53話 ミートソース
佐藤君行きつけの店には誰もいません。
まだ、早いですからね。
おや?注文を取りに来たご主人がなにか言いたそうです。
「すみません、お客様は渡り人の方ですか?」
「はい、そうですが?」
「商業ギルドに商品を卸しているとか」
「卸してますね」
話を聞いてみると、どうやら市川君と私を間違えていたようだった。
「調味料を高額でいいから卸して欲しい」と言われたとき、おや?と思ったんですよね。
どういった調味料が欲しいのか聞いてみると、この店をいつ来ても人でいっぱいの店にしたいと言ってきた。
この店を人でいっぱいかぁ。
となると、アレかな。
ミートソーススパゲッティー。
トマトうどんよりはおいしいだろう。
手打ちの麺でないといけないのか?と聞くと特にこだわりはないらしい。
なら大丈夫だ。
厨房を借りる。
トマト、ニンニク、玉ねぎ、ホーンラビットの肉がある。
油はオリーブオイルのほうがいいので、スーパーで購入した。
ローリエ、トマトケチャップ、ソース、塩、胡椒、それと乾燥パスタを追加で購入する。
塩は単に向こうの世界のものが安くて品質がよいから買ってみた。
ニンニク、玉ねぎをみじん切りにし、お湯を沸かしてトマトに十字の切れ込みをいれ湯剥きする。
湯剥きしたトマトをみじん切りにして、ホーンラビットの肉も、包丁を滑らせて手を傷つけないように気をつけながらみじん切りにする。
冷めているフライパンにみじん切りにしたニンニクとオリーブオイルを入れ、弱火でゆっくり炒める。
その間に塩を入れたたっぷりのお湯を沸かして、パスタを茹でる準備をする。
ニンニクのいい香りが出てきた。
玉ねぎのみじん切りを入れ、少し透き通ったようになったらローリエと肉を投入、塩、胡椒をする。
肉に火が通ったら、トマトを入れてくつくつ煮込みながら炒める。
その間にパスタを茹でて。
ミートソースが完成したと思ったらトマトケチャップとソースで味を整えて。
茹で上がったパスタをお皿に盛り付けてミートソースをかけたら、はい、完成。
粉チーズをかけるとおいしいんですよね。
購入。
ぱぱっと粉チーズをかけます。
ご主人に味見をしてもらいます。
パスタは少し芯がある状態がおいしいこと、茹ですぎはふにゃふにゃになってあまり好まれないことを教えます。
ご主人が凄い勢いで掻き込んでいますね。
あ、おかわりですか?はい、どーぞ。
私のごはんはどうなるのかな?
あ、また、おかわりですか?意外に食べますね。
私の分がなくなりました。
おや?ちょっと多めの二人分作ったつもりでしたが?
私のごはんはどこにいったのでしょうか。
私も食べるつもりだったのですが。
残念。
え、今のを忘れないうちに覚えたい?
いいでしょう。
私のごはんを作ってください。
モブでもお腹は空くので、食べないと死んじゃうんですよ。
あ、トマトは多めが好きです。真ん中に芯のある状態はアルデンテと言って重要なんですよ?オブザーバーとして後ろから指導します。
パスタは何度か固さを確認させて。
ふふ、私の舌を満足させられるかな?
気分は完全にグランシェフです。
ただし、私の料理の腕前はちゃっちぃので、気分だけです。
ハイ、すみません。
調子に乗りました。
許してください。
おや?出来ましたか?どれどれ、粉チーズをかけて。
んんっ、旨い!
久々のパスタ♪おいしーい!
もちもちパスタにこのトマトソースの酸味、おまけにちょっと癖のあるこのホーンラビットの肉がいいアクセントになっています。
牛の挽き肉もいいですが、ホーンラビットもまぁまぁですね。
え?牛の挽き肉ですか?
購入できますよ?
挽き肉とは細かい肉のことで、みじん切りにしたホーンラビットの肉よりも小さい粒状の肉のことですよ。
欲しいと言われました。
これから店をいっぱいにするには肉専門に切る人材を雇用しなくてはならないと思っていたそうで。
ま、パスタや調味料と共に挽き肉も卸しますか。
チリンチリン。
あ、扉の開いた音がしましたよ。
おや、佐藤君、ちょうどいいところに、ホーンラビットのおいしいミートソースパスタが出来上がったところですよ?




