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風と静寂  作者: 佐竹武夫
第十六章
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第十六章 第三節

ガチャ ガチャ ガチャ


腰に提げたメッサーを鳴らしながら、私は、気のやさしい先輩のエリアスとともに、朝日が少し上りかけた西門を、小走りで目指す。表通りに出た時に、地域統括所の前を通る。ここはティモの仕事場。周囲はすでに働きに出る人々が、重い足取りで自らの仕事場へ向かっている。そこを少し過ぎると、右手側に山に向かう坂道が見えてくる。登っていくと高級住宅地があり、以前私がルドを追い、こっそり自宅の中をのぞいていた場所に着く。さらに西に走っていると、左手に細い路地。私はこの奥でキャステルの工作員、ヴァルド・レイヴンハルトをめった刺しにした。もう随分と前の話だ・・・・


ガチャ ガチャ ガチャ


さらに西へ進むと、同じく左手に奥まった路地に向かう道が見える。この先には『青の谷』がある。ついこの間まで、長い期間お世話になったコミュニティである。エリナさんと リシアは元気にやっているだろうか・・・・


ガチャ ガチャ ガチャ


この街は、中心街から大きく西に広がっている。そのため地域統括所から西門だと、随分と距離がある。私たちが移動している道から離れた右手側に、三階立ての黄色い建物が見える。篝火がないので、この時間は誰もいないのではないか・・・・私はここでドゥペルという審議官の下で働いていた。やっていることはお茶を入れるだけだが、非常に特殊な仕事であった。彼はあれから・・・


「!・・・」


なんと建物の前にドゥペル審議官!しかも目が合った!


「ビル!」


遠目からドゥペル審議官が手を上げ、こちらに声をかけてきた!


なぜ、こんな朝早く?もともと夕方から日が出る前が、彼の仕事時間。夜な夜な怪しい部屋で、審議官の名のもとに、罪人らしき者をいたぶって殺していた。日が出る前に必ず自宅に戻っていた。なのになぜ⁈——————いや、私が彼に助言をしたのであった。


「裁くべき人は他にいます。その責務にないあなたが、それを担わなくても良いのでは・・・?」

——————と


要は、そんな荒んだ人殺しはやめろと——————


どうみても、彼は今出勤した状態みたいだった。仕事終えて、瞳の奥が真っ黒な点に染まっている、あの日の彼ではない。正反対の「今日もいい天気になりそうだ、よし、仕事頑張るぞ」的であった。彼の表情を見る限り、あの怪しい部屋自体がなくなったのかもしれない・・・・


私は無視するわけにもいかず、大きく頭を下げ「すみません、急いでいるので」という、わざとらしい態度をとりながら、そのまま西門に向かった・・・・とはいかず、やはりエリアス先輩が目を見開いた表情で、私に熱の籠った質問をしてきた。


