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風と静寂  作者: 佐竹武夫
第十四章
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第十四章 第十三節

これは私の何かの勘違いかもしれない。たぶんそのはず——————

私は先生の方を見ないまま、私の中で先生の『あの顔』を打ち消した。


カタ


先生はおもむろに立ち上がり、ゆっくりと中央に向かわれた。


かつかつ


ゆっくりと杖を着きながら、我々のテーブルの前で停まる。相手であるグラウも、ずっと組んでいた腕を外して、立ち上る。床についた手は、その腕の太さがより際立ち、身を起こすと胸板の厚さが光を受け、影を濃くする。


ど・・・・


先ほど私が、わざと足音を立てたのは違う。グラウ本人の体の重さと体幹の強さが石の床に軋みを生む。


ど・・・

ど・・・・


中央の方に出てきた。シルバー先生と向かい合うと、まるで倍の大きさがあるように見える。しかし、私から見えるシルバー先生の背中は、その相手に何の引けも取ってない、豪放と静寂のようである。司会が今まで同様、お題目を決めるための箱を持って、中央のステージにのぼってきた。すると突然、グラウはその箱を奪い取り、ステージの外へと放り投げた。


がらん、がらん!


「なんだ・・・」「どうした・・・?」会場は一斉にざわついた。しかしそのざわつきは、不測の事態が起きたことに対する不安というよりも、また『何かいい見世物を始めてくれる』という期待を込めたざわつきであった。


「あ・・・あ・・・」


司会にとってこの自体が、予測されたものか仕組まれたものか分からない。しかし、かなりの動揺があり、その行為を注意するわけでも、箱を拾いに行くわけでもなく、つまずくようにステージを降りていき、自分の机に再び座った。ステージの下の床には、箱と共に札がいくつか転がっている。


シルバー先生は—————— 微動だにしない


「なぁ、あんた・・・」


グラウがさっそく話し始めた。その口調はまるで、酒場の酔った男が話をする・・・いや違う、強く怒りを持った、怒りを抑えた父親が、ぼんくら息子に説教をするような感じだ。


「俺がこのまま何のひねりもなく、あんたと話をすると思っちゃいないだろう」


私はこの時点で、グラウの言わんとすることについて、まるで輪郭が見えていなかった。真っ当にお題目で、話し合うということはないことはわかる。


先生は—————— 全く反応示さない


もちろん先生の姿は背中しか見えないし、再三私が明示しているように、両者は頭からすっぽりかぶったマスクをつけている。お互いに目の穴があいただけの状態である。(それは我々も同様であるが)それに対しグラウは自らの感情を、マスク越しにも隠そうとしない。この男の怒りはどこから来ているのか?


バッ!


グラウは片手を上げた。


ザザザザ!


音がした方を向くと、なんとそこには、獣のマスクを被った連中が立ち上がっていた。そして手に仕込み刀。観客席の最後列を占拠している。 400人の入る会場に対して50人はいるのではないか⁉


「え・・・」「なに・・?」「なんなんだ、こいつらは」会場が極度の緊張に包まれる。獣のマスク連中は、明らかに観客達を囲い込み、 安易には外に出せない体制を整えている。先生!これは⁉

先生の背中を見る。しかし、やはり全く動いていない。いやそれどころか、この会場は取り囲まれている状況を見てもいないのかもしれない。


「え、あ、ええ、これは⁉」


司会がずいぶん慌てている。完全に想定外、予想外、約束と違うといった表情をしている。あなたが彼らと何の約束をかわしたか知らないが、『サソリとは交渉してはいけない』これは鉄則である。この司会の男はすでに毒針を食らい、再起は難しいだろう。


バタバタバタ!


槍を持った警備ものが場内に入ってきた。明らかに異常を感じたのであろう。


バッ!


グラウが今度、逆の手を上げた。


ガタ!


