25話 勇者パーティー
「おはようございます。やっとこの日がやってきました、勇者パーティーの発表式を始めます!」
それは一年前魔王幹部を倒した隊を先導したと言われる男、ランドロクの言葉だった。
オーー!!!!!
それを聞く冒険者は勿論、一般市民達も声を上げる。
何故なら勇者パーティーとは魔王を打倒しに行くたった一つのパーティーなのだ。冒険者だけではなく前人類がこの時を待っていたと言っても過言ではない。
一番の有力候補と言われているのは【剣技】のギフトを持つオリエンをリーダーとするパーティー「リエナイド」だ。
しかしここ一年で目まぐるしい成長をするダークホースのパーティーもある。そのせいもあってか、会場は程よい緊張が走っている。
「早く行きましょう!!エリアス様!!」
そんなみんなが集まる広場の中、金髪縦ロールのお嬢様のような姿をした女性が、仏頂面の男の腕を引っ張った。
「あぁ…」
「絶対私たちのパーティーが選ばれるに決まってるのです!!」
次に猫耳を生やし、背丈が低い女性が元気いっぱいに脚を引っ張った。
「ニーナ、アリス、エリアスを引っ張らないの」
「ごめんなさい…ニーナもうしません!!」
「ふん!正妻面許せませんわ!!」
「いい子ねニーナ。後アリス、いつも言ってるでしょ、そういう関係じゃないって…」
マチルダはアリスの言葉に深いため息をついた。話の中心にいるはずのエリアスはまったく動じない。真っ黒な瞳に何も映していないようにさえ見える。
「あれがダークホースの…」
「きっとそうよ…獣人の子供に白髪の大剣使に王国の姫様…そして、魔族のような身なりの男…」
「じゃあ、本当にあの人たちが…「ウィナー」なのね!!」
そんな四人組の周りはざわざわと噂をする声が聞こえる。それはこの四人のパーティー「ウィナー」が一年でやり遂げてきたことのせいだろう。
リーダーのエリアスと白髪のマチルダはそれこそ一年前の魔王幹部を倒したとされているし、それ以外にも誰も到達できなかったダンジョンの最下層に到達しただの、悪の組織を倒しただの、嘘か本当かわからないことすら囁かれている。
「それでは前置きもここまでにして、勇者パーティーを発表します!」
ほとんど誰も聞いていない前置きが終わると空気が静まる。どのパーティーがそれになるのか、誰もがつばを飲んだ。
「勇者パーティーの名は…ウィナーです!!」
ワァーーー!!!
その瞬間広場に集まる人々は手を挙げ歓声をあげた。
「ふん!当然ですわ!」
「わーい!ニーナ嬉しいのです!!」
アリスは髪をなびかせ、ニーナは飛び跳ねる。たった一年で勇者パーティーに登りつめるパーティーなんて聞いたことがないほどの快挙だ。
「…これでやっと殺せる。」
しかしリーダーであるエリアスはそう言って拳を握りしめるだけだった。
◇◇◇◇
そうして俺たちは壇上台に登った。意気込みだの、奮起させる言葉だのを言わなければならないらしい。正直どうでもいい俺は三人に任せてしまいたかったがマチルダにマイクを押し付けられ仕方がなく手に取った。
マイクを握ると広場にいる人々が静まる、俺の見た目を忌避する目もあるがそれもどうでもいい。
「エリアス…何でもいいから」
マチルダが黙る俺にそう耳打ちした
「…全て奪い返す、だから待ってろ」
ただ一人に向けてそう言うが何を勘違いしたのか、人々は歓声をあげた。訂正する気もないが。
しかし、ギフトを使って意味がわかったのか、それとも何となく察したのかマチルダだけは深いため息をついた。
俺達の言葉とともに祭りは始まった。勇者パーティーが決まった日には盛大な祭りを開いて見送るのが習わしなのだ。
「串焼食べたいのです!!」
ニーナに服を引っ張られ財布を渡す。するとニーナは俯いた
「違うのです、エリアス様と食べたいのです!!」
何故か俺に懐いているニーナはそう甘える、子供の頃の自分を見ているようで頭が痛くなった。
「…わかった」