「ビ、ビルくん?・・・さっきのドゥペル審議官じゃない?・・し、知り合いなの⁈」

「え、あ、まあ・・・少し仕事の関わりがあることがありまして」


私は必要以上に、丁寧な言葉を使うよう心がける。話を深掘りされないように願いつつ。「急がないといけないですよね」という態度を暗に示しながら走り続ける。



「あそこだよ」


エリアス先輩が指さす。


「あの・・・低い柱が二本あるところ?」

「ははは・・とても門には見えないだろ。これでも昔は立派な門だったんだよ」

「ここら辺は私も何度か通ったことがあったのですが・・・あれが門だと気づきませんでした」


なんだかここまで丁寧な言葉で接してきた分、急にタメ口になるのもおかしいと思い、この人に対してはこの口調で通そうと思った。


「あれ・・・夜隊の人たち居ない・・・来るのが遅かったから先に帰っちゃったのかも」

「そんなことあるんですか?」

「まあ、時々・・・いや、たまにあるかな」

「で、これからどうするんです?」


私は胸の高さぐらいしかない柱を見つめて「これが門だったなんで気づくはずない」と片側で考えながら、もう片側でエリアス先輩に質問した。


「ここからずっと巡回をして行くんだ。ほら、西の水車が疎らにあるところがあるだろ」


先輩は丁寧に右手の指で、その方向を指し示す。


「西はあの辺りまで。それからずっと・・・」


そのまま指を南に向け、さらに東の方向まで向ける。


「あのあたりまでずっと巡回するんだ」


何だかどこを差し示しているのかがわからない。おそらくこの人は、それがどこを正確に指しているのか私が把握してなくても、怒ることはないであろう。


「何となく分かりました」


六割ぐらいの納得の意を示す。エリアス先輩はすぐに西の方に歩きはじめた。おそらく彼の日課なのであろう。自然と足が出るのが、私の存在に対して強く緊張感を示してない証拠だ。ひとまずその方が良いと思いながら、先輩の後ろを付いて行く。


我々とすれ違う人々。おそらくこれから町の中心部に向かうのであろう。三割ぐらいは仕事に向かうのだろうが、他はよくわからない。残りの全てが旅人とは言い切れないだろう。私は『黄色い三階建ての建物』で幾期間か労働していたが、日の昇る時間帯には大概床についていた。つまりこの道は何度も通ったが、この景色に関してはほとんど見たことがなかった。


うお  お  う


「?・・・エリアスさん、何か聞こえませんでした?」

「え、あ・・うんん」


ずいぶん広めの道(というよりも周囲に建物がない)の右手側、奥の水車小屋のほうから声が聞こえた。それに対しエリアス先輩は、随分と歯切れの悪い返事をした。「何か知ってるな」私の直感がそう告げる。先輩足元を見ると、仕事として行かなければいけない『義務』と、不安な対象物として行きたくない『感情』が交差している足取りだ。でもその様子を見る限り『放置する』という選択肢はないのではないか・・・・私はそう思い、先輩の『義務』の方の背中を押すこととした。


「エリアスさん、行きましょう」



手前の用水路を二本越え、茶色い屋根と白い壁の水車小屋に近づく。建物の中ではなく、彼らは外で揉めていた。5対5くらいである。


「言い逃れする気か」

「言いがかりだっていうのがわからないのかよ」


連中はお互い、相手方に睨みを利かす。もう既に声をかけられる距離に来ているが、エリアスさんは『何と言っていいのか分からない』表情をしている。我々の仕事は治安維持のはず。どうもこの人は、この職業に向いているのだろうか?


「どうした?何があった?」


私は少しか遠目からかけ声をかけた。その瞬間、エリアス先輩から背中を突かれた。何かと思って振り向くと、メッサーを鞘のままはずし、取り付け用のベルトを鍔のところに巻いていた。一瞬何だか分からなかったが、それを私に注目させるように突き出したので


「ああ・・」


と思わず声が出た。一般的に住民に対して、安易に刀を抜くことは良いことではない。そのため治安にはパイクを一般的に使う。槍先で攻撃をするのではなく、長い棒のところで相手を押さえつけたり、持ち手を逆にしたりして、非武装の相手に致命傷を負わないように用いるのである。しかしそういう長物を使わずに、刃の部分と、木でできたクリップ部分で構成されるこのメッサーを使用しているのは、なぜだろうと思っていたが・・・彼らに対しては、どうも鞘をつけたまま武器として使うらしい。


