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2話 僕の勇者

『現在の好感度79』


今日ギフトの付与式で僕のたった一人の友達が倒れた。


「オリエンっ!!!」


どんなに呼んでも返事は返ってこない、僕は情けなく大勢の前で泣きじゃくった。でも、後から分かったが、ギフトを付与されて倒れることは偶に起こることで、特に気にしなくていいことらしい。

それを聞いたとき僕はどれだけ安堵したことか。

ちゃんと脈打っているか確認するために、ベッドで眠るオリエンの首に手をやる。ドクン、ドクンと一定のリズムが手に伝わるとやっと息をついた。しかし、その瞬間オリエンは首に当たった僕の手に顔を寄せた。

びっくりして心臓が飛び跳ねる。僕の体温が冷たいからきっとそれが気持ちいだけだろうけど、嬉しいものは嬉しい。


「エリーくんも疲れてるでしょ、お家まで送ろうか?」


マリーさんが僕にそう言った、可哀想な人を見る目で。マリーさんはすごく優しい人だから、僕を魔族って呼ばない。でも、やっぱり違和感はあるみたいだ


この、僕の黒髪と黒目が。


みんなは色はそれぞれ違えど明るく、まるで女神様の髪のような色なのに、僕だけは生まれたその瞬間から真っ黒。

そのせいでみんな僕を魔族だって言う。お母さんとお父さんもそんな僕が嫌いみたいで、夜な夜なお母さんが僕のせいで泣いている。こんな僕でも役に立つギフトを授かればきっとみんなに仲間として扱ってもらえる、そう思った。でも、僕のギフトは【低下】自分のステータスを下げることしかできない所謂ハズレギフト。

マリーさんは優しいから僕を可哀想と思ってくれてる。でも、家に帰ったらお母さんは僕をもっと嫌いになるだろうし、お父さんにはまた殴られるかもしれない。

泣かないように服の裾を握りしめるけど、それでも肩は震えてしまう。泣いたら駄目なのに、迷惑をかけてしまうのに。


「…良ければもう少しオリエンのこと見ててくれる?私も付きっきりでいれるわけじゃないからさ」


そんな震える僕を見かねて、マリーさんがそう言ってくれた。なのに、僕は声が漏れないように静かに頷く事しか出来ない。


「ありがとう!私はオリエンが起きた時のためにご飯作ってくるね!」


でも、僕が頷くとマリーさんはとびきりに明るい声を出してくれた。そして、立ち上がると部屋から出ていった。

一人にしてくれたんだろうと思う。僕とオリエンしかいない室内はオリエンの匂いがした、まるでオリエンに抱きしめられているようで落ち着かない。それでも、静かに寝息を立てるオリエンの手を握りしめる。オリエンは僕のことを魔族と言わない、それに可哀想だとも思っていない、僕を等身大の人間として扱ってくれる僕の大切な人なんだ。

初めてオリエンと会った日のことを今でも鮮明に覚えている。あれは僕達が5歳の頃、その時からオリエンは女神様の加護を受けたようにしか見えない綺麗な赤髪とエメラルドグリーンの瞳で、みんなの注目の的だった。

僕もそんな綺麗な彼を見つめていた、今だってそこは変わらないけど。でも、今と違って僕とオリエンは友達じゃなかった。それに気の弱い僕は魔族と罵られて嫌悪され、虐められていた。

あれは家に居場所がなくて、外に出たら背の高い男の人に絡まれた日だった。

僕たちが住んでいるググレ村は畑と家しかない田舎だったからか、僕とその人しか周りには誰もいない。そんな中で僕は髪掴まれて、地面に顔を押し付けられた。口に入った泥の味を今でも思い出せる。

そして男の人はそれをつまらなそうな目で見て


「綺麗な茶色にしてやるよ。髪も目もな」


と言った。多分あの人は同年代の人が僕に向ける、本当に魔族なんじゃないかという恐怖とか、からかいじゃなくて、なにかの八つ当たりに僕を使ってたんだと思う。だって本当に気味悪がってるみんなは僕の髪に触れることなんてないから。なんかもうどうでも良くなって、このまま死ねればいいのに、そう思っていた。

そんなときに、オリエンは現れたんだーー。

綺麗な赤髪を風で揺らして、自信たっぷりに大幅で歩くオリエンは、本当に物語のヒーローみたいだった。


「お前ら邪魔なんだけど」


オリエンはそうやって不機嫌そうに言った。道のど真ん中だったから、本当に邪魔だから声をかけたんだと思う。でも、僕を見るとオリエンの表情が変わった。


「あ、エリアス…だっけ?何してんの」


「え、えっと…」


名前を覚えていてくれたことが嬉しくて、場違いに照れてしまう。そんな僕を見て状況を理解すると、僕達よりも何回りも背の高い男の人をオリエンは睨んだんだ。


「お前子供虐めて楽しいのかよ、情ねぇな」


そしてそう言い放った。男の人はそれに腹を立てて逆上し、拳を振り上げた。流石のオリエンでもこんな大人に殴られたら危ない。そう思って、僕は男の足を掴んだけど呆気なく投げ捨てられた。


