに来るね」


「は?」


「じゃあね〜」


言うだけ言うとグレイデンはるんるんと音が出そうなスキップをして扉を閉めた。


はぃぃぃ???


俺は色々ありすぎてエリアスの声が聞こえる気がするが、ただ魂が抜けたように天井のシミを見つめた。

もう、嫌だ、疲れたよ俺……。


「オリエン大丈夫…?」


エリアスが本当に心配そうに俺を見ている、やっぱり俺の癒しはエリアスだけかもしれない。

これから虐めなきゃいけないのだけど…いや、無理だろ、こんな子犬みたいな子を虐めるって!!

見てみろ、今も捨てられた子犬みたいな目で俺を見ているっ!!うっ!!今日はいいだろう…明日から頑張るから…そう明日から…。

俺はエリアスの顔を犬を撫でるように撫で、そのまま抱き着いた。髪が柔らかくて、子供の匂いがする。


「オ、オリエン!?」


あーーー、癒しーーーーーーー。


照れて体温が温かくなっているのがまた可愛い。俺に男の趣味はないが本当に可愛い子だ。流石俺の癒し枠。


『好感度+6 現在の好感度100』


俺は数値を見ないように目を瞑って深呼吸した。


…………明日から頑張るから!!!!うん!!!


オリエンちょー逃げて!!その男危険よ!!!


最後まで読んでくださりありがとうございます!!!

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