大きな音を立てて、誰か椅子から無理やり立たされた。一同が注目する。そこには、一般の聴衆とは明らかに違う衣服を身にまとった、豪華なマスクをした少し小太りの男—————— そう、おそらくこの街ヘルヒンの領主。お忍び的に来ているが、鉄環の誓団たちには当然バレバレだったようだ。ヘルヒンの領主は、後ろ腕をひねられ持ち上げられている。


「ぐ・・・な、何をする・・・」


護衛に就いていた両端の人物も、同じように腕を捻られ、剣を取られているようである。この状態になれば、場内に入ってきた警備の兵たちも、急に手出しが出来なくなってしまった。どういうことだ・・・これだけの大きな仕掛けがあったというのに、私は全く気付かなかったのか?これだけの人数をどうやって・・・統率を取るのも難しいはず・・・それに武器はどうやって持ち込んだ?そんなに警備が薄かったのか?それとも、ほかの討論の最中に持ち込み、配ったのか?


グラウは、万事が自分の思うところで動いている事を確信したところで、会場を見渡す。この男の不思議なところは、ほとんどシルバー先生のことを気にしてないことだ。よもや本当に、討論などする気はないのだろうか?今ここまでの動きを見ても、この場内で反乱が起きただけに見えてしまう。いや、外部からの侵入者に、街の人と領主が人質にとられただけだ。


「さあ・・・俺の討論相手に登場してもらおうか」


そういうとステージの下の方を見た。そこにはまた別の男が、 2人の獣のマスクをした人物に囲まれたまま、ステージへと向かっていた。明らかに連行されているような状態である。そしてその人物は・・・ルドであった。我々にこの討論会に出るように頼みに来た人物・・・顔面は蒼白、斜め下向き、唇が増えている。


「俺と話をするのはこの男だ」


目まぐるしく目の前で物事がおき、私でさえも頭の中で収集がつかない。聴衆たちは尚更であろう。会場のざわめきは、静かなる大混乱とゆってよい。


「あれは・・・ルドさんじゃないか・・・?」

「地域統括所の人だ・・・」

「ルド・ヴァン=ミル・・・毎年この討論に出ていた人じゃないか・・・」


場内に泥のような不安が蔓延する。ざわめきの中、ルドはマスクをせずその顔を晒したまま、中央のステージにあげさせられた。怒りの表情を変えないが、グラブはそれでもそれなりに準備が整ったという表情をして、ようやくシルバー先生の方に顔を向けた。そして低い声で、非常に強制力のある声で言葉を放った。


「俺はこの男と話をする。つまりあんたは席に戻っていい」


え?・・・

先生・・・・先生はこの状態をどう納めるのか、先生はこのような事態になることを事前に知っていたのか?・・・・私だったら——————思考を巡らすが、簡単ではない。まず今どういう状態になっているのか、全く見当がつかない。一つは相手側が完全にルールを無視した状態で始まっているのに、中立であるはずの審判は全く機能してない。さらに聴衆も自分たちに突然、刃が向けられることになり、それを現実のこととしても受け切れていない。


「何だこれは!どういうつもりだ!」


小太りの男、おそらくヘルヒンの領主が怒鳴り散らす。


「無駄に、無意味に言葉を重ねるな、苛立つ。話せないように首をはねるぞ!」

「な・・・」


すぐ後ろにいる獣のマスクをした男が、仕込み刀をヘルヒン領主の首へと持っていく。


「ひ・・ひぃぃぃ!」


ヘルヒン領主は悲鳴を上げる。


「おい、そいつのマスクを剝いでやれ!」


グラウの命令に従い、獣マスクは小太りの男のマスクを剥いだ。


うぁ・・・・


会場中から悲愴感の漂う声が漏れた。私には全くピンと来ないが、この反応はおそらく、この会場にいる人たちのもっとも敬うべき人物、本物の領主であることを示している。


「全くこいつは、どれだけ愚かな領主なんだ。自分の口にしていることがどういう結果を及ぼすかなんて何一つ考えてない。知性のかけらも無い!こんなばかげた男が、こんな大きな街の領主だとは!」

