3話 馬鹿で単純
「待ってよオリエン!」
エリアスが雛鳥のように俺にてちてちとついてくる。朝からずっとこんな感じで困ってしまう、本当に。起きたら何故か好感度は92に上がっているし。
そんなことあるか??夢で俺に命でも救われたのか??
とりあえず距離をとったほうがいいと思い、家から出たがエリアスもついてきた。これじゃあ、本当に意味がない。
「オリエン今日は何処に行くの?」
「えー、ギフトの試し切りとか」
顔を背けて言うが、エリアスは子供特有の頬の赤さ
で「いいね!!」と答えてくる。
なんか凄い持ち上げてくる、肯定しかしないじゃん、お願いだからやめてくれ。俺単純だから凄く嬉しくなっちゃう。
仕方がなくエリアスと歩いていると、途中で気づいた。これじゃあ少し冷たくしてるだけだ、どうにかしてエリアスを虐めないといけない。確か漫画でも虐めが始まった時期はギフト付与式からだったはずだ。
まぁまぁいいギフト【剣技】を手に入れて天狗になった俺が少しずつエリアスを下に見るようになり、それがエスカレートしていって虐めになる…と。
ほんと漫画の俺は何やってんだて感じだけど、今は生きるためだ許してくれ。でも虐め過ぎたら好感度が漫画通り急降下して殺されるから慎重に。
「オリエンは来ないほうがいいんじゃないか?」
試しにそう言うとエリアスの顔が少し曇った、この調子だ。
「な、なんで?」
「いやー、森には魔族も魔物もいるかも知れねぇだろ?俺も魔物ならともかく流石に魔族が来たら守れねぇからさ」
こうやって下に見ることでエリアスは傷つき好感度が下がるっていう算段だ。
「……」
どうだ、下がれ!下がれ!一気に20くらい下がれ!
「オリエンはやっぱり優しいなぁ」
何故か予想外なことにエリアスは目を細め、嬉しそうにした。
『好感度+2 現在の好感度94』
「えぇ…」
なんでぇ…?エリアスってもしかしてドM?いや、ドSなはずだ、知らんけど。
このままじゃいけない、虐め、虐め?虐め??
「じゃ、じゃあ俺は行くけどついてくるなよ!!!」
俺は走った、逃げたんじゃない、戦略的撤退だ。エリアスが見えなくなるくらい走るとやっと森が見え始めた。魔物がいると言っても、村の大人たちが猟で来ているし、奥に行かなければそこまで危なくない森だ。
「椅子が欲しい…」
かなりの距離を全力疾走したせいで、息が切れる
元々ギフトも試したかったし木でも切って切り株を作ろう…腰につけていた鞘から剣を抜き、構えると深呼吸をする。前世の記憶を取り戻してから初めての魔法に少し緊張する。
「【剣技】」
発すると刀身が淡い赤に輝いた、多分成功してるはずだ。剣の使い方はよく分からないから適当に横に薙ぐ。すると、俺の胴体ほどある太さの木が一瞬にして両断された。鼓膜に響く音を立てて木が倒れる
「……やべぇ!!!すげぇ!!!」
自分の拳を握りしめる。前世は勿論今世でもこんな力は初めてだ。
…俺天才では?
