14話 パーティー結成
アルシア王国の冒険者ギルド、それは世界でも有数の高ランクの冒険者を抱える最高峰ギルド。2年前の魔王が活発に動き出し、世界を騒がせた事件から活動をさらに活発化させ、数えられない数の人々がパーティーを組み、魔王討伐の資格を得て勇者パーティーになるべく日々奮闘している場所。
そこに俺達も心を躍らせ、勇者パーティーの第一歩をふむべくパーティーを組みに来た。
「早く依頼受けようぜ!!」
「ちょ、今パーティー登録してるから待てって」
金髪が肩にかかる程長い髪をざっくり結んだ男が俺を急かす。依頼を受けたくて受けたくてしょうがないのだろう、かく言う俺も胸が高鳴っている。
「最後にこちらに血を垂らしてください」
受付の女性がパーティーの登録書を俺に差し出し微笑む。
「はい…」
と言ったのはいいがどうやって血を取ればいいのだろう。やっぱり…指を歯で噛むのか…?普通に痛そうで嫌なんだけど。
「どうかしたの?」
硬直した俺を不思議そうに見るのは、誰もが振り向く程の美しさを放つ白髪ロングと俺なんかより立派な腹筋をもつ女性。
「えっと…」
指を噛むのが痛そうで怖いです、なんて言えるわけない。俺は好きな人の前では見栄を張りたい男なのだ。
「あ、噛むの怖いのぉ?うちのリーダーはか弱いなぁ〜」
俺の見栄をさっそく剥がした緑髪のくそ僧侶はそう言うと俺の肩に顎を乗せた。耳につけているピアスが当たって擽ったい
「うっせーな!!どけ!!」
「針をご用意致しますか?」
受付の女性が一連の様子を見て困っている。本当すみません…。
「お願いします…」
すぐ後の棚から一本の針を取り出し俺に手渡してくれた。礼を言って覚悟を決めると俺は指に針を刺し、血を登録書につける、すると
「登録完了です!」
と受付の女性は笑った。
「やってやったぜ…!」
俺を煽った男にドヤ顔で言うが男は目を細めた。
「はいはい、こっちに手出して」
大人しく手を差し出せば瞬時に小さな穴は消え去った、ギフトで回復したのだろう。このくらいの傷ならほっとけばいいのに。
「サンキュ…」
「はーい」
男はゆっくりと俺の髪を撫でた、子供扱いされている気がする。もう十五歳…この世界じゃ大人の歳なのだが。
まぁ、仕方がないのか…?俺が此奴と会ったのは十歳の時だからまだ認識が子供のまま変わっていないのだろう。
「パーティー名はどうなさいますか?」
最後に受付の女性が首を傾げた。
これは昔からずっと決めている名前がある。だから俺は堂々と言い放つ。
「リエナイドで!!」
「かしこまりました、これからの活躍期待しています!」
かっこいい響きだろう!前世でもよくゲームでチームを組むときに使っていた。
「終わったか!!早く行こうぜ!!!」
俺が昔の記憶に浸っていると、待てができない男がギルドから駆け出ようとする。まだ依頼を受注してないんだから依頼を受けれるはずがないのに。
「あ、待ちなさいっ…」
それを美しい女性はハッとして止めるが、周りをろくに見ていないせいで忠告は虚しく、大きな人影にぶつかった。
「悪いっ…」
「邪魔」
謝罪を無視して扉からゆっくりと姿を現したのは黒髪と黒目をフードで隠す青年…
「オリエン!調整出来たよ!!」
「良かったなぁ…」
それは、この漫画の主人公、エリアスだ。低かった背丈はいつの間にか俺を越して、そのせいで可愛い弟感は消えてしまった。
そんなエリアスは、アルシア王国に着くやいな別行動で俺が昔渡した指輪の大きさを調節してもらいに行っていた。せっかくのパーティー結成日なんだから一緒に来ないかと誘ったが、どうやら調整ができる今日を本当に待っていたらしい。
ググレ村には指輪の幅を調整してくれる場所なんて無いせいで、指にはまらなくなった時に絶望していたのを思い出す。新しい指輪くらい買ってやるのに、物持ちが良いやつだ。
「おい!!邪魔は無いだろ!!オリエンの前でだけ尻尾振りやがって!!」
エリックはエリアスの態度に腹を立て、エリアスの襟を掴んだ。
「やめてくれない?服が伸びる」
「お前なぁ!!」
あぁ、また始まった、エリックとエリアスの喧嘩…
これは、10歳の頃から収まる気配を立てずに今まで続いている。本当…いつかは治っていてほしいものだ。
「はぁ…二人とも元気ね」
マチルダちゃんはため息をつくとこの景色をボーと見つめた。マチルダちゃんも10歳の頃から何度もググレ村に来ていたから、この様子に見慣れてしまっている。