「は?ガキが調子乗ってんじゃねぇよ。俺は今イライラしてんのわかる?」


大きな拳が小さな身体に振りかざされる


「危ないっ!!」


その時、僕は叫んだ。でも、オリエンはそんな拳簡単に躱しちゃったんだ。そして相手の後に立つと、基礎火魔法を使って男の背中を燃やしてみせた。


「あー、俺水魔法使えないっ…はぁ、その顔覚えたからな」


男はそう言って湖の方にかけていった。オリエンはその様子に笑っていた。


「俺に勝とうなんて100年早いんだよ!!」


燃えた背中にそう発するとオリエンをただ見上げていると、オリエンは今度は僕に手をかざした。いつも殴られていた僕は反射で身体を震えさせたけど、手から放たれたのは暴力じゃない。


「【水よ】」


そう、基礎水魔法だ。水で僕についた汚れを綺麗にしてくれたんだ。その水は冷たかったけど、すごく温かかった。その後に服を絞りながら僕はオリエンに聞いた。


「なんで助けてくれたの?」


それにオリエンは


「俺は勇者になる男だからな!こんなの当たり前だ!!!」


そう笑った、心臓がドクドク鳴って体温が暖かくなった。僕はあの時威風堂々とした生き方に、オリエン自身に本当の意味で目を奪われたんだ。

だから、オリエンがこのまま目が覚めなかった僕は耐えられない。


「僕の勇者…オリエン、早く起きて」


オリエンの為なら何だって出来る、オリエンがオリエンで居てくれるなら僕は、ずっとそばにいるよ。

そう手を握るとオリエンの肩が動いた。


「オリエン…」


呼びかけると瞼がぎゅっと締められる、さっきまでなかった反応だ。

これは起きかけている…?


「オリエン」


「エリアス…」


その時、オリエンの瞼が開いて綺麗な瞳が輝いた。僕は嬉しくて泣きそうになったけど、心配させないために涙を引っ込める。


「オリエンっ!!意識が戻った…体調はどう?大丈夫?」


聞くとオリエンは自分の拳を見つめた後脱力し


「あぁ、全然大丈夫じゃない」


と萎れた。いったい何があったのだろうか、顔色は悪くないが


「まだしんどい?おばさん呼んでくる?」


オリエンの額に乗せられたタオルを取り、熱を確認する。教会で倒れた時は、頭が焼かれたように熱くなっていたが今は普通の人肌程度、それにはホッとするが何やらオリエンの様子がおかしい。


「熱はないみたいだけど…」


「いや…いい」


そうは返って来るがオリエンは強がる癖があるから心配だ。


「本当?」


僕が聞けばオリエンは頷いた、それでもやっぱり心配で手を動かす。今僕にできることといえばこのタオルを額に置くことだけだろう。そう思って額にタオルを近づけたが、生暖かくなっていることに気づいた。あんな熱い頭にずっとつけていたから当たり前だ。


「冷たくなくなってきてる…ちょっとまってね【水よ】」


基礎水魔法でタオルを濡らす、オリエンみたいに強く出すことはできないけど、僕でもこのくらいはできる。

これで少しでもオリエンの役に立てているといいな。


「魔法…」


オリエンの声が聞こえた、でも小さく呟いていたから上手く聞き取れない。タオルを絞ってオリエンの方を向くと、オリエンは何故か僕を見つめていた。こんなに見つめられることなんてそうそうないから顔が熱くなる。


「どうしたの?」


「いや……あ、そうだエリアスはどんなギフトをもらったんだ?」


震える声で聞いたが話をそらされてしまった。

何で僕を見てたんだろう…。

それにそらした話は僕があまりしたくない話だ。僕のギフトはハズレだった、オリエンに憐れみの目を向けられたら僕は泣いてしまうかもしれない。ギフトが弱いのは確かに辛い、そこで見返そうと思ってたくらいだし。でも、オリエンにも弱い存在として見られたら僕は立ち直れない気がする。


「えっと……【低下】だよ」


それでも嘘を付くなんて出来るはずがなくて、そのまま伝える。でも詳しくは言わずに簡単に。


「……僕のギフトなんて別にいいよ、オリエンはどうだった?」


「俺ー?俺は…、」


幸いにも言葉を投げれば特に追求することなく、オリエンは自分のステータスを見始めた。それに僕はほっと息をする。


「やっぱり…て…は?」


ステータスを見ていたオリエンが目を広げた。何かあったのだろうか、僕にステータスは見えないから何があったのかわからない。


「どうしたの?」


「…いや何でもない、俺のギフトは【剣技】みたいだな」


剣技っ!!