「ダルガーは来るな、これは俺たちの問題だ!」

向かって右側にいた集団の一人が、私たちに忌避するように強く促してきた。しかし私は、聞いたこともない単語に引っかかってしまった。首を少し後ろに向け先輩に聞く。


「『ダルガー』?」

「私たちのことですよ。治安兵のこと。町の人たちはダルガーって呼ぶんです」


後で知ったことだが、ここよりに西の国で都市治安官の事を示す言葉らしい。


「ビルくんは本当に、ここに来てあまり経ってないんですね」


まあ・・・と、思いつつ、自分の職務に戻る。


「いや、なんかあんたたち喧嘩しそうだから。そういうのを止めるのがこちらの仕事みたいだし」


私はそう言うと、またちらりとだけ、エリアス先輩の方を見る。彼は瞼だけで頷く。


「こいつら、俺たちの水車を壊して回ってんだ」

「そんなことするはずねえだろ、こっちだってそんな暇じゃないんだ」

「そうじゃなきゃついこの間直したのにまた壊れる訳がねえ、第一以前はお前らがやったじゃないか」

「あの時はやったかもしれないが、こいつに関して俺たちは知らねえ」


どうも向かって右側の集団が、向かって左側の集団に自分たちの水車を壊されたと言っているらしい。しかもその揉め事は今発生したことではなく、ずいぶん前からゴタゴタして続いているのだと思われる。私はそのことをエリアス先輩が知っているのか、またちらりと目線を送ってみた。少し困ったような眉をする。どうも知っているらしい。


「ちょっと私に見せてくれ」


そう言い、鞘のついたメッサーを左右に振りながら、両軍の間に割って進み、水車小屋の入り口へと向かった。しかし目的は、横目でちらりと彼らを見て、どんな集団かその風貌と様子から、情報を瞬時に収集しようとした。一方は農民だろう。手に持っている鍬と服の土汚れから安易に推測できる。また、首元だけが少し日焼けした状態なのが、彼らの特徴とも言える。もう一方に目を移すと、おそらく川漁師の集団であろう。まず一瞬でわかるのが、体に棲みついた生臭い匂いである。ほんの一時期だが、南の海からこのヘルヒンの町まで魚を運ぶ仕事をしていた。彼らは目立った得物は持っていないが、腰にある小さなナイフは網の修理に使うものだ。それに袖や裾がまくりやすい服であることも特徴だ。あと漁師の方が荒っぽい・・・・


私が水車を見てわかるはずがない。そこを見ているふりをして、彼らの話を聞くだけだ。


「さっき『以前はお前らがやった』的なことを言ってたけど・・・・」


止まっている水車を見るふりをして質問を投げる。


「聞いてくれよ!」

「あれは違うんだよ!」


両軍が同時に話す。どちらも、不満はかなり溜まっているらしい。とにかくこの全員が喧嘩をし始めると、我々二人では止めることは非常に難しい。


この世界は『器』『法則』『傾き』——————


シルバー先生の教えが一瞬頭をよぎり


『今』を見る——————


「青の谷」で体にしみ込んだものがにじみ出る


「あれだ・・・・なんか随分と互いに不満があるみたいだな、水車のことは置いといて」


私は水車に背を向け彼らの顔を見渡す。


「え・・・」

「あ・・・・」


両軍とも一瞬目をぱちくりさせ、私を見たかと思えば、ちらりとお互いを見る。私はどうであろうと『揉め事が大きくなる事を避ける』それだけを基準に動く。


「水車のことに関しては知り合いがいるから、その人に確認してもらう。それとは別にあんた達が不満に思っていることをとりあえず聞く。ただし・・・」


シャ——————


私はメッサーを鞘から抜き、銀色にひかる刃筋を見せる。


「暴力沙汰はするな」

「・・・・・・」


また両軍ともちらりとお互いを見る。いい傾向だ。私のメッサーを見て両軍の熱が少し引いている。どっちの誰が話しはじめるか、静かな牽制をしている。ここは私が少し補助を入れてあげるべきだろう。


「さっきも言ったように、前に一度こっち側が水車に何かやったんだろう」


そういいながらメッサーの刃先を漁師側に向ける。しかし彼らが何かを答える前に、私はすぐに話を続ける。


「でも今の口ぶりじゃ、そこが揉め始めた原因じゃないんだろ?」


薄く開いていた彼らの口が、また閉じる。


よし・・・・もうだいぶお互いの熱量が下がった。


「去年の夏から、取れる魚の量が減り始めた」


漁師側で、髪の毛がギザギザはねている『とげとげ男』が、冷静な抑えた感じで口を開いた。ゆっくりと二歩こちらの方に出てくる。ひょっとするとこの男は、この揉め事での終始一貫、冷静だったのかもしれない。喧嘩を売られ、血の気の多い仲間連中がいきり立った。だがどこかで一歩引いて見ており、この流れが自分の思いのところに寄るまで、タイミングを待っていたのかもしれない。