「二人ともやめろって」
ギルドでパーティーを、組んだ初日に乱闘なんて笑い話にもならない。仕方がなく2人に近づくと俺は間に立った。
「今回はエリックが突っかかってきたからだよ…?」
エリアスは怒られた犬のように目をウルウルとさせ、エリックを指さす。
「そうだなーエリック謝れよー」
「嘘だろっ!!エリアスが謝ったのに邪魔て言ってきたんだぞ!!」
今度はエリックが尻尾を垂らしてエリアスを指差した。
「そうだなーエリアス謝れよー」
「ええっ…!」
俺は喧嘩両成敗と言う言葉が嫌いだが、この二人に関してはそれでいいと随分前に学んだ…じゃないと面倒だからな。
「やっと依頼受けれるようになったんだから大人しくしてろよ、まじで」
「はい…」
「はい!」
エリアスの怒られた忠犬のような声に続きエリックの元気な返事が返ってくる。それを聞くとつい、笑ってしまった。本当に此奴らは変わらない。
「何の依頼を受けるの?」
マチルダちゃんが張り出されている依頼をいくつか見る。依頼の難易度はA〜Eに分けられていて、冒険者は自分と同じ級か一つ上の級の物しか受けられない。
グレイデン以外は冒険者登録したてのE級の俺達は精々薬草集めやE級の魔物討伐しか許されない。
「んー、めぼしいのないなぁ」
正直言おう、俺達はかなり強い。
【読心】のギフトで相手の攻撃を予測しながら己のフィジカルでぶん殴るマチルダちゃん。
【怪力】のギフトでもとのフィジカルも合わさり、力だけではA級にも届くエリック。
【パーフェクトヒール】のギフトでどんな傷も一瞬で治すグレイデン。
【剣技】のギフトと日々の特訓の成果で中級程度の魔法やまぁまぁなフィジカルを手に入れたオールラウンダーな俺。
そして、漫画ではこの時点ではまだ低級魔法しか使えないはずなのだが…何故か基礎魔法の上級魔法を全部使っている意味がわらかないエリアス。
チート無双漫画ですか?と聞きたくなるほどの面子だ。
E級の魔物を狩るのもいいが、正直それではすぐに終わってしまう気がする…。
となれば一つ上の級の依頼だ。しかし、見てみれば10歳のエリックが吹っ飛ばした猪の魔物の討伐くらいしかない。上がっていたテンションが下がる、初心者パーティーなのだから当たり前だが、拍子抜けだ。
「そういえばグレイデンのランク幾つなの?高ランクが一人いればもう少し高めのランクも受けれるはずよ」
俺がどの依頼を受けるか悩んでいるのを見ると、マチルダちゃんはニコニコと後で佇む男にそう聞いた。
「ん?俺は確か…A級だったかな」
当然のような声色で話すせいで一度流してしまう
「そっかそっか、そのくらいか…」そう口から出たが、言葉の意味を理解すると目玉が飛び出る。俺だけじゃない、エリックもマチルダちゃんもエリアスも、反応はそれぞれだが驚いている。俺以外もグレイデンの級を知っている人はいなかったらしい。
「はっ、嘘だろ!!お前ずっと司祭しかしてなかったはずだろ!!」
グレイデンと言えば薄っぺらい笑みで人々にパーフェストの伝説を語っていたり、怪我や病気を治しているイメージしかない。それに、そのイメージに間違いはないはずだ。
「世界一の僧侶で世界一の司祭だよ?」
話された理由は筋が通っていない、「だからなんだよ」そう言いたくなる。でも、もうグレイデンに関しては考えたら負けなのだ。俺は崩れた前髪を適当に直すと依頼を確認した。
A級のグレイデンがいるということは俺達は最高C級の依頼を受けられるということだ。めぼしいのものを見つけようと右から順に見ていく。
ダンジョンの中層までの攻略、C級の魔物ブラックベアの討伐、D級の魔物ヘイトラビットの大量発生の駆除。
この中だと面白そうなのはダンジョンの中層までの攻略だろうか。ダンジョンは言わば魔物が沢山湧く洞窟。低層から始まり中層、高層と大まかに出る魔物の強さによって分けられている。
もしも高層でまだ難しいと思ったら最悪帰還すればいい、安全面でも面白さでもこれが一番良さそうだ。そう決めると俺は、壁に適当に貼られている依頼用紙を剥がした。
「よしっ!初仕事行くぞ!!」
◇◇◇◇
『お主、自分の使命を忘れていないか?』
それはすぐに低層が終わりダンジョンの中層に着いた時に頭の中に響いた。
(……はは)
『現実逃避はそろそろやめろ』
