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24話 エリックの信頼

『エリアスが覚醒したぞ』


「本当か!」


それはグレイデンをどうにか撒いて晩飯を食べていた時に頭の中に響いた。

今日は魔王軍幹部のドラゴニュートの討伐の日で、漫画でもエリアスはこの日に覚醒をしていた。俺は漫画ではこの時全く出てこなかったからエリックの誘いを一応断ったが功を奏したのだろうか。関係なかったとしても、とりあえず一安心だ。


『あぁ…だが…』


しかしパーフェストはそうじゃないようで、言葉を濁した。


(何か異常事態でも起こったのか?)


『…エリアスの本来の覚醒理由はお主に居場所を奪われ、ドラゴニュートに最愛のマチルダを奪われそうになったからだ…』


(…おう?)


『しかし…少し今回の覚醒理由は違ってな。まぁ、覚醒したのだから気にしなくともよいだろう。』


パーフェストは少し考えた後そう言った。パーフェストは適当なところがあるから心配だ。でもまぁ一応神だし大丈夫だと思おう。


(それならいいけど…)


とりあえずエリアスが覚醒したなら世界の平和は守られたも同然だ。それほどエリアスのギフトはチートなのだから。


『お主はこれからどうするのだ』


「え?」


つい声に漏れる、まさかそんな質問されるとは思わなかったからだ。


(これから…って言われても…)


一番の目標エリアスの覚醒が済んだ以上、これからは適当に依頼をこなして、殺されるその日まで生きるくらしいかやることがない気がする。今更エリアスの好感度を上げれるとも思えないし、十中八九俺は最後殺されるだろう。なら無駄な抵抗はしないでせめて残りの余生を穏便に過ごしたい。


(あ…)


その時一つ思い出してしまった。俺が死ぬのはいいとして、エリックやグレイデンはどうなるのだろうか。漫画では一緒に虐めていたパーティーメンバー全員が雑に死んでいた。でも今回はエリックもグレイデンもエリアスに何もしていない、大丈夫だとは思うが少し心配だ。


(エリックとグレイデンは大丈夫なんだよな…?)


『…あぁ、エリアスの復讐の対象はオリエンだけのはずだ』


それを聞ければ一安心だ。まさかこれからまた好感度を下げて二人を遠ざけなければならないのかと思って焦った。


(だったら俺は依頼をこなす日常を過ごすよ)


『…そうか』


漫画では勇者パーティーになったエリアスのパーティーにいちゃもんをつけるシーンがあったりするがそれも必要ないだろう。もう好きにさせてもらえると思うと重荷が下りた気分だ。


「エリアスは幸せになれるといいなぁ」


窓から三日月を見つめてそう願う。いや、きっとなるのだとそう確信を持っている。何故なら漫画の最後のページはみんな笑顔だったのだから。


「オリエン!!!」


その時、扉がガタンと音を立てて開いた。随分乱暴な開け方に驚いて振り向くとそこにはエリックがいた。


「エリック…?どうしたんだよ」


「エリアスとマチルダはパーティーから抜けたのか…!!!?」


部屋に入るやいなや俺の肩を揺すぶる、ずっと言えるタイミングを逃していたのだが、知ってしまったらしい。


「まてまて、エリックが帰ってきたってことはドラゴニュートは倒せたのか…?」


「そんなことどうでもいいだろ!!」


とりあえず落ち着かせようとしたが聞く耳は持っていないらしい。エリックもドラゴニュート討伐に行ったはずだからきっともう終わったのだろ。エリアスが覚醒してから暫くたったし確かに頃合いだ。