「あ・・あんたら何なんだ⁉キャステルから来た、この討論会の相手をするだけの連中じゃないのか⁉このワシを殺しに来たのか!」

「愚か者が考えなしに話すな!アンタを殺すだけなら、とっくに殺してる!当然俺たちはここに討論をしに来てる。しかしその意味はお前らとは違う。お前らのような、のほほんとしたこの街の連中のような心持ちで、俺たちは来てない!生きるか死ぬかの戦いできている!我々が生きて行く中で真実を求めるように、この街もそのつもりで俺たちを迎えているのか!」


グラウはゆっくりと歩き、獣のマスクをつけた連中に刃を向けられた聴衆に向かって、明らかなる弁舌を始めた。


「お前たちの領主は愚かだ!この男――」


そう言って、目の前に引きずり出されたルドを、折れるぐらいの強さで指さし、


「この男、ヘルヒンの裏切り者だ。本来この討論会を受けて立つべき立場であるにも関わらず、その責務を全うすることから逃げ、外部の者に委ねた。この街を代表する弁士であれば、堂々と我々に対峙するべきであったのに、我々の噂を聞きつけ臆病風に吹かれ、自分のキャリアで失態を犯すことを嫌った。何か問題があっても『知らない連中がやった』として片付けようとしていた。それは卑怯千万であり、この歴史ある討論会さえも侮辱をする行為だ!」


なるほど、このグラウという男の言っていることは筋が通っている。彼が今話したことは、私が一番初めに思ったことだ。私の代弁をしてくれたみたいで、なんだか急に親近感が持てる気がした。


「さらにこの男の妻は、我々が放ったスパイにさまざまな情報を横流し続けた。夫婦そろって裏切り者だ!しかも妻に至ってはそのスパイと恋仲になるぐらいの堕落ぶり!」


え・・・そうだが・・・それをここで言うか・・・そんなことしたらルドもその妻も、この街で生きてはいけないじゃないか。もちろんルドの行為は褒められたものではないが、それでも政治には、さまざまな事情があると思ってもらえる・・・いや、何か別に事情があることが多い。しかし男女の話をされてしまったら・・・・不貞の話をされてしまったら・・・・それはもう・・・


このことをわかっていたから・・・ルドの表情は尋常ではなかったのか・・・・


「なんなんだ・・・・」「ほんとか・・・・」「許せねえ・・・」


人の心は弱い。今強弁を張っているのは、明らかに自分たちの街を侵略する連中である。にもかかわらず、目下自分たちが刃を向けられている状態であると、自然に生き残りたいという衝動に言動が左右させられる。つまり、侵略側のキャステル代表、グラウの言葉に寄り添うとしている。どういう形であれ、何年間もこの街で英雄と扱われてきた男が攻められていても・・・


「しかもこんな愚かで、卑怯で、まぬけなことを、この男と領主がすべて企ててやったこと、あまりにもこの街の住民が惨めすぎる!」


このグラウという男は計算をしているようで、計算をしていない。全ての言葉の本質が己の感情から出ている。しかしそれは、あまりにも真っすぐ過ぎる。それゆえ何ものも近づけない。こちらは、少しでも小細工を施した言葉を使えば『今度そんなくだらないことを言うと、ここに居る民衆の首をその度ごとに刎ねて行くぞ!』と言いそうな強行感がある。論の強引さと武力を持って、己の真実を曲げない・・・正しくはないかもしれないが、武と論を組み合わせた、なんともいえない・・・まるで兵器を見ているようである。


グラウが顎で指示を出す。400人の聴衆の前で醜態を晒されたルドは、すでに泣きそうな表情になっている。こんなものは討論になるわけがない。その表情のまま、ステージの中央へと引っ張り出される。まるで処刑台にのせられる感じだ。

私はこの瞬間急激に周りに目をやった。自分の討論が終わって初めて、カミル、イーヴァンを見た。彼らは固唾を飲んで、その動向をみ続けている。鉄環の誓団のほかの連中は、硬い表情ではないが、やはりどこか緊張感が漂っている。このグラウとほかのメンバーは、いったいどのような関係なのだろう。そして先生は・・・・・


全く動かれていない——————


先生はいったい、どうされるつもりなのか・・・成り行きに任せて席に着く・・・いや、領主を助け・・・そんなことができるはずがない。相手にその隙があるとは思えない。外に兵を呼びに・・・・


考え方の起点——————

何のために・・・誰のために・・・・


先生のため?  私のため? ルドのため? この街のため? 


