9話 禁断のスキル?
市場をあとにし、商業ギルドにやって来た。
街の南門に近い。
市場から少し歩いたが、それほど遠くはない。
冒険者ギルドと同じぐらい大きいが、外観にお金が掛かっていそうだ。
白い壁に、入り口には優美な植物が彫刻された高そうな扉。
絶対入りにくい。
しかし、調味料の為には入らなくてはならない。
覚悟を決めて入る。
広い!
冒険者ギルドと違って酒場がないから広く感じる。
受付に行き、綺麗なお姉さんにどこで調味料を売っているのかを聞く。
右の通路の奥にあると言われてやって来た。
ガラス張りの扉だ。
中に入るとスーパーのような食品の詰まった陳列棚と、要冷蔵の食品が詰まった冷蔵棚がある。
私たち以前にも地球から転移した人たちがいるのだろうか。
冷蔵棚に少し手を入れると奥から手前にひんやり冷たい風が吹き出ている。そして、その風をシャットアウトするかのように上からカーテンのように風が吹き付けていた。
これって、日本のスーパーのものと同じ気がする。
醤油もあるかもしれない。
みれば、片隅に竹で編んだカゴがおいてある。
店員らしき人に聞いてみると、カゴに商品を入れてこの部屋の入り口にあるカウンターて支払いをするそうだ。
うん、間違いない。
地球の人が来ているね。
買い物をする。
一キロぐらいの塩の袋、コップ一杯分ぐらいの瓶に入った油、それと同じような瓶に入った牛乳。
あとは……胡椒や砂糖はどこだろう。
「すみません、胡椒と砂糖と醤油はどこですか?」
店員さんが怪訝な顔をする。
「胡椒と砂糖はありますがショーユ? というものは聞いたことがありません」
「醤油はないのですか?」
「まぁ、ここにはないですね」
残念、醤油はないらしい。
「じゃあ胡椒と砂糖をください」
「どれぐらい必要ですか?」
「え?」
聞いてみると胡椒と砂糖は量り売りらしい。
スプーン一つの胡椒で金貨5枚、砂糖はスプーン一つで銀貨2枚。
とんでもない高級品だ。
しかも、入れる袋は別会計らしく有料で、その袋も買うとなると、袋一つ銀貨1枚になるそうだ。
胡椒や砂糖は高級品なので袋もシルクらしい。
悩んだすえ、胡椒は諦め砂糖のみをスプーン三つぶん、そのシルクの袋と一緒に買うことに決めた。
カゴを渡し、カゴの中身と一緒に支払う。
金貨2枚と銀貨5枚。
油と牛乳は時価らしく、これらが高かったらしい。
塩は銀貨5枚で比較的安いらしいが、それでも元の世界よりずっと高い、困ったものだと思った。
「では、砂糖を入れますね。ご確認下さい」
奥から砂糖の袋を取り出しシルクの袋に入れはじめる。
山盛りなどにはしない、スプーンの上に棒をスライドさせすりきられる。
と、ちょっと待って、この砂糖の袋。
上白糖─────!!
誰か地球の物を持ち込んでる!
だってこの白い砂糖、プラの透明な袋に上白糖の赤い文字。
絶対、日本人。
間違いない。
「すみません、この砂糖ってどなたが持ち込んだのでしょうか?」
砂糖が地球から持ち込めるなら醤油だって持ち込めるはず。
期待をした顔で店員さんを見る。
「すみませんお客様、守秘義務がありますので教えるこては出来ません」
キッパリと断られる。
そりゃそうですよね、私が直接取引したら、儲けがなくなるからね。
この異世界転移したときの幾人かしていたニヤニヤ顔を思い出す。
……誰が持ち込んだのかわからない、今回でなく以前から来られていた方だろうか。
「これって、いつぐらいから扱っている商品でしょうか?」
「最近ですね」
答えてもらえたが、悩ましい。
ニヤニヤ笑いをしていた人たちとの接点はただのクラスメイトというだけの仲だ。
お金を支払えば、私の欲しい商品を購入してくれるだろうか。
しかし、この街にいるのかどうかもわからない。
「すみません、この砂糖はどこからきたのかなどわかりますか?」
怪訝な顔をされるが慣れているのだろう、そっけなく『知りません』と答えられた。
買い物は終わった。
雑貨屋に行き、ポーションの空き瓶を大量購入する。
しばらくポーションの空き瓶は買わなくてよいだろう。
昼食後にする料理の保存用にタッパーのようなものがないか探してみる。
木の小物入れがあったのでそれを買うが、果たして料理を入れてよいか悩んだので聞いてみると、大丈夫とのことであったので、さらにいくつか買ってみた。