「オリエン教えてくれよ…エリアスとマチルダはどうしたんだ」


俺は真剣な表情で聞くエリックに冷や汗を垂らした。


「エリアスとマチルダちゃんに会ったのか…?」


「…あぁ」


◇◇◇◇


「マチルダ!?」 


それはいきなり襲いかかってきた魔物や魔族をとりあえず殴っていたとき、そこにはパーティーメンバーであるマチルダが腕に凄い怪我をして蔦に運ばれていた。


「っ…エリアス!!」


マチルダは俺に気づいていないようで蔦を握って千切ろうとしているが、腕の怪我で上手く逃げ出せないようだ。


「マチルダー!大丈夫かー!!」


飛びついてきた魔物を蹴り飛ばすと俺はマチルダに駆け寄った。


「…エリック!?」


「おー!どうした!」


とりあえず蔦を千切ろうと持つ。しかし、蔦は手に持っただけで元々なかったかのように消え失せてしまった。


「あれ?」


「っ…魔力が切れた」


マチルダはあまり嬉しくなさそうにそう言った。自分を縛っていた物がなくなったのに何故だろうか。


「エリックお願い!!ついてきて!!」


「いいぞ!!」


マチルダは腕を怪我していたけど、足は無事なようで俺を先導した。何があったのか聞けばエリアスと今回の本当の標的であるドラゴニュートが戦闘しているらしい。


「早く加勢しないとな!」


マチルダにそう言うが息を切らして走るだけで返事は返ってこない、非常にまずい状況なのだろう。


「エリアス!!」


戦闘場所は思っていたよりも近く、直ぐにエリアスは見つかった。しかし、おかしいドラゴニュートの姿がない。


「ドラゴニュートは?」


一人で突っ立っているエリアスに聞くとゆっくりと地面を指さした。そこには真っ黒な灰だけが残っている。


「まじで…?」


まさか一人でエリアスが倒したのか…そう思い聞いてみるとエリアスはコクリと頷いた。


「まじかよ…」


じゃあ目標達成したし帰ったほうがいいのか?ランドロクさん何処いんだろ。と考えているとエリアスがいきなり木の上に飛び乗る。


「何して…」


マチルダもそのいきなりの行動に驚いて声を漏らした。しかし、エリアスはそんな反応を気にしないで木から木に移動し、一番高くここら一体を見渡せる木のてっぺんまで登った。


「おかしい…」


「なにが?」


「エリアスはさっきまで息も絶え絶えだったのよ?どこからこんな体力が…」


マチルダは呆然と彼奴を見つめてそう言った。


「体力回復のポーション飲んだんじゃね?」


「あそこまで回復できるほどポーションを持っているとは考えられないわ…」


「えー」


じゃあ何をしたのだろう。エリアスの使う魔法に体力回復なんてものないし、ギフトもそんなものじゃなかったはずだ。

ウンウン頭を唸らせているが答えは出ない。しかし、その時答えは目の前に提示された。


「【rob】」


そう言って木のてっぺんでエリアスが手を下にかざす。すると魔族や魔物に黒い靄が発生し、動きが著しく鈍ったのだ。今まさに襲ってきた魔物の攻撃を防いでみれば、ギフトを使っていなくても防げそうな力だし、軽く小突けば倒れる。逆にエリアスからは溢れそうなほどの魔力の高まりを感じる。


「奪ってる…?」


マチルダが言葉を零す。確かにその言葉が合っているかもしれない。

エリアスの能力はともかく、どれだけ傷ついていてもこの程度の魔族や魔物なら倒せる。他の冒険者たちと協力し、エリアスに力を奪われた魔族や魔物を俺達は倒した。辺りが静かになったとき、やっとエリアスは木の上から降りてきた。エリアスの魔力密度は隙間がないほどで、どれだけ奪ったのかが伺える。


「エリアス…お前……凄いな!!!!」


直ぐに駆け寄るがエリアスの反応は薄い。最近此奴はノリが悪いのだ。


「祝勝あげようぜ!!オリエンとグレイデンは来てないけど…今回の主役ってことで奢ってもらえよ!」


それでも背中をバシバシ叩く。本当に今回はエリアスがいないとヤバかっただろう。来なかった二人は特にエリアスに奢るぐらいするべきだ。


「いや…行かない」


しかし、エリアスはそう一蹴した。疲れているからかと思ったが、雰囲気がそのくらいの事ではないと思わせる。


「なんかあったのか…?」


「……もう僕はパーティーのメンバーじゃないから」


「は…?」


エリアスはそう言うと俺に背中を向けて歩き始めた。


「まてっ!」


無意識に腕をつかむ、離したらもう長い間会えない気がした。


「メンバーじゃないってどういうことだ?」


「聞いてないんだ」


意味が分からずにマチルダの方を見るが、マチルダは俯くばかりで口を開く素振りがない。そしてそれはエリアスもだ。


「オリエンから聞けば全部わかる」


エリアスはそう言って俺の手を振り払った。その後も追いかけようとしたが、まだ残っていたはずの体力が消えていき、最後にはその場に座り込んだ。自分の身体を見れば黒い靄がかかっている。


