97話 マリアさん
洗い物を片付けて、薬師ギルドに行く。
昨日は忙しかったから、特級ポーションを作ることを忘れてしまった。
まぁ、こんなこともあるさ。
薬師ギルドのカウンターに寄らずに、食堂の調理場の冷蔵庫にデザートを納入する。
サキさんから、あんた疲れた顔をしているよ、と言われる。
自分では気が付かなかったが、疲れているのだろう。
ここ最近は、忙しい気がする。
少ししたら、休もうかなずっと休んでないし、週休二日制も考えなくては。
市場に着いた。
屋台に向けて歩く。
なんだか注目されてるな。
「今日も……」
「……食べてみたい……」
「一度でいいから……」
私を見て、なにかしゃべっているようです。ぼそぼそとしゃべり声が聞こえてきますね。
屋台にたどり着くと、行列が出来ていました。
私服の衛兵たちもちゃっかりいますね。
最前列です。
さて、今日は何を作ろうかなと思うと、エリク君とリリアちゃんの他に痩せた女性がいます。
エリク君とリリアちゃんから朝の挨拶を受け、その女性を紹介されます。
「母のマリアです。子どもたちがいつもお世話になって、それに素晴らしいバックや服も、ありがとうございます」
お母さんでしたか、痩せてはいますが、元気になったのですね、本当に良かった。
それにしても、マリアさんの服がみすぼらしいですね。
古着屋でもあまり見ないレベルです。
あまり使わない衣料品店で、マリアさんの服を購入します。
三着でいいかな? この世界にありがちなワンピースで。
よし。
「すみません、良かったらこれを使ってください。サイズが合えばいいのですが」
服を渡す。
服だけだと、荷物で両手がふさがりますね。
服を入れるバックも必要かな? 背負うことができるリュックサックがいいだろう。
デパートでおしゃれな女性用のリュックサックを購入する。
「これもよろしかったら使って下さい」
リュックサックを渡す。
「いいんですか? 私たちにはお返しできるものがなにもないのですが」
「いいんですよ、だってエリク君とリリアちゃんはすっごく頑張ってお手伝いしてくれていますから」
マリアさんが手で口を覆っています。
泣いてますね。
でも、嬉し涙なので大丈夫です。
それよりも、お客さんが待っています。
何のスープにしようかな。
前回は肉系のスープだったので、今回は違うスープにしよう、魚介系、クラムチャウダーなんかいいんじゃないかな。