「水車と魚が関係があると?」


私は自らの推論を挟まず『とげとげ男』の持論に集中することにした。


「ここ最近・・・いや、夏あたりに急激に水車の数が増えた。アケル川の水の量が減った。随分上流から、水を引っ張ってきているからだ」

「それに!」


別のせっかちそうな男が、口をさしはさむ。


「水車の音がうるさい、あれじゃあ魚が逃げちまう」


ちらりとだけ農民側の方を見る


「・・・・・・・」


なるほど、どこかで自分たちにも『咎』があるような顔をしている。だがそれを言ってしまえば、色々不都合で困ってしまうという顔つきだ。


「まあ、水車の壊れていることも魚が取れないことも私にはわからない。だが問題が発生しているみたいなら、地域統括所に相談してみる・・」

「言ったさ、去年に」


『とげとげ男』が私の言葉を遮るように強い口調で言った。


「・・・・・」


私は少し黙った後、ちらりとエリアス先輩を見る。目線が下に行く。『とげとげ男』はその先輩に向かって言葉を続ける。


「俺たちは以前同じように、このことについてそこの人に言ったことがあったが、結局何もなってない!あんたが見たことがない役人だったから、今このことを言ったんだ」


「役人じゃないが・・・」と思いつつ、私は再びエリアス先輩を見る。一度目線が合うと、再び逸らすように目線は下へと移った。この先輩はいい先輩だ。おそらく事情があるんだろう・・・・どうするべきだ。ここは私が仕切って、先輩に別のところを回ってもらうか・・・先輩と方がつくまでここに二人で留まって・・・でもそれだと、どれだけ時間がかかるかわからない・・・


「僕が話を聞くよ」


エリアス先輩はそう言った。おそらく先輩は一度報告をあげたが、あの隊長に無視されたんだろう。それからどうしようもなく放置していた・・・・先輩はそのことに対して負い目を感じて・・・・それだけじゃない。自分が私を引っ張っていかなきゃいけないのに・・・その想いもあるのではないか。エリアス先輩の手元を見る。目は口ほどに物をいうが、手も以外と言う。焦り、力身、怠惰・・・・・先輩の手にあえて名前をつけるのであれば『決意』であろう・・・・・


「あ、はい」


私はこれまで接してきたように、尊敬の口調にポンと置いた。その瞬間、周囲が嫌な空気を発した。私に仕切って欲しかったんだろう。だがここで、先輩の顔を潰すわけにはいかない。そこは面倒くさいかもしれないがあきらめてくれ。


「ビルくんは先ほど言ったあたりを順次巡回して。後で追いかけるから」


笑顔を先輩が見せる。周囲に対してではない。私に対してだ・・・・そうか、今朝のことに関しての感謝だ。本来もっと時間を要するであったことに対して、エリアス先輩は私に感謝を示している・・・・・


いい人すぎるな・・・・・


「分かりました、エリアスさん。西の方から回ってますんで」


私はそういうと、再び二つの集団の間を割って通りながら、腰にメッサーを戻し、もっと西の方へと向かった。とにかく隊長に(まだ名前も知らないが)文句を言われる要因を一つでもつぶしておこう。




少し行くと、すぐに家がなくなってくる。低い昔の石でできた塀が、ところどころに見える。ずいぶん苔が生えていて、いつの時代のものか・・・そう。この奥が、リシアに私が見つけてもらった森。冬に見ると、その様子も随分変わって見える。夏には見えなかった花がいくつかある。冬でも咲いているのか・・・・彼女はこのあたりにまだ取りに来ているのだろうか・・・・