(…)
それは今は出来ない、仕方がないだろう、まるで異世界の冒険漫画のようなひと時なのだから。初の仕事、初のダンジョンなのだ、テンションの一つや二つも上がるというもの。ほら見ろ、目の前では中層階のボス、デビルスピヤーがブンブンと飛び回っている。見た目は簡単に言えば真っ黒な蜂、大きさは田舎の一軒家くらいだろうか、それがジェット機を思わせる速さで広い空洞を移動する。
「【怪力】くらえ!!」
エリックが地面にクレータを作り跳躍する。そして、目に見えぬほどのスピードでデビルスピヤーの上まで上がると体に踵落としをお見舞いした。デビルスピヤーは貫かれはしないものの、地面に叩き落され、お得意のスピードの源である羽が片方が綺麗に外れる。
「そこね…」
その隙を逃さないのはマチルダちゃんだ。【読心】で心を読み、今からデビルスピヤーがすることを予測すると、針から出される毒をすべて避け近づき、大剣を目玉に突き刺した。
「【パーフェクトウォーター】」
視界を奪えばエリアスの上級水魔法でデビルスピヤーは抵抗する暇もなく、胸に言葉通り大きな穴がぽっかりと空いた。
「俺の仕事なしかよ…」
ワクワクしていたのに俺に仕事が回ってくることはなかった。
俺、リーダーなのに…
「はぁ…でも依頼完了だな」
落ち込みつつ依頼の内容を確認する、中層のまだ発見されていない部屋の開拓。そして、中層ボスの討伐。
うむ…見落としはなさそうだ。
その後ダンジョンから脱出をし、俺達はダンジョンがあった森をそのまま引き返した。ものの1時間で終わらせてしまったが、今も鞄から飛び出そうなほど詰めた魔物の死によって形成される魔石はもう拾えそうにないので大人しく帰る。これを売れば初給料の獲得だ。
ボスは関与できなかったけど他の魔物は倒せたし、とても楽しい初依頼だった。
『お主はことの緊急性を理解しているのか?』
満足してエリアスの隣を歩いていると、威圧的な声が頭の中に煩く響く。そろそろ声をかけられると思っていたところだ。
パーフェストはいつも文句を言うがこれは俺だけの責任じゃないと思う。丹精込めて嫌わせる、そう言っていたのに実現出来ないポンコツ女神にも非があるのではないだろうか。
『それはお主が虐めたくないだの暴力は嫌だの文句を言うからだろうが』
文句を言っているとパーフェストにやはり聞かれていた。マチルダちゃんはまだギフトを使っている時以外は心を読まれないから良いが、このクソ女神はどんな時でも場所でも聞いてくる、プライバシーという言葉を覚えてほしいものだ。
(当たり前だろー、女神ならもっと嫌われるための秘策とかあれよー!!)
『はぁ…』
パーフェストはわざと大きなため息をつく、何度も、何度も。
(煩いな…わかってる、追放する1年後までに好感度を50まで下げれば良いんだろ?)
『あぁ。そして2年後には勇者パーティーの発表だ』
俺が流し見していたせいで覚えていなかった情報や、場面などは大体パーフェストに教わった。その一つが追放時期、そしてもう一つが二年後の勇者パーティーの発表だ。五年に一度、魔王討伐へ赴くパーティーが全ギルドの中で一組だけ決まるのだ。そして、今年それに選ばれるのは、追放された後、真の仲間たちと出会ったエリアスのパーティーだ。
(はいはい…)
テンションが下がる事を言う。今まさに、こんなに楽しく冒険者をやっているのに。一応言っておくがこれでも嫌われる為に今まで本当に色々なことをしてきたつもりだ。パシリは勿論、平気で嘘をついてみたり、ツッコミの叩きを強にしてみたり、エリアスと何週間も話さないようにしたこともあった。それでもエリアスの好感度は1も下がらない、ただ傷ついているだけだ。その傷ついた顔を見ると毎回罪悪感にやられる。エリアスを闇落ちさせる前に俺が闇落ちしそうだ。
「帰ったら初仕事の祝いに酒飲もうぜ!」
パーフェストに下げられたテンションのなか、のそのそと歩いているとエリックが森に響く声で言った。
「いいわね」
「賛成〜」
マチルダちゃんもグレイデンもそれに笑顔で首を縦に振った。
俺も楽しみがあると思うとテンションを持ち直せる!勿論返事はYESだ!!
「よ〜し!!飲むぞー!!」
だから頭の中で喋るパーフェストを無視して拳を空にあげた。
人生たまには息抜きが大切なのだ!!
最後まで読んでくれてありがとうございます!!