切ってる感覚が無かった、これが俺のギフト【剣技】、漫画の俺が天狗になるのも理解できる。
まぁ上には上がいるということを今の俺は知っているが。
漫画のチート主人公の強さを思い出すと、興奮が治まる。その後俺は切り株に早速座り今後のことを考えた。
思考すること数分、3つの作戦を思いついた
一つ目、俺がエリアスに殺されないくらい、魔王を倒せるくらい、強くなる
二つ目、順当に好感度を50にして生き残る
三つ目、好感度とか置いといてエリアスに本当の【低下】の力を教えて修行してもらう
一つ目は木を切って興奮してたから思いついたけど普通に無理だ。そこそこ強くなれるだろうが、漫画のインフレに俺がついていけるはずがない。悲しいけど。
三つ目はまず前世の記憶があるんだ!お前のギフトまじ強い!とか言ってくるやつの話を信じるわけがない、これもなし。
やっぱり俺はパーフェストが言ってた通りに好感度を50にするしかないらしい。結局振り出しに戻ってしまった。まぁ、でも強くなって損はない、もしかしたら魔王はともかくエリアスから逃げる程度には強くなれるかもしれない。となれば、これから俺は好感度を下げ50にしつつ、修行して強くなるのが目標だ。
険しい道だが、やらなきゃ死ぬ。
なら俺は
「やってやるぞ…!!!」
そう拳を握りしめて俺は天高く掲げた。
「何をやってやるんだ?」
その時、今の俺と同年代の声が聞こえた
「エリック!?」
エリックは今世の俺の友達。薄い金髪で丸めの目、まだ子供だし可愛い見た目してるがパワフル系馬鹿だ。ちなみに、漫画でも出てきていてオリエンに毒されて、一緒にエリアスを虐めてたパーティーメンバーの一人。
「何をやるんだよ?」
「えーと、そう!ギフトの特訓だ」
流石に生き残るために友達虐めようと思ってます、なんて言えるはずない。うろ覚えだけどエリックもオリエンのせいで最後雑に死んでた気がする。
お前のことも死なせないために頑張るからな…
心の中でそう思う、エリックは馬鹿だが本来虐めをするような性格じゃない。俺が上手いことエリックを毒さないようにすれば、エリックの命は大丈夫だろう。
「あ、そういえばお前ギフトの付与式で倒れたんだろ?大丈夫なのか?」
エリックは少し癖のある髪を揺らして俺を見た。漫画では雑に描かれてた気がするけど結構顔が整っている。
「大丈夫、今は普通に動けるしな。この木だって切ったのは俺だぞ?」
得意げに言うとエリックは目を大きくした。
「オリエン魔法以外非力なのに、すげー!」
いらない一言があるがまぁいい、多分悪意は…ないだろう。
「俺のギフトは【剣技】だったからな、お前はどうなんだよ?」
エリックのギフト…流し見の弊害で漫画で描かれていたが覚えてない。
「俺は【怪力】!!」
力こぶを見せながらニカッと笑う。元々強いエリックが怪力、流石伊達に勇者最有力候補のパーティーにいただけはある。
「なぁ、大人になったら一緒にパーティー組まないか?オリエンも強いし、俺も強いから最強になれるぞ!」
エリックはそう言うと俺の隣に座り肩を組んできた。ここは物語通りに進めたほうが多分いいはずだ。そもそも、パーティーがないとエリアスを追放出来ない。そのせいでチートギフトの覚醒イベントが発生出来ないと言うことになりかねない。
「あぁ、そうだな約束だ」
「おぅ!それまでに強くなっとけよ?」
「そっちこそ」
俺とエリックは拳を重ねた。
「5年後早速だからな!!」
「わかったわかった」
エリックは大型犬みたいにそう言うと立ち上がって走る。
「こうしちゃいられねぇ!早く修行しないとな!」
俺はそれについていかないで切り株に座ったまま見守る。この世界は前世では考えられないが、15歳で成人なる。つまり、後5年でパーティーを組んで、そしてエリアスを追放しなきゃいけないのがその1年後だったはずだ、いや…2年後か…?
そう考えていると頭がこんがらがってきた。そんなに詳しく、漫画で何歳の時に何をしていたかなんて覚えていない。
「はぁ…なんとかなるかぁ」
考えてもわからないことは考えない主義だ。とりあえず今は10歳児としてエリックやエリアスと遊んで生活しよう。
エリックは今世の俺の一番の友達だ。エリアスは友達というよりも弟感あるし…
そうだ、閃いた。エリックの好感度を見れば平均好感度を確認できるかも知れない。
母さんは好感度85だったけど家族だし平均よりかなり高いはずだ。エリアスの94は本当に知らない、何があったんだろうな。
普通の好感度を知れば、エリアスへの対応の仕方のヒントになるかも知れない。そうと決まれば【好感度メーター】と、そう心の中で唱える
普通の魔法は言葉として発しなければいけないが、ギフトは心の中で言っても使えるのだ。
『現在の好感度68』
ふむ…かなり仲いいから平均はもう少し下と考えて、平均60あたりだろうか?
