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無防備は最強の防御術

 




「優都様、本当にありがとうございます。優都様にはご迷惑をお掛けしてしまっているのに、この様に親切にして下さり」


「いや、お礼言いたいのはこっちだけど、その……助けてくれて」



 ポリポリと頭を掻く俺は、相変わらずのシルヴィアの真っ直ぐな瞳から逃れたくて顔を反らした。


 だってドラゴンめちゃめちゃ怖かったし。本気で死ぬかと思った。必死に逃げてる俺はどんだけアホずらだったか計り知れない。正直、シルヴィアを前に逃げ出したい気持ちはずっとあった。



 けれど、



「当然のことをしたまでです」




 シルヴィアはドレスのスカートの裾を持つと優雅に頭を下げた。どこか遠い世界の習わしだろう、自然と流れるようなその仕草があまりに美しかった。


 あぁ、本当にこの子は異世界のお姫様なんだ。華麗な所作(しょさ)が、世間ズレした嘘偽りのない瞳がすべてを雄弁に語る。



「どうも」



 あたふたとお辞儀を返す自分が滑稽(こっけい)に思える。それでもそれを気にした風もなく、シルヴィアはあたたかい笑みをこぼした。



 この日はみんなそのまま眠り込んでしまった。あまりに疲れ果てていたのだろう、ジェイドは俺のベットの下で丸くなって寝ていて、寄り添うように黒猫もジェイドの脇で丸くなってスヤスヤ寝てる。


 俺のベットにはシルヴィアが。こんなむさ苦しい部屋で寝られるのか心配だったけれど、シルヴィア自身は案外その辺は図太い性格をしているらしい。


 俺が洗い物をし終わる頃には三人とも眠りこけていた。



「って、俺はどこに寝りゃあいいんだよ」



 仕方がないから余っていた掛布団を引っ張り出してジェイドと一緒に床に眠ることにした。



 いつまでもここに居座られても俺が困る。だからって無下に放り出すこともできずに矛盾した感情に(さいな)まれる。



 まわりの人にはシルヴィアの姿もジェイドの姿も見えないって言われても……じゃあ、俺がこの状況をなんとかするしかないのか?


 竜の御珠、とりあえずスマホでググってはみたが、当然そんなものがヒットするわけはなく、手元に置いてある白の書だって変わらずどのページも真っ白だ。王子の情報はなにひとつない。正直、お手上げ状態だ。



「ん……」



 シルヴィアが寝返りをうつ声がして、思わずビクッと身体を固くした。いやいや、俺がちいさくなってどうすんだよ。


 今更女の子が俺の部屋で、しかもベットで寝ている事実を目の当たりにする。寝れそうにない。かといって一部屋しかないのだからこの部屋に寝るしかないんだが。


 しばらくそんな風に問答しているうちに自然と睡魔が襲ってきた。



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