そこから戻るように南側を回る。アケル川の下流の方・・・だと思う。先ほど『アケル川』のワードが出てきたが、確信がないのに知っているフリをした。北から流れていてこちらに曲がりくねってあるのは、この川しかないと思った。おそらく当たっている。そこで質問することは、流れ的に良くなかったのでやらなかった。


「昔の水量を知らないからなぁ・・・」


そんな事をつぶやきながらずっと戻ってきて、先ほどの小屋を過ぎたあたりで、ハタと思った。


おそい——————


もうエリアス先輩が出て来てもいいはずだ。私は西側から回ると明言した。これだけ見通しがよく、人も疎らなので、確実に先輩を見過ごすことはない。私は小屋に走った。


ガン!


ちょうど近くに着いたときに、エリアス先輩が小屋のドアから吹き飛んできた。


「!」


私が駆け寄ろうとした瞬間、足元に何か転がった。


「歯だ・・・・」


それを拾い上げると、エリアス先輩のところに駆け寄る。


「なんだ!何をやってる!!」


状況は分からないが、この事態を制止しないと——————


「!・・・」


そこに居る連中が一斉に振り向く。


「く・・・・」

「エリアスさん大丈夫ですか⁉何やってんだお前たち!治安兵に手を出していいと思ってるのか!」


少し強めに『決まり文句』を言う。この乱れた世の中、揉め事で歯の一本ぐらいは飛ぶが、治安兵に手を出したのはナメている証拠だ。この一言で連中が一歩引けば、それ以上は必要ない。だが、ごつい体の男が————


「コイツがちゃんとしねーから俺たちが」


シャ!


メッサーを抜く!今、口を開けた漁師の首元に突きつける。今の私の目は、ヴァルドをめった刺しにした目をしているだろう。


「パレロ!やめろ!」


『とげとげ男』が『ごつい体の男』の肩引き寄せる。たぶん『とげとげ男』には間違いなく、私が本気で殺しにきていることがわかったのだろう。


「ビルくん・・・僕は大丈夫だよ・・・」


先輩が口元の血を拭いながら立ち上がる。いや、先輩——————今、『嵌めるべき論の石板』はそれではないですよ。


大事なのは


自己矛盾がないか、物事の順番を間違えてないか、そして、立ち位置を間違えてないか


シルバー先生の言葉——————


この連中は自分たちの立場、我々の立場が『力学』という盤面に配置されていない


『今私がやるべきこと。今を見る』


頭の中で、セドリックの顔が横切る——————


「・・・・・・エリアスさん、後で話を聞きます。両陣が今これ以上揉めることはないでしょうから、ここは一旦戻りましょう」


「なんだとてめぇ」


おそらくこのパレロと呼ばれた男が、エリアス先輩を殴ったのだろう。引っ込みがつかないのか、さらに突っかかってきた。


——————死にたいのか


私がそれを頭に過らせた瞬間


「パレロ!いい加減にしろ!」


『とげとげ男』がすさまじい声で一喝するした。そして、


間を置かず、

ゆっくりと、

私の方を見た。


「あんた以前、北の谷に死体を運んでいたよな」


ザワ


周囲に一瞬のどよめきが起きる。その目に明らかな、怯えの色が出た。


「・・・・・・」


パレロの表情が変わる。二度私と『とげとげ男』を交互に見た。『とげとげ男』は私から視線を外さない。


「黄色の建物から・・・・・・・・・」


私は否定の言葉を、態度を、表情をしなかった。明らかにそれが、何を示しているのか分かるのであろう。明確にパレロの肩から攻撃的な緊張が緩み、半歩引いた。


「エリアスさん、行きましょう。他も回らないと、あの隊長に何を言われるかわからないですよね」


私は彼らに背中を向け、歩き始める。


彼らが私を見続けているのは、随分と遠くなるまで感じた。







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