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あなたの声を聴かせて  作者: 紅羽 もみじ
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事件録2-3

事件録2-3

 署に戻った平端は、すぐに取調室に駆け込んだ。しかし、取調室はもぬけの殻。しまった、取り調べは終わってしまったのか、と塚本の元へ急いだ。


「塚本先輩!さっきの容疑者の取り調べは??」

「なんだよ、大きな声出すな!」


 平端の勢いにおされ、塚本はまた悪い癖が出始めたかと呆れながら注意する。


「ああ、ごめんなさい。で、容疑者は?」

「全部吐いたよ。明日、容疑者連れてって実況見分だ。」

「私も行きます。ちょっと気になることがあるんです。」

「行きますも何も、俺とお前で担当してるんだから行かない選択肢はないだろ…。」


 塚本は、平端の様子に嫌な予感を感じながらも、明日行う実況見分について詳細を話し、その日は解散となった。


 当日。容疑者を乗せたパトカーは、犯行現場の一軒家に到着した。ヨシ子の霊は、相変わらず心配そうな面持ちで孫を見つめ、終始悲しそうな思念を全身から振り撒いていた。


(この様子と、容疑者の自白に矛盾はない。けど、どうしてもあの仏間が気になる。あそこにも連れてって、容疑者が何を話すか、おばあちゃんの様子はどうなるか、しっかり観察しないと…。)


 平端は、再び現場に足を踏み入れた。誠は他の刑事に傍を挟まれ、後に続く。

 実況見分は、自供通りのためか滞りなく進んでいる。誠は刑事に聞かれる質問に素直に答え、予定より早く終わろうとしていた。


「ちょっとすみません、私も聞きたい事があるんです。いいですか?」


 平端の問いに、刑事たちはぽかんとした顔で平端を見る。塚本は、はぁ、とため息をつき、


「何かあんのか。もう見分はほとんど済んでるぞ。」


 と呆れ顔だ。平端は塚本の様子に構わず、誠に近づく。


「ちょっと、場所を変えたいんです。ついてきてくれます?」


 そう言って現場を離れる平端に、誠のそばにいる刑事二人は塚本を見るが、行ってやれ、と指示を受け、平端の後に続いた。

 平端は、現場の隣にある仏間を開け、中に入る様促す。


「誠さんは、ここには入ったことあります?」

「…はい、祖父の仏壇もありますし、掃除のために。」

「この洋服ダンスや、引き出しに何が入ってるかもご存知で?」

「…祖母が生前、大事にしまっていた物が入ってると思いますが…」


 それがどうかしたのか、と言う顔で誠は平端を見つめる。


「前、現場に来た時、ちょっと中身を見させてもらったんです。貴金属類や、高価そうな物が結構入ってたんですよね。でも、ところどころ、抜けてるところがあるんですよ。特に大事にしてて、おばあさんの手元で管理してたのかなーって思ったんですけど、その辺りのことは知ってました?」

「……し、知らないです。寝たきりになってから、祖母はそこにあるものはほとんど動かしてないんで…」

「生活費の工面のために売ったとかじゃないのか?」


 塚本は、実況見分が終わりそうなところに水を刺されて不満なのか、眉を顰めている。平端は構わず、誠に質問を続ける。


「誠さんはどう思われます?」

「どうって…」

「生活費とか、介護でお金に困って売ったとかあります?」

「ぼ、僕はそんなことしません。第一、祖母には年金や祖父の遺産がありましたし、通帳は母が管理してて、祖母の世話に必要なお金は、母から受け取ってました…」

「じゃあ、他におばあさんが大事にしてたものが、ここにない理由として考えられることは?」

「し、知りません……」

「本当に?おばあさんの介護をしてて、ほぼ住み込みの状態だったんでしょ?」

「知らないです、本当に!」


 誠はあくまで知らないと言い張る。平端の中で、なぜタンスから貴金属が抜かれているのか…、と疑問が残った。しかし、実況見分ではその疑問は解消されず、一先ず容疑者を拘置所に戻し、解散することとなった。

 平端は、デスクに戻ってもその疑問が頭から消えず、腕を組みながら、うーんと唸る。


「塚本先輩、やっぱ気になるんで、貴金属が消えてる理由、調べてもいいです?」

「調べて何が出てくるってんだ。容疑者も証拠も、全部出てきてるんだぞ。」

「あの部屋を最初に見に来た時、おばあさんも一緒だったんですよ。そしたら、孫のそばにいた時とは打って変わって、般若みたいな顔になって。」

「何だそりゃ…、孫のそばにいる時は怒ってなかったってか。」

「ええ、容疑者のそばにいる時は、悲しそうな顔で、ずーっと横に立って肩を摩ろうとしてましたよ。それが、この部屋で洋服ダンスや引き出しの中を見た途端、一変したんです。」

「お前がおばあさんのものを盗もうとしてるとでも思われたんじゃねぇの。」

「それだったら、私の方を睨みつけてきますよ。とにかく、何か引っ掛かるんで、調べさせてもらいます。」

「勝手にしろ、その代わり、他の仕事に支障出すなよ。追ってるヤマはこれだけじゃないんだからな。」

「はいはーい。」


 本当にわかってんのかよ…と呟く塚本をよそに、平端は消えた貴金属の疑問について調べるため、今までに調べた調書や証拠が保管されている部屋へ一目散に駆け出していった。

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