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陰陽道

 





「竜だとおわかりになるのですか!?」




 シルヴィアが思わず叫んだ。これにはシルヴィアとふたりで顔を見合わせた。けれど、凛花は構わずに制服のポケットからなにやら白い紙を一枚取り出してジェイドの額に当てた。



「わかるもなにも、竜は竜でしょ。いまは猫ちゃんの姿を借りてるんだね」



 人型にかたちどられた紙はなんかのアニメで見た気がする。凛花が何事か呟くと、人型の紙は青い炎をともなって燃え尽きた。



「この子、すごい霊力の持ち主なんだね。いまは大分力を消耗してるみたいだけど」



 ポカンと開いた口が塞がらない。



「あ、気にしないで。うちさ、陰陽道の家系なんだよね。わざわざ学校では言ってないけどさ。だから優都の話も"あれ、これマジのヤツだ"って直ぐにわかったんだよね。そもそも真面目一筋の優都がつけるような嘘でもなかったし。異質な力の気配も優都から感じたからね」


「陰陽道って、マジかよ」



 なんか段々と俺の周りが幻想(ファンタジー)世界になっていく。じ、とジェイドを見る凛花の瞳が険しい。



「その猫ちゃん、いまも竜の力を消耗してるみたいだけど。うちにちょうど竜脈の源泉があるんだ。ね、うち来る?」



 シルヴィアとふたたび顔を見合わせた。竜脈がなにかはよくわからないけど、シルヴィアはジェイドを安全に休ませる場所を探していた。


 シルヴィアは俺の瞳をしばらくうかがったあと力強く頷いた。




 ◇ ◇ ◇




 凛花に言われるがまま付いて来たけれど凛花の家は山合の途中に位置した古風な、かなり大きな屋敷だった。


 竜脈の源泉は更に山を登った先にある(ほこら)がその場所らしい。その一番近くだという離れに案内されて、ジェイドはふかふかの豪華な座布団のうえに寝かされた。



「竜脈っていわば気の流れのことなんだけど、源泉はその竜脈の源でさ、代々うちが守ってきたのがその竜脈の源泉を奉る祠なわけよ。猫ちゃんをそんな山奥の祠に寝かして置いてくる訳にはいかないからさ」



 凛花はそう言って和室の部屋から出ていった。




「優都様、凄いです。ここは大きな結界のなかです。しかも、とても強い」


「ユート、うどん食べたいにゃ……」



 当の本人のジェイド様は、座布団のうえで寝っ転がったまま手足を伸ばしている。黒猫は先にコンビニでミルクを買って、いますでにガツガツ溺れる勢いで飲んでいる。



「んにゃ? すごい魔力の場所じゃの。どうりで居心地が良い訳にゃー」



 ふあ、と欠伸をしてジェイドはふたたび丸くなって眠りに落ちた。確かになにも感じたことない俺でさえ山奥に進むにつれて空気が変わっていくのがなんとなくわかった。




「十二神将に守られているからね、猫ちゃんに気に入ってもらえて良かった良かった」




 戻ってきた凛花の手のなかには大きな玉があった。透明で、まんまるの……まるで、ガラス玉みたいな。



「あ、これね、竜脈の源泉の代わり。陰陽道の家は日本中点在してるんだけどさ、源泉は持ち運びできないから水晶に力を込めるの。普段は日本のそれぞれ各地を回って奉られてるんだけど、いまは年に一回の祈祷の為に戻って来てるんだよね。まだ力は充分残ってるから猫ちゃんに力を与えてくれると思うよ」



「優都様! これは!!」


「あ、あ……」



 シルヴィアが狼狽(ろうばい)するのも無理がないと思った。竜脈の源泉は要は大量の魔力の源らしいということはわかった。その魔力が込められた水晶なんて、まるでシルヴィア達が探しているものそのものじゃないか。


 ──まさか、だけど。ゴクリと生唾を飲む。



 凛花は水晶をジェイドの傍らに置いて、姿勢を正すと手を合わせて何事か呟いた。その声が止むのをしばらく待ってから、凛花の背中に声を掛けた。




「で、えと、その玉の名前って……」



「あ、これね、竜の水晶。別名、竜の御珠」





 ──マジかよ!




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