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18話 好感度

「オリエン…?」


パーフェストとの会話が終わると元の世界に帰ってこれたようだった。目の前には幸せそうな顔のエリアスが指輪を俺に差し出している。【好感度メーター】も発動されていて、やはりデカデカと200と表示されている。なんて幸せな場面だろう。エリアスが選んだくれた指輪はとても綺麗に輝いていて、エリアスのことだからきっと沢山悩んで決めてくれたんだろう。


あぁ、受け取りたい。ありがとうて言って抱きしめたい。


でも―――


「はっ…きも」


俺はそう冷たく言い放った。エリアスの顔からは笑みがゆっくりと消え、いきなりの俺の変わりように狼狽えている。


「オリエンっ?」


声が震えている、まるで縋るものが消えそうな子供のような声だ。


「何だよその顔、俺がそんな告白受けるとでも思ってたのか?」


手を伸ばすエリアスの手を払いのけるとその衝撃で指輪は可愛らしいリボンのついたケースごとベッドの下に落ちてしまった。


「っ…あ」


エリアスは遅れてそれに気づくと、ケースを拾おうとしゃがむ。それを見ていると頭がグシャグシャになって涙が出てきそうにった。

でも、駄目なんだ、許さなくてもいい、今はこうするしかないんだ、どうか俺を嫌ってくれ。

しゃがむエリアスの腹を俺は魔物を攻撃するような強さで蹴った。予想外の蹴りにエリアスは対応できるわけもなく、そのまま後に転がる。すると、苦しそうな咳をあげた。


「オリエン…、俺なにか酷いことしちゃったかな…っ謝るよ。昨日のこと…?それよりも前…?」


エリアスは一瞬フリーズした後に、縋るように俺を見上げた。頬には一筋の涙がつたっている。頼むから俺に縋らないでくれ、俺はクズで最低なオリエンなんだから。


「本当…笑えるよなぁ」


乾いた笑いでエリアスを見下ろすと髪を乱暴に掴み上げる、痛みからかエリアスはまた表現を歪ませた。


「そうだなぁ、じゃあ謝れよ。俺は、ずっとお前が嫌いだったんだからな」


「…え」


「最初に会ったときからお前は馬鹿みたいに弱くて、その癖に対等に見られたがって、本当にイライラさせてくれたよ。そんでもって、世間体のために優しくしたら男に告白とか頭沸いてんのか?気色悪いんだよ」


エリアスは肩を上下に動かすと酷く息を乱した。過呼吸だ、このままではマズイ。今すぐに背中を擦りたくてもそんなことしたら今のが全て無駄になる仕方がない、すぐ隣の部屋にはグレイデンがいる。音を立てればきっと出てくるだろう。俺は扉を開けて弱々しいエリアス引っ張り上げると外に投げ捨てた。


「謝れねぇならもう俺の前から消えろ、不愉快でしょうがない」


「…ごめっ…ん」


最後息も絶え絶えなのにエリアスは俺に必死に謝った。何度も、何度も。そのせいでさらに呼吸が下手になっている。


「…ゴミに謝られてもやっぱスッキリしねーな、もう消えろ」


俺はそう言葉を投げ捨てると扉を閉めた。隙間から見えた、涙で顔を汚し絶望するエリアスの表情が脳裏にこびりつく。


『好感度−8 現在の好感度192』


あぁ…やっと、やっと下がったな。


「はは」


扉の奥からグレイデンの声が微かに聞こえる。これでエリアスは大丈夫だ、良かった。


良かった…。


耐えきれなくなり、その場に力なく崩れ落ちる。自分がエリアスを傷つけた癖に涙を流すなんておこがましい。乾笑も出なくなるほど乾いた喉は、声にもならずに空気が通る音だけを鳴り響かせた。

8も下がってくれた。後1年だから365日、最低でも2日で好感度を1下げれれば余裕で好感度50にとどくはずだ。

これで、これでいいはずなんだよな。

ふと、思いだしてベッドの下を探せばエリアスが俺に買ってくれた指輪がケースにしまわれてまだ輝いていた。


「よかった、傷ついてないな」


それを見るとやっぱり耐えられなくなり、涙が溢れる。エリアスが俺にくれようとした物。ケースまでリボンで飾りつけて、どんな気持ちで差し出してくれたんだろうか。

俺はケースをゆっくり閉めると、握りしめ、ただ涙を床に滲ませた―――。


◇◇◇◇


オリエン、オリエン、オリエン、オリエン、オリエン、オリエン、オリエン、オリエン、オリエン


―――オリエン。


幼少期から今までの幸せなオリエンとの記憶が次々にフラッシュバックする。そうしないと壊れてしまいそうだから。でも、またすぐに最近のオリエンを思い出して涙がこみ上げる。

オリエンに告白をしたあの日、オリエンは変わってしまった。いや、変わったのではない、本当のオリエンになったのだ。オリエンはずっと僕にも優しくしてくれる天使みたいな人だった。しかし、それは演技だったらしい、それを信じたくなくて何度も話しかけようとしたけれど、やっぱりオリエンはもうあの太陽のような笑みを向けてくれることは無かった。