この世界を構成する三要素

『器』『法則』『傾き』・・・・


私の頭は空中分解を起こす・・・・・私は先ほどまで、己が何かを悟ったような感覚でいた・・・・道の向こうから答えが飛んできて・・・しかもそれは、万物に適用できるものであって・・・『敵』?敵に認定したからなんになる?相手を殲滅?完全に我々は武力で押さえつけられているじゃないか。これに対抗するには軍隊を用意しておけば?いやそんなことができるわけ・・・それじゃあ討論会になるわけが・・・・何だかわからないが、グラウはこれから討論会を始めようとしている。ギリギリの線でそれが保たれている。私は最強だったのではないか?シルバー先生が無敵であるように、私もそれに肩を並べると思っていたのではないか・・・・・どこを辿っても・・・思考を始められない・・・


おそらくシルバー先生はこの事態を、必ずどうにかするであろう。そこだけは強く確信がある・・・しかし私は・・・・また・・・また自惚れていた・・・?じゃあなんだったんだ、道の向こうから来たソレは一体なんだったんだ・・・・


『私を信じているという・・・・それ自体、逃避であり依存ではありませんか?』


「え・・・?」


私の耳にシルバー先生の声がよぎった。ずっと・・・ここ最近ずっと先生の声が聞こえなかった。その横切った言葉は、あの『冷たい表情』にぴったりの台詞であった。


先生・・・私の中で『喜び』と『悲しみ』が一度に沸き上がった。


先生・・・・先生の背中を見続ける。先生がゆっくりと振り向く・・・いやそれは本当に振り向いていないのかもしれない・・・・・私の中の『幻想』の先生なのかもしれない。私は本当に狂ってしまったのか。そう目の前で振り向く先生が、幻想であると思っているにもかかわらず、先生が私の方を振り向いてくれることに、気が狂いそうなほど嬉しいのである。先生と目線が合う・・・・先ほどと同じ『冷たい目』


『あなたが・・・・むかえた・・・・ソレは・・・・むかえて・・・・よかったものですか・・・・?』

「!!!!!——————」


はーー はーーー はあーーーー


私は肩で息をしながら、現実に戻ってきた。目の前には、一切振り向いていない先生の背中。時がずっと止まっていたようである。そしてそれは、急に今動き始めたようである。


「ん・・・」


グラウは、これから自分にとって最も大切な弁舌が始まるところで、シルバー先生がその場を全く動いてないことに、ようやく気がついた。


「もうアンタらはいい・・・・席に戻って、いや、荷物をまとめてこの建物から出て行くがいい。あんた達のことは傷つけるつもりはない。それに・・・・中々いい討論だった・・・・」


グラウ・・・・この男はとてもいい奴なんじゃないか・・・なんだ、今の私は、ここまで人をずっと疑り続けてきたのに、急に敵の言葉に感情を絆される。私はまるで、自分自身が時間を戻された感覚になっている。そう、シルバー先生と出会う前の感覚。目の前のことに大きく左右させられ、自分が良さそうだと思うことを正しいと思う。実に懐かしい感覚。そして今、私の目の前にはそれらをすべて、渦を巻くように懐に納め、天地に轟く弁論を繰り広げる『智慧の篝火』シルバー先生が目の前にいる。もう何が間違っているのか、正しいのかわからない。私も一観客として、先生のその荘厳で聡明な清流を、この建物の中で一番に楽しもう!



先生は初めて・・・・ゆっくり顔をグラウに向けた。そして・・・小さな・・・我々には聞こえるが、会場の人たちには絶対に聞こえない、完璧な精度で調整された声の大きさで、言葉を語り始めた。もうこの時点で、エンドロゴス、シルバーの空気に染まっていく。


「あなたは、まだ母の体から出ていない・・・」

「?・・・・」


グラウはあまりになんと反応をして良いか分からない、そんな反応をした。そしてゆっくりと振り向いた。今度は、現実のシルバー先生が私に振り向いた!