「本当なのですか!!ありがとうございます!!」
「ちょっとずるいわよニーナ!!私も行きますわ!!」
アリスもそう言ってドレス姿で駆けてくる。転びそうだな、と思った
「きゃっ!!」
本当に転んだ。しかし俺の方に倒れてきたからアリスが膝をつくことは無かった。
「す、すみません…!!」
顔を赤くしてアリスは前髪を整える。
「大丈夫だ」
そう答えるとニーナはまた顔を紅潮させた。マチルダはその様子を見て苦い顔になった。その後もお祭り騒ぎは続いたが、俺は少ししたら直ぐに宿に帰った。
ダンジョンの最下層に何故かいたニーナと悪の組織に囚われていた女王アリス、この二人は俺達に魔王討伐のために力を貸すと言って無理やりついてきたのだが、勇者パーティーになれたのだから感謝しなければならない。
ドラゴニュートとの戦いで俺は知った、奪い返すには邪魔が多すぎると。それならまずは邪魔な存在を消してから少しずつ奪い返そう、そう決めたのだ。
「エリアス…こんなところに逃げたのね」
そう言って扉を開けたのはマチルダだった。手にはサンドイッチを持っている。
「はいこれ、貴方の分」
そうやって差し出されたのはハムとチーズのサンドイッチだ。俺はそれを遠慮なく受け取ると口に運ぶ。
「…ありがとう」
「いいえ、明日から旅に出るんだからいっぱい食べてもらわないとね」
マチルダはそう微笑むと俺の隣に腰を下ろした。
「貴方って本当変わらないわよね」
窓の外を見ながらマチルダはそう言葉を零した、窓の外にはニーナとアリスが俺達を探しているようでキョロキョロとしている。
俺自身変わった気もするし、変わらない気もする。しかし、ここ数年で一番俺の側にいた人間がそう言うなら多分そうなんだろう。
「あ、でもフードは被らなくなったわね」
「…どうでもよくなったからだ」
もう魔族と言われてもなんとも思わない。逆に何故あんなに嫌がっていたのかのほうが不思議だ。
「あと…口調とそうね、あとは…」
何故変わっていないという話からいきなり俺の変わった所を探しの話になったのだろう、そう思いながら俺も窓の外を見つめた。
人間は誰しも変わるものだ、その場の環境、どう見られたいか、見られたくないか、それの理由は様々、俺も何かのせいできっと今も変わり続けている。
「心の声が聞こえなくなっちゃったのは悲しいわ」
「よくわからないな、普通に思考してるぞ」
「私のギフトは強い意思とか、気持ちから言葉を読めるようになるのよ、だから今の貴方みたいに感情が薄いと読み取れないの」
「…そうか」
最後の一口を口に詰める、ここのサンドイッチは昔からずっと変わらない。そう思ったが、袋についている値札を見れば値段が少し高くなっていた。
「あ、ニーナが蝶を追いかけてる」
マチルダに言われて値札からそちらに目線を移す。確かに黄色い羽を羽ばたかせる蝶を夢中になって追いかけている。その蝶はゆっくりと人の流れを飛んで、赤い花に止まった。
赤と言えば…オリエンを思い出す。いろんな国を渡っていたせいで一度も顔を見合わせていないが、今はどうしているのだろうか。ここに来ていればいいとそう思う。
「……やっぱ貴方変わってないわね」
赤い花を見つめているとマチルダは軽くため息をついた。
◇◇◇◇
「それではお気おつけてください…」
ランドロクが最後の門まで俺達の出迎えをしに来た。本当はまた国民全体で送ると提案されたがそれは丁重に断った。騒がしいのはあまり好きではない。
「エリアス様!!私たちの力を魔王に知らしめてございましょう!!」
「ニーナも頑張るのです!!」
そう意気込む二人とマチルダを引き連れて俺達の旅は始まった。と言っても世界の謎を解き明かすだとか、世界を救済するだとかの旅ではない。ただ邪魔者を殺すだけだ、すぐに終わらせてまたここに帰ってくるつもりでいる。
俺の目的は一つだけなのだ。
最後まで読んでくれてありがとうございます!!




