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白帝城ー3
「いえいえ最後の戦は天命を成し遂げること。
まさに中原に漢帝国の再興を成し遂げること。
必ずやこの孔明、劉禅帝をお護りし帝の天命を
まっとういたしまする」
「ふむ」
劉備の瞳から一滴の涙が伝う。
「最後に孔明、馬謖には気をつけよ。
お前は愛弟子として後継者に育てようとしておるようじゃが、
軍略にはいくら長けておろうともたたき上げの苦労人から見れば
危険じゃ。重要任務にはしばらくつけるべからず。
魏延もしかり。姜維王平をたててよく意見を聞くべし」
ここで劉備は事切れる。
「劉備殿!」
再び将軍達が駆けつける。
老「ふむふむ、劉備の臨終場面じゃ」
瞳「よく似ている感じだけど」
匠「兜に石がはめ込んである」
竜「ルビーのような赤い石だ」
愛「悲しい場面だわ」
一「わっ!」
諸将のまたぐらから皆が覗く。
床に伏した劉備の枕元に劉禅がいる。
「父上、父上ー!」
まだ幼い劉禅は周りをはばかることなく泣き叫ぶ。
趙雲が長坂の戦いで曹操の陣中を一騎で突破して
助けた劉備の子だ。
劉備の握り締めたこぶしがすっと開いたが、
何もそこから床には落ちなかった。