「っ…まてよ!!」


最後にそう叫ぶがエリアスとマチルダは森の奥に進んで木々に姿を隠してしまった。俺はその場で地面に拳を叩きつけた。

何が起こっているんだ、エリアスとマチルダに何かあったのか?オリエンなら知ってるて何をだよ。


「くそっ…」


何度も地面を叩いていれば、まだ微かに残っていた体力を使い果たしてその場に倒れ込んだ。朝に始まったはずの依頼だったがもう空には三日月が浮かんでいた。


◇◇◇◇


「その後は近くの冒険者に体力回復のポーション貰って直行でここまで来た…教えてくれ。一体何があったんだよ」


エリックはあったことを話すと瞳に薄い膜を張った。来る前に怪我直してこいとか言いたかったが口をつぐむ。


「……俺がエリアスを追放したんだ。マチルダちゃんはそれについて行った。」


そして俺は隠すことなくそのまま話した。エリックはそれを聞くと目を見開き、俺の肩を握る手を震わせた。


「なんで…」


「エリアスが嫌いだったからだ」


目を伏せてそう言う。しかし、エリックはそれに全く動じなかった。


「本当のこと言えてっば!!」


「っ…嘘じゃねぇよ、ずっと隠してたけど会ったときから嫌いだった」


「だから嘘は言いっつーの!!」


「嘘じゃねぇって!!」


「嘘だろ!!」


「嘘じゃ…ねぇ」


どうやらエリックの中で俺がエリアスを嫌うのはありえないことらしい、どんなに言おうが真正面から否定される。


「オリエンか嫌いなやつと何年も何年も一緒にいるわけねぇだろ!!」


「そんなことお前が決めんな!!」


もはや話し合いとかじゃない、喧嘩だ。俺がどんな思いでエリアスを嫌いだと言ってると思ってんだ此奴は、そんな八つ当たりで俺も少しずつ声のボリュームが大きくなる。


「オリエンはエリアスのこと好きだ!!」


「好きじゃないって言ってんだろ!!」


「好きじゃなきゃ…今までの俺達ってなんだったんだよ……俺はみんな好きだ、エリアスもオリエンもみんな」


今まで力強く握っていた手が力なく添えられるだけになる、それは決めつけではなく懇願だった。


「っ…俺は」


今までの事を思い出すと唇が震える。エリアスとエリックはよく喧嘩してみんなを困らせていたな。エリアスもエリックもいつもひよこみたいに俺の後ろをついてきてたし…。大変だったけどそれ以上に楽しかった。初めての依頼もみんなでご飯を食べたのも、全部、全部、嘘だと俺は言ってるのだろうか。このくらいで泣くほど女々しい人間じゃなかったはずなのだが、やはり涙腺が壊れてしまっているらしい。涙が一筋垂れた。泣いてるのを見られたくなくて腕で顔を隠すが、ほとんど意味は無いだろう。


「…ほら、やっぱ嘘だ」


震える声でそう言うとエリックは俺を抱きしめた。エリックの傷跡からでる血が俺の服に染みをつくる。


「なぁ…俺バカだからグレイデンみたいに察することなんて出来ねぇし、マチルダみたいに上手く支えることも出来ねぇ、だから教えてくれよ…何があったのか」


馬鹿になった目からは涙が止めどなく溢れてくる、熱くなった頭で俺は静かに頷いた。



「…エリアスのギフトを覚醒させて魔王を倒す為には好感度を50以下にして追放する必要があった?」


「…おう」


落ち着いて話せばエリックは瞬きをした。


「パーフェストがそう言ってた…」


「パーフェスト様が…?」


その隣でグレイデンも目を丸くした。グレイデンも呼んでいざ話したが信じてもらえるかはわからない。パーフェストに何処まで話していいか聞けば、エリアスや他の人々に漏らさなければもう覚醒したから別にいいと言われてしまい、俺自身困惑している。

感情のまま話してしまったが…本当に大丈夫なのだろうかと冷静になると思う。


「どうやって話してるの?」


「グレイデンが昔俺に押し付けたネックレス…」


今もつけているそれを見せれば二人は顔を見合わせた。


「好感度はギフトで【好感度メーター】ての貰ってそれでみて調節してた」


ずっと話せなかったことを話せてもう口が閉まらなかった。しかし、二人は黙ったまま俯いている。


「やっぱ…信じられねぇよな…」


当たり前だ、こんなこと言われて簡単に信じるほうがおかしいのだ。嘘つきだと思われてしまっている可能性のほうが高い。それにエリアスを虐めていた事実が変わるわけではないのだ。どんな理由でも俺は最低なことをした。目頭が熱くなって下唇を噛む。本当にこんな程度のことで涙を流すのはやめてほしい。嫌われるのも、信じられないのも当然なのに自業自得なのに、壊れた涙腺は俺の意思を無視して誤作動を起こす。


「ごめんっ…」


しかし、そう言って涙を拭こうとしたら二人は俺を抱き込んだ。いきなりのことに驚くが、それは温かくて逃げ出す気にはならない。


「信じるに決まってるじゃん」


グレイデンはそう言って俺の頭を撫でる。


「俺も信じる!!それに今までそんな大変だったのに気づけなくてごめんな…」


エリックは何故か涙を溜めて、抱擁を強くした。


「なんでっ…」


あまりにも二人が優しくて困惑が勝つ。

おかしいだろ…こんな突拍子もなくて証拠も出せないような話、なんで信じられるんだよ…。

そう思っても震えて口に出すことはできなかった。


「そりゃ、ずっと一緒だし…信頼するだろ!!」


「そうそう、それにオリエンすっごく優しいからね、何か理由があるのは元々わかってたし…それにさ」


「「好きだから」」


その時二人の声が重なる、それは余りにも柔らかく、慈愛に満ちた声だった。


「っ…」


言葉にならない声を出して俺は二人の胸の中でまた涙を流した。こんなに優しい仲間がいるなんて、俺は本当にめぐまれている。


「…ありがとう」


『『現在の好感度130』』


















最後まで読んでくれてありがとうございます!!!

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