「どうかしたか?」
俺が手に顎を乗せ考えていたせいで不審がられてしまった。
「いや、何でもない、俺はそろそろ帰るな」
置いてきたエリアスが少し心配になってきたし、母さんも暗くなる前に帰らないと心配するだろう。なんたって俺らはまだ10歳なのだから。
「はぁ?せっかく会ったのにつまんねぇの」
エリックはまだまだ遊び足りないらしく足をバタバタとさせる。普通の10歳の体力は無限だ、精神が大学生の今の俺はついていけそうにない。
「また今度一緒に修行しようぜ」
「本当か!約束だからな!!」
背中を軽く叩くとエリックはまたニカッ笑った。やはりこいつは単純だ。適当に話してそのまま二人で森を出ようとした、その瞬間
俺の胸に何かが勢いよく突撃した。
「オリエンっ!」
胸が痛い、当たったところ見れば血が滲んでいた。自分に突進してきた相手を睨む。それは猪…いや猪の魔物だ
「なんでこんな場所に魔物がっ」
息が切れる。剣に手を伸ばそうとしたが、それよりも早く魔物はまた俺に突進してきた。
やばいっ
目をつむり手を前に出す。しかし衝撃は二度と襲ってこなかった。
ゆっくり目を開けばエリックが自分の背丈ほどある猪の魔物を押さえている。
「俺のダチに何してくれてんだっ」
そのまま脚に力を込めると地面が軽くひび割れた。そのまま、エリックは魔物を森の奥に投げ捨てる。
「すげぇ…」
俺はそれを呆然と見つめた。どんなにギフトが強くても出会い頭の攻撃は流石に反応できなかった。早く修行しなければ出会い頭にエリアスに殺されるかもしれないと思うと震えが止まらない。
「大丈夫か?」
エリックは魔物を吹っ飛ばした後何事もなかったかのように俺の側に寄った。本当にかっこいいやつだ。
「あぁ、大丈…痛っ」
立ち上がろうとしたがその時胸から内側から圧迫されるような痛みが湧いた。服をめくれば血はさほど出ていないものの大きな痣ができている。
「うわっやべぇじゃん!!!早く帰るぞ!!!」
エリックはそう言うと動けない俺をおんぶして俺の家まで風が当たるぐらいの速さで走った。
やっぱりエリックはいい奴だ、エリックが俺の道連れで破滅しないためにも、これから頑張らなければ
と痛む箇所を抱え思う。
「エリック、ありがとな…」
『好感度+4 現在の好感度72』
「は???」
エリックの好感度が上がった…?え?なんで?
おんぶされながらエリックに目線を向ける、すると走って疲れているせいか耳が赤い。
「オリエンなんか変じゃね…?」
走りながらエリックが言う。
「え?」
「お前って自分は尽くされて当然みたいな感じだったじゃん」
うわ、すごい悪口言われた、まぁ、否定はしないが。今世の俺は前世の記憶が戻る前はかなり傲慢だった。…まさか感謝しただけで好感度が上がったのか?チョロすぎね?
若干引いているとエリックが一度足を止めた。
「なんか優しいし、今のお前俺すげー好きだ」
は???
俺が喋るよりも先にまたエリックが走った、さっきよりも早い。
「はぁ…?」
俺は何も返せず困惑しかできなかった。
俺の周りにいる人はみんなヒヨコなのか??
それともあれか、俺の顔が良すぎるのか?惚れないでくれよ、俺はこの世界でマチルダちゃんと付き合うんだから。あ、てかエリアスからマチルダちゃん奪えば好感度下がるかな。
俺は混乱した頭で、おんぶされ揺られながら悪巧みを思いついた。ありかもしれない、一石二鳥というやつだ。
「痛っ、なぁ丁寧に運んでくんね…?」
ギフトを使ってるのか風が肌に触れると当たっていると確かに分かるほど早い。そして、早く進むせいで振動して肋骨が痛い。
その後少しゆっくりになったが風が当たらなくなった時にはもう家に着いていた。
「ありがと、もう大丈夫だから降ろしてくれっ…」
流石に年甲斐もなくおんぶされている姿を家族に見られるのは恥ずかしくて、そう言うがエリックは全く下ろす気配がない
「エリック?」
「オリエンさっき立ててなかったろ」
嫌な予感がして問いかけると、その一言で一蹴され俺は情けない姿で自分の家に入ることになってしまった。
エリックとエリアスは雛鳥です。知らんけど
最後まで読んでくださりありがとうございます!!