僕が悪かったんだ。もう十二分に幸せだった癖に、もっと幸せになろうとしたから、オリエンもそんな僕に吐き気がして鍍金を剥がしたのだろう。

僕が欲をかかなければ、まだ幸せでいれたかもしれないのに。

あれからパーティーとして依頼は受けておらず、オリエンともちゃんとは話せていない。パーティーメンバーもエリック以外は今の僕とオリエンの空気を感じ取っているらしく静観している。あの日にグレイデンに何があったか聞かれたが僕は何も言わなかった。現実を受け止められなかったのと、まだ希望があるんじゃないかという愚かな願いがあったからだ。しかし、それは粉々に打ち砕かれた。次の日も、その次の日も、またその次の日だって、オリエンは僕への不愉快な気持ちを吐露し、僕を殴った。

でもまだ僕は諦められていない、嘘だって、嫌いじゃないってそう言ってくれるオリエンの姿を。

だから僕は懲りもせずにまたオリエンの部屋の前に来てしまった。

前に立つとつい妄想してしまう、この部屋の奥にはオリエンがいて、扉をノックすると昔みたいに僕の頭を撫でてくれる、そんな姿を。


深呼吸して扉をゆっくりと叩く。


「オリエンっ…今いいかな?」


その後に声を扉ごしに投げかける。しかし、返事が返ってくることはなかった。もしかしたら何処かに行っているのだろうか、そう思いもう一度ノックするが、やはり部屋からは物音一つしない。 

あれだけ緊張してノックをしたのに、取越苦労だったな、そう思い種を返そうとした。しかし、思い出してしまった


「指輪…」


それはオリエンへの告白と同時に渡そうと思っていた物だ。子供の頃にオリエンがくれた指輪と似たものを選んだ。喜んでくれるかと思って。その事を思い出すと、自分の右手にはめている指輪にもう一つの手を重ねた。

貰ってもらえることはなかったけど、この指輪をくれたのは少なくとも嘘じゃない。その事実だけで僕は何度でもオリエンに縋ってしまう。


「ごめん…オリエン」


どうしてもあの指輪がベッドの下で埃をかぶることになるのが嫌で、僕はオリエンの部屋の扉を音を立てないように開けた。

部屋の中はオリエンの匂いがした。泣きたくなるほど幸せになれる匂い、だけど今は少し苦しい。オリエンが帰ってきたら勝手に入ったともっと嫌われてしまうだろう。


「早くしないと…」


確かあの時手を払われてケースごと指輪をベッドの下に落としたはずだ。今のオリエンがそれをわざわざ拾うとも考えづらい。だから、僕はしゃがんでベッドの下を覗いた。

 

しかし―――


「っない」


それは僕にとって幸福だった。オリエンが拾ってくれた、そんな単純なことで体の芯が温かくなる。

もしかしたらオリエンが拾ってくれた?そんな気持ちが肥大化するのを感じ嬉しさから上がる口角を抑える。もしかしたら掃除をしに来た宿の人が拾ったのかもしれない、まだそうだと決まったわけではないのに、やっぱり胸が久しぶりに温かくなった。

今度オリエンに会ったら聞いてみよう、そう思って僕はオリエンの部屋を後にした。

自分の部屋に帰ろうと廊下を歩く。すると、僕の部屋の前に誰かいた。


目を凝らせばそこにいたのは―――オリエンだ。


「オリエンっ!」


オリエンの表情は暗いけど、僕はオリエンに会えたことが嬉しくて駆け寄った。しかし、近づきすぎると嫌がられるかもしれないから一歩距離を置く?


「どうしたの、何かあった?」


「…ただ通りがかっただけだ。どけ」


「そっか…」


オリエンはそう答えると僕を無視して自分の部屋に戻っていってしまう。胸が締め付けられるように痛い、オリエンは本当に僕のことが嫌いなのだろうか、そんな考えたくない事が頭を過ぎる。


「っ…オリエン待って」


このままじゃ、もうオリエンとまともに話せなくなる気がして、僕は何も考えずにオリエンの手首を掴んだ。昔はあんなに大きかったのに、その手は今は僕の手よりも小さい。


「っ…触んな」


オリエンは手を振りほどこうと腕を振った、その行動でハッとして自ら手を離す。これ以上拒絶されれるようになったら僕は、耐えられない。


「ごめんっ、その指輪っ…あの、ケースに入った指輪が今何処にあるか知りたくて…」


オリエンを繋ぎ止めようと言葉を紡ぐ。その言葉を聞いてオリエンは一度目を見開いた、やはり指輪を拾ったのはオリエンらしい。


「知ってる…?」


「…あぁ」


オリエンの言葉にドキッと心臓が跳ねる。それは期待してしまったからだ。つけはしなくても、持っててくれてたんじゃないかと。

オリエンは笑みを作ると手で外を指さした。


「捨てた。」


一瞬時間が止まったような感覚に陥った。「捨てた」その言葉がナイフのように僕の胸を突き刺す。持ってくれてすらなかった、捨てられてたんだ。なのに僕は喜んで、馬鹿みたいだ。


「欲しいなら外探せば?もうカラスに取られてるかもしれねぇけどな」


最後にオリエンはそう言って僕に背中を向けた。今度は呼び止めることができない、今声を出したらきっと震えてしまう。勝手に押しつけて、捨てられたら泣くなんてみっともない。みっともないけど、僕にとってそれはオリエンに、僕自身が捨てられたのと同義だった。

きっと、もうオリエンが僕に手を伸ばしてくれることは一生無いのだろう。オリエンの温かみを思い出す。あの温かさがないと僕は凍えて死んでしまう気がした。

今気づきました、14話と13話全く同じ文投稿しちゃってるって…

消したけど1話分投稿できてなかったってことなので今日あともう1話18時くらいに投稿します

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