それは剣の道へ行く者なら誰もが喉から手が出るほど欲しいギフトだ。レベルが上がるにつれて攻撃力は当然、斬撃を飛ばせ、あのドラゴンの鱗だって切れるようになるかもしれない。


「【剣技】!!すごいよオリエン!!!」


「ああ、さんきゅ」


冒険者は勿論、王国騎士団だって狙える。やっぱりオリエンは凄い、オリエンは本当に勇者なんだ!!僕は目を輝かせた。僕自身が強いギフトを貰うよりも嬉しい。興奮気味に話したその時、突然オリエンの手が僕の頭に置かれた


「えっ?」


オリエンは何をして…僕の髪黒いのに、いや、オリエンはそんなこと気にしてないみたいだけど。でも、でも


「エリアスって髪綺麗だよな」


空気を吸い込む音がひゅっと聞こえる。それは自分が発したものだと後から気づく。オリエンの手が僕の頭をゆっくりゆっくりと撫でる。

僕、今撫でられてるんだ。それもみんなが嫌う僕の髪を綺麗と言われて。

オリエンの顔から目が離せない、心臓が破裂しそうで、なんだか悲しくないのに目頭が熱くなって涙が出てきそうだ。頭がふわふわする、撫でられるってこんな感覚なんだ。

そう思った時、扉がノックされオリエンの手は僕の頭から離されてしまった。それでもまだふわふわした気持ちは抜けない。

マリーさんが部屋に入ってきたみたいだけど、二人が何を話しているのかも、上手く聞き取れない、僕はただただ多幸感に包まれていた。

どうしよう、オリエンの顔が見れなくてずっと下を向いてしまう。


ドク、ドク、ドク、ドク、ドク


何なんだろう心臓が痛い、オリエンといるといつも早くなる脈拍だけど、痛みを感じるほどなんて初めてだ。


こんなの……知らない


『好感度+11 現在の好感度90』


「あ、エリーくん夜も遅いしもう泊まっていく?」


その言葉が僕を現実に引き戻した、いきなり顔を上げればマリーさんが近くにいて驚く。


「え、あ、いいんですか?」


でもオリエンと離れたくなくて、僕は食いつくようにその言葉に答えた。


「ええ、ゆっくりしておいき」


「あ、ありがとうございます!」


オリエンの方をちらりと見るとオリエンも微笑んでいる、その顔がいつも以上に眩しく見えた。

その後、マリーさんに促されてお風呂に入ったけどその事はあまり覚えていない、多分ずっとオリエンのことを考えていた。頭を洗うのが勿体ない気がして何度も躊躇ったけど、オリエンに臭いて言われたら嫌だから洗ったことだけは覚えている。

お風呂から出るとオリエンの服を渡された。僕の着替えの用意がないからだけど、すごく嬉しかった。僕より少し背の高いオリエンの服を着ると全身をオリエンに包んでもらってるみたいでまた心臓が飛び跳ねる。このままじゃいつか心臓が本当に何処かに行ってしまいそうだ。

そんな馬鹿みたいなことを考えながらオリエンの部屋に足を進める。家に泊めてもらうのは初めてじゃないのに何故か緊張する。でも早くオリエンに会いたいから僕は出来るだけ震えないように声を出した。


「オリエン入るよ?」


少し重たい扉を開けるとそこにはカボチャスープの匂いが広がっていた。オリエンの横に空っぽのお皿が置いてある、きっとマリーさんが持ってきたのだろう。


「体調はどう?」


顔色も何処かさっきよりもいい気がして聞く。


「いや…えー大丈夫元気」


「本当!良かったよ…」


少し違和感のある返事だが、元気そうなのは本当だから僕は笑った。しかし、違和感はどんどん大きくなる。みるみるうちに何故かオリエンの顔色が悪くなったのだ。体調不良というよりかは、嘘がバレそうで青ざめてる時のそれだ。


「どうしたの?」


「いやーなんでも?」


聞いても誤魔化されてしまう。もしかして僕の分もカボチャスープが用意されてたのに飲んじゃったとか?


「…?」


気になるけど多分聞いても教えてくれないだろう、オリエンは変なところで頑固だから。


「は、早く寝ようぜ??ほら俺安静にしなきゃだし」


ついにはそう言って慌てて布団の中にくるまってしまった。けど、何だかそれすらも愛おしい、僕は病気にでもなってしまったのだろうか。


「うん…そうだね、おやすみ、オリエン」


僕はそう言って、オリエンのベッドの中に潜り込んだ。本当に体調が悪そうなら床でねるけど、元気そうだし、大丈夫だろう。オリエンはびっくりしたみたいだけど、少し遅れてぶっきらぼうに


「おやすみ」


と返してくれた。やっぱり僕はオリエンのことが好きだ


『好感度+2 現在の好感度92』


オリエンの寝息を聞きながら僕はその背中に抱き着いた。オリエンの呼吸に合わせて背中がゆっくりと動く、それがまた愛おしくて背中にそっとキスをした。


エリアスは激重ショタです


最後まで読んでくれてありがとうございます!!

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