「椅子を・・・」

「はい!」


私はまるで、アラモンの故郷で初めて先生と出会ったような返事をした!そして召使のように全力で先生の椅子を持って、ステージの中央へと向かった。先生はそこに置くようにと指示をされた。私は置いてすぐに自分の席へと戻った。


「ここに座りなさい・・・・」


先生はルドに言った。一瞬、ルドを引っ張ってきた2人の獣マスクをした男が、なんだという態度を取ったが、シルバー先生が一瞥すると、一瞬だけグラウの方を見て、ルドを椅子に座らせた。グラウはシルバー先生が何をしようとしているのか、見定めようとする感じであった。

ルドはガタガタ震えていた。目は焦点が定まらず、微妙に椅子が動いている。先生はまたゆっくりとグラウと目線を合わせた。


「拷問を行いましたね・・・・」

「・・・・・」


沈黙は肯定・・・・・


私は先ほどこのグラウがいいやつだと思った。しかし、とんでもないやつだった!


なんだ・・・・思考をせず、目の前のことに感情を揺さぶられるままいると、こんなのに楽しいのか!すごい!さすがシルバー先生!!


「皆さん!お楽しみいただけているでしょうか!」


突然シルバー先生は聴衆に向かって大きな声を上げた!


「ここまでこの舞台を彼らが盛り上げてくれました、しかしまだ役者が足りていないのは、皆様ご存知なはず!」


グラウは一瞬迷った!先生が何を言おうとしているのか全くわかっていない表情だ!グラウよ、それでは先生の足元にも及ばないぞ!


先生はサッと杖で会場を差す。自分たちのいるところから最も遠い場所、そこに肩幅の広い目元にマスクをした男性を差した。その男は、明らかに指名されたのが自分であると言う反応を示した。


「!—————— 」


グラウのその顔に『まずい』という表情がこぼれた。だが先ほどグラウがやったように、先生もどんどん強引に進めていく。


「キャステルの領主もご参加されている。双方の領主があいまみえる中で、討論が行えるとはとても有意義な時間が過ごせそうですね」


あれがキャステルの領主!ほかの聴衆たちもわたしと同じ反応を示した。一気に注目されたところで、本人の真面目さか、そのような癖がついているのか、男は軽く立ち上がり手を上げた。恐ろしいほど、恐ろしいほど奇妙な光景である!先ほどまでグラウという反勢力の人物がこの建物を占拠し、民衆を人質にし、領主の首元に刃を突きつけながら、己の主張を叩きつけようとしていた。なのに、シルバー先生の奇妙な言い回し「まるですべてが仕組まれた演出のよう」に話したことで、聴衆たちがやはりこれは『見世物』だったんだという、まったく根拠のない安堵感を持ってしまい、その決定的なこととして、人質である民衆の中に、相手の領主もいるという滑稽な空間を共有してしまった。


「・・・・・」


グラウはシルバー先生を睨んだ。しかしその睨みは、明らかに先ほどまでの力を欠いていた。ここまで仕組んだことをたった一瞬で崩され、恐ろしく恥をかかされた・・・しかも彼自身、己の非に対して非常に弱いことを、(私が理解しているぐらいだから)完全にシルバー先生に見透かされている。


恐ろしい・・・・決してすごいと云う言葉では表現できない・・・・・グラウは先生が、この街にくる間、自分の領主と一緒の車で来たことを知っているのか⁉そこで何の会話をしているのか知っているのか?それ次第ではまるで先生の相手にならないぞ!


先生はこの後どのようにこの物語を終わらせるのか・・・・私は・・・こんなに楽しいことに興奮しないわけがない!


「グラウ・・・・でしたよね」


また先生が小さな声で語りかける。


「あなたが今までしてきたことを、償うべき頃合いが来ました」












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