おのれ黒スーツども
教室を出た俺達は、地図を持っている賢治に続いて寮までの道を歩いていた。
「部屋どうなるかなー、せめて零か白斗どっちかいてほしいんだよな」
「白斗って?あの白いパイナップルみたいな髪にゴーグル付けてる子?」
「そうそう!あの気むずかしそーな人だよ。俺の同じ小学校だったやつなんだよね」
「はえー、仲いいのか?」
「言うてまあまあだな」
まあ喧嘩するけどね。と竜成はもごもごと口にし、前の方を歩いている白い頭に目を向けた。
その時、前方から
「ちょーっと君たちお話良いかな?」
知らないスーツ姿の男の人がにやりと笑ってこちらを覗き込んできた。
「誰だよ!?」
竜成が掴まれそうになった腕を咄嗟に振り払う。
「来んな!」
「どっかいけや失せろ!!」
「ほんとに、誰なんですか…」
「おっさんしつこいよ!!」
ところどころでクラスメイトの叫び声が聞こえる。
周りを見渡して見たが、通行人は振り向きもしない。
催眠でもかけられているかのようだ。
しかも男たちは数人程度ではなく、何台かある大きめの車からわらわらと出てきた。
「皆!逃げるぞ!地図は三咲に預けた!」
賢治が大声で叫ぶ。
三咲は最初にも出てきた、キャップを被った生徒のことだ。
かなり足が速く、男子数名を除いて置いてかれている。
「俺達も行こう」
「ああ。」
「君たちちょっと待ってくれないかな?落ち着いたところで話をしようよ。紅茶とお菓子もあるよ?」
しつこくおじさんが追いかけてくる。
「触んな!離せジジイ!警察呼ぶぞ!ってスマホ荷物の中に忘れてた!!」
「何やってんだよ竜成!?」
「誰かスマホ持ってないか?電話してくれ!」
竜成が叫ぶも、誰一人スマホは持っていないようだ。
「あれは校外では使っちゃだめなんだよな?」
リュックを振り回しながら聞くと、
「流石にだめだって!」
だろうな。ならば逃げる以外に選択肢がないということになるが…
「やめてよ!」
「離せっつってんじゃん!」
何人かは押さえつけられ、車に乗せられようとしている。すると、
『緊急連絡!突然だけど聞いてくれ!先生がバレないようにすれば異能を使って良いって!あとは先輩2名と先生を向かわせるから、それまで持ちこたえてて!大丈夫!俺は味方だよ!』
脳内にこんな誰かの声が聞こえた。
近くの生徒たちは驚きすぎて声も出ないようだ。
「じゃあ、使って良いってことか!?」
「そうだよ!くれぐれも焦がさないように気をつけろよ」
「任せとけって」
竜成は敵のスーツを掴むとあたかも自分の握力で破ったかのように布を溶かした。
他のところでもスーツの男たちが服を抑えたり血を流したりしている。
氷で爪を少し伸ばしてひっかいたり、高周波で絶叫して敵を気絶させたりと味方がかなり優秀である。
「俺らで時間稼ぐから逃げとけ!」
竜成からの指示に頷き、すぐさま戦っていない人たちに伝えた。
「ここは任せて逃げるよ!」
数人から了解の声をもらい、猛ダッシュで地図を受け取り走って行く。向かって来る男たちの弱点や首を蹴ったり殴ったりして倒したりかわしたりしながら走り抜けた。あとはここが車の最後尾か、というところで車から数人の男たちが壁になって道を塞いできた。
「なんだよ、通れないじゃないか」
「仕方が無いだろう?我々も誰か一人だとしても連れ去りたいんだからね」
賢治が男たちを睨みつける。
「ここにいる人達の適性上、人数的に倒して行くわけにもいかないな」
「ワープ能力って…誰かいたよな!?」
「いや、それ俺だよ!」
「まじか!?ごめん!」
「それはいいから、とりあえず俺の半径3メートル以内に全員集まってくれ。まとめてワープする」
全員を呼び寄せて事情を説明する。だが時間は無い。後方にすでに起き上がった男たちが見える。
「行くぞ」
賢治の声で一瞬宙に身体が浮いたような感覚がして、周りを見渡すと目の前にあった男たちはいなかった。
だが、瑠衣がいなくなっていた。
「全員いるか?」
「瑠衣がいない!助けに行かないと!賢治、もう一回ワープ出来るか?」
「悪い、一気に大人数を移したせいで今は無理だ」
賢治はぐったりした様子で道に座りこんでしまった。
どうしよう。せっかくワープで飛び越えたのにまた男たちが迫ってきている。
瑠衣は捕まっていて、車に運びこまれようとしている。
「助けて!」
気づけ俺は走りだしていた。
立ちはだかる男たちを水筒で3人ほど倒した。向こうから攻撃してくることはないようだ。
「その子を離して!」
「嫌だな。」
「じゃあこっちも嫌なんだけど!!」
俺は勢いのままに車に群がっているスーツの男たちに殴りかかった。
必死に水筒一本で敵をなぎはらう。だが、やはり所詮は子供。背後から足を掛けられ転んでしまった。
見上げると数人の男たちの顔があり、
「さて、仲間たちの借りを返させてもらおうか。」
「とりあえず本部に連れて行きますね。」
とかしゃべっている。
どうしよう、何も考えず動くんじゃなかった。恐怖で声も出ない。
手は後ろ手に縛られ、そのまま車に乗せられようとしている。
皆ごめん-―-そう思ったときだった。
「遅れてわりい!もう大丈夫だ!」
竜成が奴らをなぎ倒し、突っ込んで来たのだ。
「他の戦ってたのもじきに来る。時間を稼いでくれてありがとな!
お陰で瑠衣は無事保護できた。」
ふと視線を向けると、同級生に囲まれた瑠衣が手を振っていた。
手を振り返そうとしたとき、
「ん?痛っ!!」
一瞬の違和感のあと、俺の身体は激痛が全身を駆け巡っていた。
もしかするとさっき動き過ぎたからだろうか。
最近運動してなかったもんな。…そういうことじゃないか。
「零!?生きてる!?!」
「うん…」
痛みは収まるどころかさらに強くなっていった。
筋肉痛とかのレベルじゃないよ。
意識が飛びそうだ。誰か…と心の中でつぶやくも、声にすらならない。
視界が真っ黒になり、そこで意識が途絶えた。
目が覚めたのは、寮についてからだった。
3 伊解融弥
能力:身体中の関節を外せる(首と背骨も含む)
見た目:ちょっと生えてる程度の黒髪に色黒の肌、ちなみにかなり細目
学力:ちょっとまずい
運動能力:男子で4番目
好きな芸人:ニドイッチマン
4 蟒蛇理華
能力:本人が言いたくないとのこと
見た目:暗い紫のロングの髪に、紫色のジト目
学力:トップクラス
運動能力:女子で7番目
得意教科:数学